さいかち 

学名  Gleditsia japonica
日本名  サイカチ
科名(日本名)  マメ科
  日本語別名  カワラフジノキ、サイカシ(サイカイシ・サイカイジュ)
漢名  山皂莢(サンソウキョウ, shān zàojiá)
科名(漢名)  豆(トウ,dòu)科
  漢語別名  
英名  Japanese honey locust
2007/04/19 薬用植物園

2006/05/06 同上

2008/06/01 同上
 雄花                      

2008/08/19 同上

2005/10/23  同上

2007/12/25 同上 2006/12/14 同上

 サイカチ属 Gleditsia(皂莢 zàojiá 屬)には、世界に約14種がある。

  G. australis(小果皂莢)
 『中国本草図録』Ⅸ/4195
  G. fera(華南皂莢) 『雲南の植物Ⅲ』134
  G. japonica
    サイカチ var. japonica(山皂莢・山皂角)
    トゲナシサイカチ f. inermis(var.inermis)
    var. delavayi(G.delavayi;滇皂莢・雲南皂莢) 雲貴産 『雲南の植物Ⅱ』127
    チョウセンサイカチ var. koraiensis
    ヒメサイカチ var. stenocarpa
    var. velutina(G.vestita;絨毛皂莢)
湖南産
  G. melanacantha(山皂莢)
 一説に G.japonica のシノニム。『中国本草図録』Ⅲ/1208 
  G. microphylla(G.heterophylla;野皂莢・山皂角・馬角刺・胡里豆)
  タイワンサイカチ G. rolfei
 フィリピン・スラウェシ産 
  トウサイカチ
(シナサイカチ) G. sinensis(G.indica, G.horrida, G.officinalis;
         皂莢
・猪牙皂・皂角子) 『中国本草図録』Ⅱ/0627『中薬志Ⅱ』pp.158-161
  アメリカサイカチ G. triacanthos(美國皂莢・三刺皂莢・新疆皂莢) 
         
『全國中草藥匯編 上』p.455 
   
 マメ科 Leguminosae(Fabaceae;豆 dòu 科・荳科)については、マメ科を見よ。
 「和名ハ古名西海子(さいかいし)ノ轉化セシモノナリ、故ニ又さいかし或ハさいかいじゅトモ云ヘリ」(『牧野日本植物図鑑』)。 
 一説に、漢方薬名皂角子(ソウカクシ)の転訛、一説に法華経などに見える細滑
(さいかち)から。
 『本草和名』皂莢に、「和名加波良布知乃岐」と。
 『延喜式』皂莢に、「カハラフチ」と。
 『倭名類聚抄』皂莢に「和名加波良布知、此俗云蛇結」と。蛇結はジャケツイバラであろう。
 小野蘭山『本草綱目啓蒙』に、皂莢に「西海子
古名 サイカシ サイカチ サイカイジユ筑前 サアカアシ石州」と。
 本州・四国・九州・朝鮮・華東・湖南・河南・山東・河北・遼寧に分布。
 種子は薬用に供し、正常な果実(大皂角,タイソウカク,dàzàojiăo)は薬用のほか、莢にサポニンを含むので石鹼の代用品とする。また畸形の果実は猪牙皂(チョガソウ,zhūyázào)と呼び、とげ(皂角刺(ソウカクシ, zàojiăocì)と呼び、これらも薬用にする。『全國中草藥匯編 上』p.455 『(修訂) 中葯志』III/604-609,V/623-625
 『万葉集』に、

   ■莢に 延
(は)ひおぼとれる 屎葛(くそかづら) 絶ゆる事無く みやづかへせむ
      
(16/3855,高宮王。屎葛はヘクソカズラ)

とある。
 ■莢
(ソウキョウ)の■は 草冠に皂。したがって■莢は、漢語に云う皂莢(ソウキョウ,zàojiá)。
 この皂莢を、かわらふじと読む人と、さいかちと読む人があるが、いずれにしても 指している植物はサイカチ。
 近代では、

   いつのまに黄なる火となりちりにけむ青さいかちの小さき葉のゆめ
   さいかちの青さいかちの実となりて鳴りてさやげば雪ふりきたる
     
(北原白秋『桐の花』1913)

 蒲原有明に「さいかし」(『独絃哀歌』1903)がある。

   落葉林
(おちばばやし)の冬の日に
   さいかし一樹
(ひとき)
      (さなりさいかし、)
   その實は梢いと高く風はかわけり。

   落葉林のかなたなる
   里の少女は
      (さなりさをとめ、)
   まなざし淸きその姿なよびたりけり。

   落葉林のこなたには
   風に吹かれて、
      (さなりこがらし、)
   吹かれて空にさいかしの莢
(さや)こそさわげ。

   さいかしの實は墜ち、
   風にうらみぬ、――
      (さなりわびしや、)
   『命は獨りおちゆきて拾ふすべなし。』

   さいかしの實は枝に鳴り、
   音もをかしく
      (さなりきけかし、)
   墜ちたる殻の友の身をともらひ嘆く、――

   『嗚呼世に盡きぬ命なく、
   朽ちせぬ身なし。』――
      (さなりこの世や、)
   人に知られてさいかしの實は鳴りにけり。

   風おのづから彈きならす
   小琴ならねど、
      (さなりひそかに、)
   枝に縋れる殻の實のおもひかなしや。

   わびしく實る殻の種子
(たね)
   この日みだれて、
      (さなりすべなく、)
   音には泣けども調なき愁ひをいかに。

   かくて世にまた新
(あらた)なる
   光あれども
      (さなり光や、)
   われは歎きぬ、さいかしの古き愁ひを。
          
(蒲原有明『独絃哀歌』1903)
 

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