辨 |
変種にキタコブシ var. borealis がある。
コブシの名を持つものとして ほかにシデコブシ・ベニコブシが、コブシと酷似するものとしてタムシバがある。 |
モクレン属 Magnolia(木蘭 mùlán 屬)の植物については、モクレン属を見よ。 |
訓 |
和名は、蕾の形が拳に似ることから(大言海など)。
別名のヤマアララギ・コブシハジカミは、実が有毒で、噛むと辛いことから。(あららぎはノビル、はじかみはサンショウ。) |
古来 日本では漢名として辛夷(シンイ)を当てている。
『本草和名』辛夷に、「和名也末阿良々岐」と。
『倭名類聚抄』辛夷に、「和名夜末阿良々木、一云古不之波之加美」と。
小野蘭山『本草綱目啓蒙』辛夷に、「ヤマアラゝギ和名鈔 コブシハジカミ同上 コブシ コボウシ越前 コボシ丹波」と。 |
しかし漢名の辛夷(シンイ,xīnyí)は狭義にはモクレン(シモクレン) M.liliflora を指し、広義には一般にモクレン属の花を指す。他方、コブシは漢土には産しない。
以上により、コブシに辛夷を当てるのは適切ではない。 |
『日本国語大辞典 第二版』によれば、ヒキザクラはコブシの古名という。
『本草和名』無夷に、「和名比岐佐久良、一名也尓礼乃美」と。 |
学名の種小名は、和名から。 |
説 |
北海道・本州・九州・朝鮮(済州島)の温帯から温帯上部に自生。中国では靑島・杭州で栽培。
葉・実を噛むと辛い。 |
萼片は3個、披針形。花瓣は6個、へら状倒卵形。花の下に葉が一枚つく。 |
誌 |
材は器具を作るのに用い、炭は金銀の研磨に用いる。
花から香水を作り、蕾を辛夷(シンイ)と呼び薬用にする。
日本では、生薬シンイ(辛夷)は Magnolia biondii、ハクモクレン、Magnolia sprengeri、タムシバ又はコブシのつぼみである(第十八改正日本薬局方)。
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北国に春を告げる花であり、この花がさくと田仕事を始める指標であった。 |
『花壇地錦抄』(1695)巻三「辛夷(こぶし)のるひ」に、「こぶし 花白、八重ひとへあり。葉ハかしわのごとし。一名を木筆共云。初ニ葉出ル時、かしら筆のごとし」と。ただし、木筆は漢土におけるシモクレンの異称。 |