菱の實採るは誰が子ぞや 
 

作者名  蒲原有明 (1875-1952)
作品名  菱の實採るは誰が子ぞや
制作年代  
収載書名  『草わかば』
刊行年代  1902
 その他  
 
菱の實
(み)とるは誰が子ぞや
くろかみ風にみだれたる

菱の實とるは誰が子ぞや
ひとり浮びて古池
(ふるいけ)

鄙歌
(ひなうた)のふしおもしろく
君なほざりにうたふめり

(こゑ)夢ごこちほそきとき
ききまどふこそをかしけれ

かごはみてりや秋深く
(み)はさばかりにおほからじ

菱の葉のみは朽つれども
げに菱の實はおほからじ

かごはみたずや光なき
日は暮れてゆく短さよ

なほなげかじなうらわかみ
なさけにもゆる君ならば

君や菱賣
(う)る影清く
はしる市路
(いちぢ)のゆふまぐれ

そのすがたをば憐
(あはれ)みて
ああなど誰かつらからむ

君がゑまひの花かげに
ふれなばおちむ實こそあれ

うるはしとおもふ實のひとつ
いつかこの身にこぼれけむ

旅ゆき迷ふわづらひも
しばしぞ今は忘らるる

あやしむなかれわれはただ
なさけのかげを慕ふのみ

さながらわれは若櫨
(わかはじ)
枝に來て鳴く小鳥
(ことり)のみ
 詠いこまれた植物   ヒシハゼノキ

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