辨 |
一般にツゲの名で庭に植えられる園芸樹木はこれである。
ただし、植物学上のツゲ Buxus microphylla var. japonica は、まったくの別植物。ツゲの葉は対生、イヌツゲの葉は互生。 |
Ilex crenata には、次のような種内分類群がある。
イヌツゲ var. crenata
オオバイヌツゲ f. latifolia 本州(関東南部・伊豆半島・紀伊半島)・四国・九州産
マメツゲ(マメイヌツゲ) 'Bullata' 園芸品種
ツクシイヌツゲ var. fukasawana
ハイイヌツゲ var. radicans 北海道・本州(東北・中部以西の日本海側)・千島・樺太産
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モチノキ属 Ilex(冬靑 dōngqīng 屬)については、モチノキ属を見よ。 |
訓 |
「和名犬黄楊ハつげ(Buxus)ニ似ルト雖モ下品ニシテつげノ如ク用途無キヲ以テ云フ」(『牧野日本植物図鑑』)。 |
小野蘭山『本草綱目啓蒙』(1806)32に、柞木は「イヌツゲ ヤドメ加州越州 ヨメガサラ ケヅラ江州 カシラケヅリ カシラケヅラ共同上 ガニノス播州 コメゴメ紀州、同名多シ ハマツゲ筑前 ビンカゞリ同上 ビンカゝ佐州 ビンカゝズ信州 ビンカラズ三才図絵 メハリギ土州 カシラツカミ同上 ネヂノキ」と。 |
説 |
本州(岩手県以南の太平洋側・近畿以西)・四国・九州・朝鮮南部・臺灣・華東・兩湖・兩廣に分布。 |
誌 |
モチノキ属のほとんどの種から黐(もち)が採れるが、モチノキから採るものを本黐、タラヨウ・イヌツゲから採るものを青黐と呼んで区別する。 |
『花壇地錦抄』(1695)巻三「冬木之分」に、「柘(つげ) 大つげハ葉大キクてわろし。こつげを上とス。 ひめつげ 葉こまかにして木もちいさし。故ニ草つげ共いふ。 白つげ 葉青白く大きし。やどめ 小つげの事也。葉色黒し」と。
これらの内、大つげはイヌツゲ、ひめつげはヒメツゲであろう。 |