とねりこ (梣) 

学名  Fraxinus japonica
日本名  トネリコ
科名(日本名)  モクセイ科
  日本語別名  サトトネリコ、タモ・タモノキ、タゴ・タゴノキ、ダンキ・ダンノキ
漢名   
科名(漢名)   
  漢語別名   
英名   
2006/05/05 神代植物公園

 Kew植物園・『植物智』は、トネリコ Fraxinus japonica を チョウセントネリコ F.chinensis subsp.rhynchophylla(花曲柳)のシノニムとする。しかしながら、逆にチョウセントネリコをトネリコのシノニムとする説もある。 
 トネリコ属 Fraxinus(梣 cén 屬)の植物には、北半球の亜熱帯・温帯に約50種がある。

  アメリカトネリコ F. americana(美國白梣・美國白蠟樹・洋白蠟)
  ホソバトネリコ f. angustifolia(窄葉梣)
  ミヤマアオダモ F. apertisquamifera
本州(東北南部~中部)・四国産
  ヒメトネリコ F. bungeana(小葉梣・小葉白蠟樹・秦皮)
遼寧・華北・山東・安徽産
         『中薬志Ⅲ』p.453・『中国本草図録』Ⅳ/1791
  トネリコヤチダモ F. chiisanensis
  コウリョウトネリコ F. chinensis(F.rhynchophylla var.densata, F.densata,
         F.rhynchophylla var.huashanensis, F.szaboana;
         ,シン,cén・白蠟樹) 朝鮮・漢土全域・インドシナ産
         
『中国本草図録』Ⅱ/0759 『(修訂) 中葯志』V/471-481 『全国中草葯匯編』上/670-672
  セイヨウトネリコ F. excelsior(歐梣) イギリス・ヨーロッパ乃至カフカスに分布
  シマトネリコ
(タイワンシオジ) F. griffithii(F.griffithii var.kosyunensis,
         F.formosana, F.eedenii;光蠟樹)
  シマタゴ F. insularis(F.retusa, F.floribunda subsp.insularis;苦櫪木)
         
琉球・臺灣・華東・湖南・兩廣・四川・貴州・雲南産
  トネリコ F. japonica
  F. lanuginosa
    ケアオダモ
(アラゲアオダモ) f. lanuginosa(F.sieboldiana var.pubescens)
    アオダモ
(コバノトネリコ) f. serrata(F.sieboldiana var.serrata)
    ビロードアオダモ f. veltina
  ヤマトアオダモ
(オオトネリコ) F. longicuspis(F.borealis;尖萼梣)
         
本州・四国・九州・河南・華東産 『中国本草図録』Ⅴ/2245
    ツクシトネリコ var. latifolia(var.pilosella, F.satsumana)
  F. malacophylla(白槍桿)
 廣西・雲南産 『中国本草図録』Ⅴ/2246 『全国中草葯匯編』下/207-208
  ヤチダモ F. mandshurica(F.mndshurica var.japonica, F.nigra subsp.mandshurica,
         F.excelsissima;水曲柳)
『中国本草図録』Ⅳ/1793
  マンナシオジ F. ornus(花梣)
  F. paxiana(秦嶺梣)
陝甘・兩湖・四川産
  ビロードトネリコ F. pennsylvanica(美國紅梣)
    ソウマシオジ var. subintegerrima(F.lanceolata;綠梣・洋白蠟)
  シオジ F. platypoda(F.spaethiana;象蠟樹) 本州(関東以西)・四国・九州・陝甘・湖北・四川・貴州・雲南産
    ヤマシオジ f. nipponica(F.spaethiana var.nipponica)
  チョウセントネリコ(オオトネリコ) F. rhynchophylla
         (F.chinensis subsp.rhynchophylla;
         花曲柳,カキョクリュウ,huāqūliŭ・大葉梣,タイヨウシン,dàyècén・
         苦櫪白蠟樹・東北大葉梣・大葉苦櫪・大葉白蠟樹)
         『中薬志Ⅲ』pp.448-453 『全国中草葯匯編』上/670-672 『中国本草図録』Ⅶ/3298
         朝鮮・ロシア沿海地方・遼寧・吉林・黑龍江・・華北産
  マルバアオダモ F. sieboldiana(F.mariesii;廬山梣)
    ハクウントネリコ var. quadrijuga
  F. stylosa(F.fallax;宿柱梣)
河南・陝甘・四川産
  F. suaveolens(F. sikkimensis;香白蠟樹・錫金梣)
         
四川・貴州・雲南・チベット・シッキム・アッサム産『雲南の植物Ⅰ』201 
   
 ヨーロッパ・西アジアに分布するものは セイヨウトネリコ F. excelsior (英名は Common ash)。
 モクセイ科 Oleaceae(木樨 mùxī 科)については、モクセイ科を見よ。
 漢名梣(シン)の音は古来一定しない。今日でも、『漢語大字典』『漢語大詞典』は cén、『中日大辞典』『中国語大辞典』及び『植物智』は chén、ここでは前者に従う。 
 和名トネリコは、ともねりこ(共練濃)の転訛。昔 この樹皮を煮てにかわ状にし、これに墨を混ぜて練り、写経に用いたことから。
 トネリコ・タモノキの名は、共に平安時代から記録がある。しかし一説に、かつてのトネリコは今日のアオダモ類、タモノキはハルニレあるいはタブノキだという。
 『本草和名』秦皮、一名岑皮、一名石檀に、「和名止祢利古乃岐、一名多牟岐」と。
 『延喜式』秦皮に、「トネリコノカハ」と。
 『倭名類聚抄』石檀に「秦皮、一名石檀〔和名止禰利古乃木、一云太無乃木〕」と。
 小野蘭山『本草綱目啓蒙』に、秦皮は「トネリコ トネリコノキ
和名鈔 タムノキ同上 ダゴノキ加州 アヲタゴ木曾 トウネヂコ江州」と。
 トネリコは、本州(中部~奥羽)に分布。
 チョウセントネリコは、朝鮮・遼寧・吉林・黑龍江・華北・ロシア沿海地方に分布。
 中国では、次のような植物の樹皮を秦皮(シンヒ,qínpí)と呼び薬用にする。   『全国中草葯匯編』上/670-672 『(修訂) 中葯志』V/471-481 

   ヒメトネリコ Fraxinus bungeana(小葉梣・小葉白蠟樹・秦皮)
  〇コウリョウトネリコ Fraxinus chinensis(F.szaboana;梣・白蠟樹)
   ヤチダモ Fraxinus mandshurica(水曲柳)
   Fraxinus paxiana(秦嶺梣)
   ビロードトネリコ Fraxinus pennsylvanica(美國紅梣・美洲綠梣)
  〇チョウセントネリコ Fraxinus rhynchophylla(花曲柳・大葉梣)
  〇Fraxinus stylosa(F.fallax;宿柱梣)
   マンシュウグルミ Jugrans mandshurica
 
 材は弾力に富み、日本では縄文時代の鳥浜遺跡(福井県三方町)からは弓が出土している。時に稲架木(はさぎ)として田の畔に植えられた。
 今日では、野球のバットの材として用いる。
 北欧神話に出る巨大な宇宙樹イグドラシル Yggdrasill は、セイヨウトネリコ。


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