辨 |
ケイトウ属 Celosia(青葙 qīngxiāng 屬)には、主に熱帯に約45-65種がある。
ノゲイトウ C. argentea (青葙,セイショウ,qīngxiāng・野鷄冠花)
『雲南の植物Ⅲ』58・『中国雑草原色図鑑』50
ケイトウ(トサカケイトウ) C. cristata(C.argentea var.cristata;鷄冠花)
ノゲイトウ C.argentea の栽培品,同一種とすることがある
ヤリゲイトウ var. childsii(球冠鷄冠花)
フサゲイトウ(ウモウケイトウ) var. plumosa(羽冠鷄冠花)
タイトウノゲイトウ(臺灣青葙) C. taitoensis 臺灣産
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ヒユ科 Amaranthaceae(莧 xiàn 科)については、ヒユ科を見よ。 |
訓 |
和名「鶏頭」・漢名「鷄冠花」ともに、その花軸がニワトリのとさかに似るのでかく言う(李時珍『本草綱目』)。
ただし、小野蘭山『本草綱目啓蒙』が、「俗ニケイトウト呼、鷄頭ノ意ナルベシ、然ドモ此花ハ鷄ノ冠ニ似タリ、鷄頭ニハ似ズ」というように、漢語で鷄頭(ケイトウ,jitou)と言えば、芡(ケン,qian)すなわちオニバスの果実を言う。
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『本草和名』鷄冠草に、「和名加良阿為」と。
『大和本草』に、「鷄冠花(ケイトウゲ)」と。 |
学名の種小名 cristata も、「鶏冠状の」。 |
別名のカラアイ(韓藍)は、外国から来た藍の意で、クレナイ(呉の藍)の対語(なお、単にアイというものは蓼藍)。 |
仏典に見える波羅奢(ハラシャ,bōluóshē)は、サンスクリット語の「赤い花」の音写。 |
説 |
熱帯インド原産という。今日では、広く世界の熱帯・亜熱帯に分布する。
中国には唐代に渡来し、宋代に広まった。
日本には奈良時代に渡来。今日では、本州西部から琉球に帰化している。 |
誌 |
中国では、嫩葉・種子を食用にし、花序(鷄冠花)・種子(青葙子、ノゲイトウを見よ)を薬用にする。『中薬志』Ⅱpp.230-234,Ⅲpp. 334-335 『全國中草藥匯編 上』p.429 『(修訂) 中葯志』V/232-235
日本では、花穂を鶏冠花と、種子を鶏冠子と呼ぶ。 |
日本では、『万葉集』の時代には 赤い色の染料。江戸時代には 若葉を食用にした。 |
『万葉集』に、
吾が屋戸に 韓藍種ゑ生(おほ)し かれぬれど 懲りずて亦も 蒔かんとぞ念ふ
(3/384,山辺赤人)
秋去らば うつしもせむと 吾蒔きし 韓藍の花を 誰か採みけむ
(7/1362,読人知らず)
恋ふる日の け長くあれば 吾が苑圃(その)の から藍の花の 色に出にけり
(10/2278,読人知らず)
隠りには 恋ひて死ぬとも み苑ふの 鶏冠草の花の 色に出でめやも
(11/2784,読人知らず)
とある。『和名本草』に「鶏冠草 和名加良阿為」とあるのに従う。 |
「鶏頭花(けいとうげ) 肥地によし。手入れよくこやしぬれば、茎葉大きになり、茹(ゆび)きてあへ物、ひたし物とし、味よし。花さまざま見事なるあり。其味も莧(ひゆ)には増れり。云々」(宮崎安貞『農業全書』1697)。 |
小野蘭山『本草綱目啓蒙』(1806)に「鶏冠ニ数種アリ」として、
高麗鶏頭・南京鶏頭・チャボ鶏頭: 葉短く3、5寸、花は大。寿星鶏冠・広東鶏冠。
槍鷄頭・杉なり鷄頭: 花は円形、先が尖る。掃帚鶏冠。
とさか鷄頭・ひら鷄頭: 花の形扁大。扇面鶏冠。
乱れ鶏頭・纓絡鶏頭: 掃帚鶏冠の形で、花の末・傍に扇面の如き枝を出し、下垂する。纓絡鶏冠。
咲分け鶏頭: 紅黄二色混じり咲く。二色鶏冠。
などを区別する。
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鶏頭や雁の来る時尚あかし (芭蕉,1644-1694。なお、漢名を雁來紅というものはハゲイトウ)
菊鶏頭きり尽しけり御命講 (同)
秋風の吹のこしてや鶏頭花 (蕪村,1716-1783)
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鶏頭の血のしたたれる厩にも秋のあはれの見ゆる汽車みち
三月まへ穂麦のびたる畑なりいま血のごとく鶏頭の咲く
(北原白秋『桐の花』1913)
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歴代の絵画作品には、次のようなものがある。
伝銭選筆「鶏頭図」軸() |