ひし (菱)
学名 |
Trapa jeholensis (T. japonica, T.bispinosa var.makinoi, T.bispinosa var.iinumae,
T.natans var.bispinosa) |
日本名 |
ヒシ |
科名(日本名) |
ミソハギ科 |
日本語別名 |
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漢名 |
菱・蔆(リョウ,líng) |
科名(漢名) |
千屈菜(センクツサイ,qiānqūcài)科 |
漢語別名 |
菱角(リョウカク,língjiăo)、芰(キ,jì) |
英名 |
(Japanese) Water chestnut, Water caltrop |
2024/04/25 植物多様性センター |
2007/05/10 薬用植物園 |
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2004/06/10 万葉植物園 |
2004/07/01 同左 |
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2004/08/17 薬用植物園 |
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2010/08/21 富山県中央植物園 |
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辨 |
ヒシ属 Trapa(菱 líng 屬)は、種の分類が一定せず、1乃至約30種を数える。
ヒメビシ T. incisa(四角刻葉菱) 北海道・本州・四国・九州・朝鮮・中国東北・ウスリー産
ヒシ T. jeholensis(T. japonica, T.bispinosa var.makinoi, T.bispinosa var.iinumae;
菱・丘角菱) 『中国本草図録』Ⅰ/0235
シリブトビシ T. macropoda(四角大柄菱)
オニビシ T. natans
コウモリビシ var. bicornis(T.bicornis)
トウビシ var. bispinosa(T.bispinosa, T.bicornis var.bispinosa)
var. natans(歐菱;E.Jesuit's nut, Water caltrop)
歐洲産、北米に帰化して異常繁殖
コオニビシ var. pumila(T.potaninii, T.gracilipes)
オニビシ var.quadrispinosa(T.natans var.japonica, T.manshurica var.tranzschelii,
T.manshurica, T.amurensis;東北菱・野菱・四角菱・四角野菱)
マンセンビシ T. pseudincisa(T.komarovii;格菱)
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ミソハギ科 LYTHRACEAE(千屈菜 qiānqūcài 科)については、ミソハギ科を見よ。 |
訓 |
「和名ひしハ緊(ヒシ)ノ意ニテ實ノ鋭刺ヨリ謂ヘルカト云ハレ、又ひしぐ(挫ぐ)ノ意ニテ其壓扁セラレタル果實ノ狀ニ基クトモ謂ヘリ。予ハ其葉ノ平布セル狀卽チひしげタル狀ヨリ云フニ非ズヤトモ思フ」(『牧野日本植物図鑑』)。 |
『本草和名』芰実、及び『倭名類聚抄』菱子に、「和名比之」と。
『大和本草』に、「芰實(ヒシ) 一名蔆、又作菱」と。
小野蘭山『本草綱目啓蒙』芰実に、「ミスモクサ古歌 ヒシ」と。 |
漢名の菱・蔆(リョウ,líng)は、同字。 |
説 |
日本・朝鮮・漢土全域・ウスリーに分布。埼玉県では準絶滅危惧(NT)。
中国・インド・日本ではしばしば栽培する。 |
誌 |
ヒシ類の実は澱粉を含むので、食用にし 酒を醸し、また薬用にする。 |
中国では、『礼記』「内則」に、周代の君主の日常の食物の一として蔆を記す。 |
舟を出してヒシの実を収穫する仕事(採菱)は、中国では女性の役割。ハスの実を採る採蓮と並んで、水郷の秋の風物詩であった。 |
日本では、菱は『日本書紀』に載る応神天皇(5c.初)の歌に初見。
みづ(水)たま(渟)る よさみ(依網)のいけ(池)に
ぬなは(蓴)く(繰)り は(延)えけくし(知)らに
ゐぐひ(堰杙)つ(築)く かはまたえ(川俣江)の
ひしがら(菱茎)の さ(刺)しけくし(知)らに
あ(吾)がこころ(心)し いやうこ(愚)にして
『万葉集』には、採菱のようすを詠う。
君がため浮沼(うきぬ)の池の菱採(つ)むと吾が染(し)めし袖ぬれにたるかも
(7/1249,柿本人麻呂)
豊国の企玖(きく)の池なる菱のうれ(末)を採むとや妹が御袖ぬれけむ
(16/3876,豊前国の白水郎)
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近代では、
菱の實(み)とるは誰が子ぞや
くろかみ風にみだれたる ・・・
蒲原有明「菱の實採るは誰が子ぞや」(『草わかば』1902)より
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