辨 |
ブナ科 Fagaceae(殻斗 カクト,qiàodŏu 科) コナラ属 Quercus(櫟 lì 屬) は、次の2亜属からなる。
コナラ亜属 subgen. Quercus(櫟 lì 亞屬)
広く世界に約300種がある。このグループの植物を、和語で「なら」と総称する。
アカガシ亜属 subgen. Cyclobalanopsis(靑棡 qīnggāng 亞屬)
アジアの熱帯・亜熱帯を中心に約150種がある。このグループの植物を、和語で「かし」と総称する。
これらの2亜属は、それぞれ属 genus として扱うことがある。
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アカガシ亜属 subgen. Cyclobalanopsis(靑棡 qīnggāng 亞屬)、すなわちカシ類には、約150種がある。
アカガシ(オオガシ・オオバガシ) Q. acuta(Cyclobalanopsis acuta;
赤櫟;E.Japanese evergreen oak)
Q. albicaulis(白枝靑棡)
Q. annulata(環靑棡)
Q. argyalis(白背靑棡)
Q. argyrotricha(貴州靑棡)
Q. augustinii(掃把靑棡・掃把椆・掃把櫟)
Q. austro-glauca(南靑棡)
Q. bamboosaefolia(竹葉靑棡・竹葉椆・竹葉櫟)
Q. belferiana(毛枝靑棡)
Q. bella(檳榔靑棡・檳榔椆・美櫟・宜都子)
Q. blakei(櫟子靑棡・櫟子椆・小葉嶺楣・櫟子樹)
Q. breviradiata(星毛靑棡)
Q. camusae(法斗靑棡)
ツリガネガシ Q. championii(Cyclobalanopsis championii;嶺南靑棡・嶺南椆)
Q. chapensis(扁果靑棡)
Q. chevalieri(黑果靑棡)
Q. chingsiensis(靖西靑棡)
Q. chrysocalyx(金毛斗靑棡)
Q. chungii(南嶺靑棡)
Q. ciliaris(小枝靑棡)
Q. daxinensis(大新靑棡)
Q. delavayi(黄背葉靑棡・黄椆・黄櫟)
Q. delicatula(上思靑棡)
Q. dinghuensis(鼎湖靑棡)
Q. disciformis(碟斗靑棡)
Q. edithae(華南靑棡)
Q. fargesii(城口靑棡)
Q. fleuryi(飯甑靑棡・飯甑椆・金鐘飯甑子・飯甑樹)
Q. gaoligongensis(高黎貢靑棡)
イチイガシ Q. gilva(Cyclobalanopsis gilva;赤皮椆・赤皮靑棡・赤皮)
アラカシ Q. glauca(Cyclobalanopsis repandifolia, C.glauca;
靑棡・鐵椆・靑剛櫟・鐵櫟・靑栲;E.Blue Japanese oak)
マルミアラカシ Q. globosa(Cyclobalanopsis globosa)
Q. hainanica(海南靑棡)
Q. helferiana(毛枝靑棡・毛枝椆・毛枝滇靑棡)
ハナガガシ Q. hondae(Cyclobalanopsis hondae) 四国・九州産
Q. hui(雷公靑棡・雷公椆・苦槌樹・檳榔樹・雷公果)
Q. hunanensis(湖南靑棡)
Q. hypargyrea(粉背靑棡)
モンバガシ Q. hypophaea(Cyclobalanopsis hypophaea;絨毛靑棡・絨毛櫟)
セイヨウヒイラギガシ Q. ilex(冬靑櫟) 地中海地方・中歐(南部)産
Q. jenseniana(大葉靑棡・大葉椆)
Q. kiukiangensis({人求}江靑棡)
Q. kouangensis(廣西靑棡)
Q. lamellosa(薄片靑棡・薄片椆)
Q. litseoides(木{木羌}葉靑棡)
Q. longinux(長果靑棡)
Q. lungmaiensis(龍邁靑棡)
Q. meihuashanensis(梅花山靑棡)
オキナワウラジロガシ Q. miyagii(Q.yaeyamensis,
Cyclobalanopsis yaeyamensis,C.miyagii) 琉球産
タイワンアカガシ Q. morii(Cyclobalanopsis morii;臺灣靑棡・臺灣椆・赤柯)
Q. motuoensis(墨脱靑棡)
シラカシ(クロガシ) Q. myrsinifolia(Cyclobalanopsis myrsinifolia;
小葉靑棡・靑椆・苦櫧・靑栲・細葉靑櫟)
Q. nanchuanica(南川靑棡)
