けいとう (鶏頭) 

学名  Celosia cristata (C. argentea var. cristata)
日本名  ケイトウ
科名(日本名)  ヒユ科
  日本語別名  トサカケイトウ、ハラシャ(波羅奢)、カラアイ(韓藍)
漢名  鷄冠花(ケイカンカ,jīguānhuā)
科名(漢名)  莧(カン,xiàn)科
  漢語別名  鷄冠、紅鷄冠、波羅奢(ハラシャ,bōluóshē)
英名  Common cockscomb
2005/08/23 三芳町竹間沢
2004/07/31 同上

2006/08/28 所沢市本郷

 ケイトウ属 Celosia(青葙 qīngxiāng 屬)には、主に熱帯に約45-65種がある。

  ノゲイトウ C. argentea (青葙,セイショウ,qīngxiāng・野鷄冠花)
        
 『雲南の植物Ⅲ』58・『中国雑草原色図鑑』50
  ケイトウ
(トサカケイトウ) C. cristata(C.argentea var.cristata;鷄冠花)
         
ノゲイトウ C.argentea の栽培品,同一種とすることがある 
    ヤリゲイトウ var. childsii(球冠鷄冠花)
    フサゲイトウ
(ウモウケイトウ) var. plumosa(羽冠鷄冠花)
  タイトウノゲイトウ(臺灣青葙) C. taitoensis
臺灣産 
   
 ヒユ科 Amaranthaceae(莧 xiàn 科)については、ヒユ科を見よ。
 和名「鶏頭」・漢名「鷄冠花」ともに、その花軸がニワトリのとさかに似るのでかく言う(李時珍『本草綱目』)
 
ただし、小野蘭山『本草綱目啓蒙』が、「俗ニケイトウト呼、鷄頭ノ意ナルベシ、然ドモ此花ハ鷄ノ冠ニ似タリ、鷄頭ニハ似ズ」というように、漢語で鷄頭(ケイトウ,jitou)と言えば、芡(ケン,qian)すなわちオニバスの果実を言う。
 『本草和名』鷄冠草に、「和名加良阿為」と。
 『大和本草』に、「鷄冠花(ケイトウゲ)」と。 
 学名の種小名 cristata も、「鶏冠状の」。
 別名のカラアイ(韓藍)は、外国から来た藍の意で、クレナイ(呉の藍)の対語(なお、単にアイというものは蓼藍)
 仏典に見える波羅奢(ハラシャ,bōluóshē)は、サンスクリット語の「赤い花」の音写。
 熱帯インド原産という。今日では、広く世界の熱帯・亜熱帯に分布する。
 中国には唐代に渡来し、宋代に広まった。
 日本には奈良時代に渡来。今日では、本州西部から琉球に帰化している。
 中国では、嫩葉・種子を食用にし、花序(鷄冠花)・種子(青葙子、ノゲイトウを見よ)を薬用にする。『中薬志』Ⅱpp.230-234,Ⅲpp. 334-335 『全國中草藥匯編 上』p.429 『(修訂) 中葯志』V/232-235
 日本では、花穂を鶏冠花と、種子を鶏冠子と呼ぶ。
 日本では、『万葉集』の時代には 赤い色の染料。江戸時代には 若葉を食用にした。 
 『万葉集』に、

   吾が屋戸に 韓藍種ゑ生
(おほ)し かれぬれど 懲りずて亦も 蒔かんとぞ念ふ
      
(3/384,山辺赤人)
   秋去らば うつしもせむと 吾蒔きし 韓藍の花を 誰か採みけむ
      
(7/1362,読人知らず)
   恋ふる日の け長くあれば 吾が苑圃
(その)の から藍の花の 色に出にけり
      
(10/2278,読人知らず)
   隠りには 恋ひて死ぬとも み苑ふの 鶏冠草
の花の 色に出でめやも
      
(11/2784,読人知らず)

とある。『和名本草』に「鶏冠草 和名加良阿為」とあるのに従う。
 「鶏頭花(けいとうげ)  肥地によし。手入れよくこやしぬれば、茎葉大きになり、茹(ゆび)きてあへ物、ひたし物とし、味よし。花さまざま見事なるあり。其味も莧(ひゆ)には増れり。云々」(宮崎安貞『農業全書』1697)。
 小野蘭山『本草綱目啓蒙』(1806)に「鶏冠ニ数種アリ」として、
   高麗鶏頭・南京鶏頭・チャボ鶏頭:
葉短く3、5寸、花は大。寿星鶏冠・広東鶏冠。
   槍鷄頭・杉なり鷄頭:
花は円形、先が尖る。掃帚鶏冠。
   とさか鷄頭・ひら鷄頭:
花の形扁大。扇面鶏冠。
   乱れ鶏頭・纓絡鶏頭:
掃帚鶏冠の形で、花の末・傍に扇面の如き枝を出し、下垂する。纓絡鶏冠。
   咲分け鶏頭:
紅黄二色混じり咲く。二色鶏冠。
などを区別する。

   鶏頭や雁の来る時尚あかし 
(芭蕉,1644-1694。なお、漢名を雁來紅というものはハゲイトウ)
   菊鶏頭きり尽しけり御命講 (同)

   秋風の吹のこしてや鶏頭花 
(蕪村,1716-1783)
 

   鶏頭の血のしたたれる厩にも秋のあはれの見ゆる汽車みち
   三月まへ穂麦のびたる畑なりいま血のごとく鶏頭の咲く
     
 (北原白秋『桐の花』1913)
 
 歴代の絵画作品には、次のようなものがある。
   伝銭選筆「鶏頭図」軸()

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