とちばにんじん (橡葉人参) 

学名  Panax japonicus (P.ginseng var.japonicus,
  P.pseudoginseng subsp.japonicus, P.schin-seng var.japonicus)
日本名  トチバニンジン
科名(日本名)  ウコギ科
  日本語別名  チクセツニンジン(竹節人参)、ワニンジン(和人参)、サツマニンジン、ヨシノニンジン、キニンジン、ゴヨウニンジン、ウコギニンジン、カノニゲクサ
漢名  大葉三七(タイヨウサンシチ,dàyè sānqī)
科名(漢名)  五加(ゴカ,wŭjiā)科
  漢語別名  田七(デンシチ,tiánqī)・田三七、明七、白三七、蘿蔔七、蜈蚣七、七葉子、珠子七、竹節參(チクセツシン,zhújiéshēn)・竹節人參・竹根三七、蜈蚣七、大葉三七、竹鞭三七、羅漢三七、鷄頭七、峨三七
英名  
2008/05/24 東京薬科大学薬草園

2006/06/22 薬用植物園
2007/06/20 同上

 トチバニンジン属 Panax(人參 rénshēn 屬)には、東アジア・北アメリカに5-14種がある。

  P.arunachalensis
東ヒマラヤ産
  P. assamicus
東ヒマラヤ・アッサム産
  ヒマラヤニンジン P. bipinnatifidus(P.pseudoginseng var.himalaicus,
         P.pseudoginseng var.major, P.major, P.japonicus var.major;
         珠子參・鈕子七・土三七・疙瘩七(ギットウシチ,gēdáqī)・大葉三七・竹節人參・
         ・盤七・羽葉三七・竹根七・黃連三七・花は三七)
         
陝西・甘肅・寧夏・河南・安徽・浙江・江西・湖北・四川・雲南・西藏・ヒマラヤ産
         『中国本草図録』Ⅱ/0739 『雲南の植物Ⅱ』188 『全國中草藥匯編 上』pp.349-350,635-636
         
『(修訂)中葯志』I/21-23
  チョウセンニンジン
(オタネニンジン) P. ginseng(P quinquefolius var.ginseng,
         P. schinseng var.coraiensis, P. verus;
         人參・棒槌・人銜・鬼蓋・土精・神草・黃參・血參)
  トチバニンジン
(チクセツニンジン) P. japonicus(P.pseudoginseng subsp.japonicus,
         P.repens;大葉三七・竹節人參・竹根三七・明七・蜈蚣七・竹鞭三七・
         羅漢三七・蘿蔔七・白三七・鷄頭七・土參) 
漢土では河南・陝甘・西南に産
    ホソバチクセツニンジン var. angustatus(狹葉假人參・狹葉竹節參・柳葉竹根七)
          『中国本草図録』Ⅶ/3247
  サンシチニンジン P. notoginseng(P.pseudoginseng var.notoginseng,
         Aralia quinquefolia var.notoginseng, P.sanchi;
         三七(サンシチ,sānqī)・人參三七・參三七・田七・旱三七・盤龍七・金不換)
         
ベトナム産、古くから雲南・廣西で栽培、近年浙江・江西・福建・廣東でも栽培
         『中国本草図録』Ⅱ/0738・『中草藥現代研究』Ⅲ /191
         『中薬志』I/18・『(修訂)中薬志』I/11-16・『全國中草藥匯編』上/24-25
  P. pseudoginseng(Panax quinquefolius var.pseudoginseng, P.schin-seng
         ;假人參・人參三七)
チベット・ネパール産
  アメリカニンジン P. quinquefolius(西洋參・廣東人參)
         北米原産、中国では栽培 『中国本草図録』Ⅱ/0740
  P. sokpayensis
東ヒマラヤ産
  P. stipuleanatus(屏邊三七) 雲南・ベトナム産 『雲南の植物Ⅱ』189
  P. trifolius 北米産 『週刊朝日百科 植物の世界』3-142
  P. vietnamensis(越南參)
漢土南部・ベトナム産
  P. wangianus
四川産
  P. zingiberensis(薑狀三七)
雲南・ベトナム産 『週刊朝日百科 植物の世界』3-142 
   