Q. nubium(雲山靑棡・雲山椆・紅椆・亮葉櫟・楊梅栗)
Q. obovatifolia(倒卵葉靑棡)
Q. oxyodon(曼靑棡・曼椆・短櫧樹・蠻靑岡)
ナガエガシ Q. pachyloma(Cyclobalanopsis pachyloma;赤材靑棡・赤椆)
Q. patelliformis(托盤靑棡)
Q. pentacyclea(五環靑棡)
Q. phanera(殼葉靑棡)
ウバメガシ Q. phillyreoides(烏棡櫟)
Q. pinbianensis(屏邊靑棡)
Q. rex(大果靑棡・大果椆)
ウラジロガシ Q. salicina(Cyclobalanopsis stenophylla, C.salicina)
Q. schottkyana(滇靑棡・滇椆・擬櫧)
Q. semiserratoides(擬半齒靑棡)
ツクバネガシ Q. sessilifolia(Cyclobalanopsis sessilifolia;雲山靑棡・雲山椆)
Q. sichourensis(西疇靑棡)
Q. songtavanensis(灰枝靑棡)
ヒイラギガシ Q. spinosa
Q. stewardiana(褐葉靑棡・黔椆)
アリサンアラカシ Q. stenophylloides(Cyclobalanopsis stenophylloides;臺窄葉靑棡)
コルクガシ Q. suber(歐洲栓皮櫟)
地中海地方(イタリア以西)産 厚い樹皮をコルクとして利用
Q. subhinoidea(平脈靑棡)
タロコガシ Q. taronensis(獨龍靑棡)
タータカガシ Q. tatakensis
Q. thorelii(厚緣靑棡)
Q. tiaoloshanica(吊羅山靑棡)
Q. tranninhensis(鎭寧靑棡)
Q. xanthotricha(黄毛靑棡)
Q. xizangensis(西藏靑棡)
なお、アカガシ亜属 subgenus Cyclobalanopsis(椆亞屬・靑棡亞屬)を、アカガシ属 Cyclobalanopsis(椆屬・靑棡屬)とすることがある。 |
ブナ科 Fagaceae(殻斗 qiàodŏu 科)については、ブナ科を見よ。 |
訓 |
「かしノ意不明、一説ニかしハかしはのきノ略ト言ヘド首肯シ難シ、かしハ一ニかたぎト稱スルヲ以テ堅木ヲ合シテ樫ノ和字ヲ作リかしト訓ゼリ」(『牧野日本植物図鑑』)。
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『倭名類聚抄』橿に「和名加之」と。
小野蘭山『本草綱目啓蒙』櫧木に、「カシノミ セウグメ志州 カシノキ以下、樹ノ名 カタギ」と。 |
関西地方にはアラカシが多く、関西でたんにカシといえば アラカシを指すという(松田)。 |
漢名は椆(チュウ,chóu)・櫧(チョ,zhū)。 |
英名を oak という樹木については、ナラを見よ。 |
説 |
カシ類はいずれもアジアに産し、ヨーロッパなどには分布しない。
東・東南アジアでは、照葉樹林の主要な構成要素である。 |
誌 |
『日本書紀』巻10応神天皇19年10月の条に、吉野の宮で、国樔人(くずひと)が天皇に醴酒(こざけ)を献り、歌った歌に、
橿(かし)の生(ふ)に 横臼(よくす)を作り 横臼に 醸(か)める大御酒(おほみき)
うまらに 聞(きこ)し持ち食(を)せ まろが父
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『古事記』下巻に、雄略天皇(5c.後半)の歌の一つに、
みもろ(御室)の いつかし(厳白檮)がもと かし(白檮)がもと
ゆゆ(忌忌)しきかも かしはら(白檮原)をとめ(童女)
いつかしは、稜威のあるカシ、神樹としてのカシである。 |
『万葉集』に、
(上二句、難解にして諸訓定まらず) 吾が瀬子が
い立たせりけむ いつかし(厳橿)が本 (1/9,額田王。下二句にも別訓がある)
級(しな)照る 片足羽河の さ丹(に)塗りの 大橋の上ゆ
紅の 赤裳すそ引き 山藍もち 摺れる衣服(き)て ただ独り い渡らす児は
若草の 夫(つま)か有るらむ 橿(かし)の実の 独りか寝らむ
問はまくの 欲しき吾妹が 家の知らなく (9/1742,読人知らず)
カシの実はドングリ。一つずつ生るので、「かしの実の」は「ひとり」にかかる枕詞。 |
『花壇地錦抄』(1695)巻三「冬木之分」に、「かしの木 葉ハもちのるい、異有。白かし赤かしの二種あり」と。 |
樫の木の花にかまはぬ姿かな (芭蕉,1644-1694)
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