辨 |
日本で藍と呼ばれる植物には、ほかに国産のヤマアイ、また遅れて外国から渡来したカラアイ・クレナイがある。 |
イヌタデ属 Persicaria(蓼 liăo 屬) については、イヌタデ属を見よ。 |
訓 |
『本草和名』藍実に、「和名阿為乃美」と。
『倭名類聚抄』に、蓼藍は「和名多天阿井」と、藍の澱に「和名阿井之流」と。 |
種小名 tinctorius は、「染色用の、染料の」。 |
英名 indigo の語源については、タイワンコマツナギを見よ。 |
説 |
東南アジア原産という。
漢土では染料作物として、遼寧・吉林・黑龍江・華北・湖北・兩廣・四川・貴州などで古くから栽培、今日では各地で半野生。
日本には、飛鳥時代以前に渡来。 |
茎葉に色素インディゴを含み、乾くと黒っぽい藍色になる。 |
誌 |
藍は、「春に播種し、夏7月頃に刈り取った藍草の葉を乾燥させ、室に寝かせて水を加えて醗酵させ、これを乾燥しあるいは搗き固めて蒅(すくも)藍または玉藍として保存する。染液を作るには、蒅藍または玉藍を藍甕へ入れ、アルカリ(灰汁または石灰)、水、および醗酵助剤として麬(ふすま)、砂糖などを加え、40度C位に加熱しておくと発酵作用によって液中に還元酵素ができ、この作用で藍の葉に含まれた青藍が白藍となる。これに布や糸を浸し取出して空気に曝すと白藍が酸化されて青い色が染着する」(新潮世界美術辞典)。 |
「藍染めは、藍瓶に浸けるごとに濃くなり、順次、
瓶覗き(かめのぞき)→浅葱(あさぎ)→縹(はなだ)→藍(あい)→紺(こん)
などと呼ばれる。なお、日本の印刷業界では、シアン(cyan)のことを藍と呼んでいる」(Color Guide International)。
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藍 Cyan |
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濃紺 Indigo |
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藍甕の液の表面に浮く糟を掬い取り、乾かしたものを靑黛(せいたいi)と呼び、薬用にし、またまゆ墨として用いた。
青黛は 絵の具としても用い、この場合は花靑(かせい)と呼ぶ。 |
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中国では、次のような植物を大靑(タイセイ,dàqīng)と呼び、葉を大靑葉(タイセイヨウ,dàqīngyè)と呼び、色素を乾燥させたものを靑黛(セイタイ,qīngdài)と呼び、青黛を作る時に出る沈殿物を藍靛(ランテン, lándiàn)と呼び、果実を藍実(ランジツ,lánshí)と呼び、根を板藍根(バンランコン,bănlángēn)と呼び、それぞれを薬用にする(〇印は正品)。 『全國中草藥匯編』上/59-60,483,497-498、『中薬志』Ⅰ/291-295,Ⅲ/263-271,628-631、『(修訂) 中葯志』V/1-10,846-849 『中草薬現代研究』Ⅰp.227
〇マキバクサギ Clerodendron cyrtophyllum(C.amplius;大靑・路邊靑)
ナンバンコマツナギ Indigofera suffruticosa(野靑樹・靑黛・西印度木藍・大靑)
タイワンコマツナギ(キアイ・ナンバンアイ) Indigofera tinctoria(木藍)
〇ハマタイセイ(ホソバタイセイ) Isatis tinctoria(I.yezoensis;菘藍)
〇タイセイ Isatis tinctoria var.indigotica(I.indigotica;大靑・草大靑)
〇アイ(タデアイ) Persicaria tinctoria(Polygonum tinctorium;蓼藍・藍)
マダイオウ Rumex madaio(R.daiwoo;土大黃・紅筋大黃)
〇リュウキュウアイ Strobilanthes cusia(S.flaccidifolius,
Baphicacanthes cusia;馬藍)
Strobilanthes dalziellii(山藍)
Strobilanthes pentastemonoides(圓苞金足草・球花馬藍)
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『礼記』「月令」五月に、「民に令して藍を艾(か)りて以て染むること毋く、灰を焼くこと毋く、布を暴(さら)すこと毋く、門閭(もんりょ)は閉づること毋く、関市索(もと)むること毋からしむ」と。
『大戴礼』「夏小正」五月に、「灌たる藍蓼(らんれう。アイとタデ、あるいは二字でアイ)を啓(わか)つ。〔啓(ひら)くとは、別(わか)つなり。陶して之を疏するなり。灌とは聚(あつ)まり生ずる者なり。時を記すなり。〕」と。 |
『荀子』「勧学篇」の冒頭に、「靑取之於藍、而靑於藍(青は之を藍より取りて、藍よりも青し)」と。
ここから、出藍の誉れとは、弟子が師よりも優れていることの喩えとなった。
藍は「酸化によって青い色が発色するので、新しく染めたものを使用し、洗濯したりしていると酸化が進んで青が冴え、"出藍"の美しさが出てくる」(新潮世界美術辞典)という。 |
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