 ウコギ科 Araliaceae(五加 wŭjiā 科)については、ウコギ科を見よ。
 和名について:
 「にんじん」とは、チョウセンニンジン
(オタネニンジン)の漢名人參(ジンシン,rénshēn)の輸入。
 「和名とち葉人參ハ其葉形ニ由リ、竹節人參ハ其根莖ノ狀ニ基ヅク。中國ニ竹節參アリ我邦品と酷似セルモノナリ」(『牧野日本植物図鑑』)。
 「とちば」については、別の一説にトチノキの樹下によく生じるのでトチノハラニンジンと呼ばれたものの転訛といい、トチニンジン・トチノキニンジンの名もあるという。
 「うこぎ」というのは、葉がウコギのように五小葉からなる
(ことが多い)ことから。
 「さつまにんじんトハとちばにんじん卽チ所謂竹節人參ノ事ニシテ此竹節人參ハ初メ薩州ヨリ世ニ出デシヲ以テ此ク稱セリ」(『牧野日本植物図鑑』フシグロ条)。
 『大和本草』人參に、「節{フシ}人參ト云モノアリ、葉ハ芹ニ似タリ、根ニ節アリ、ヒゲ多シ、云々」と。
 小野蘭山『本草綱目啓蒙』
(1806)に、「和人参 サツマニンジン ヨシノニンジン トチニンジン トチノキニンジン トチバニンジン ゴヤウニンジン ウコギニンジン サンシゴヤウサウ ゴヤウサウ城州貴船 コニンジン鬚も同名 クマモトニンジン肥後 ヤマニンジン日光 ニツカウニンジン野州 シマバラニンジン肥前 シマニンジン津軽 スゝクシニンジン南部 カモジニンジン会津。鬚とともに連ネ乾タルヲ云」と。
 岩崎灌園『本草圖譜』(1828)に、「佛掌參(フツシヤウジン) かのにげくさ
和名抄」と。 
 漢名について:
 人參(ジンシン,rénshēn,にんじん)の語義については、チョウセンニンジンの訓を見よ。
 三七(サンシチ,sānqī)は、伝統的な中草薬の名。『(修訂)中葯志 』I/11-16
 李時珍『本草綱目』の釈名によれば、「彼の人言う、〈其の葉、左は三、右は四、故に三七と名づく〉と。蓋し、恐らくは然らず。或は云う、〈本名は山漆(サンシツ,shānqī)。其の能く金瘡
(かたなきず)を合すこと、漆の物を黏(ねん)するが如きを謂う〉と。此の説、之に近し」と。李時珍は別の項(卷14山柰)で「南人の舌音、山(サン,shān)を呼んで三(サン,sān)と爲す」と言っているから、山漆(サンシツ,shānqī)が三七(サンシチ,sānqī)になったという説は信ずべきに近い。 
 歴史的には様々な植物が三七として用いられてきたが、『中薬志』(人民衛生出版社,1959)は、Panax notoginseng(P.pseudoginseng var.notoginseng;三七)を 三七の正品とした。

 かつて「土三七」(民間の三七)として用いられた植物には、トチバニンジン Panax japonicum(竹節參) ・P.bipinnatifidus(羽葉竹節參)・P.major(大葉三七)などの同属植物のほか、Gynura japonica があった。
 Gynura japonica(G.pinnatifida, G.segetum)は、キク科サンシチソウ属 Gynura(菊三七屬)の多年草、『本草綱目』に「近く一種の草を傳う。・・・金瘡折傷出血及び上下の血病を治するに甚だ効あり。是を三七と云う」とあるもの。漢土(陝西安徽以南)・ネパール・インドシナ・臺灣・フィリピンに産す。日本には慶長(1596-1615)年間に渡来し、多く庭に栽培し、チトメ・オランダグサなどと呼ばれた(『本草綱目啓蒙』)。G.japonica は、日本では近代までサンシチソウの名で栽培されており、牧野富太郎はこれをその名で標本化した。中国ではこれを踏襲し、『植物學大辭典』(1918,商務印書館)は G.pinnatifida を「三七草」として載せた(今は改めて菊三七と呼ぶ)。
 北海道・本州・四国・九州・朝鮮・河南・陝甘・華東・兩湖・廣西・四川・貴州・雲南・チベット・ヒマラヤ・インドシナに分布。
 中国では、同属植物のうち、チョウセンニンジン Panax ginseng(人參)の根を人參(ジンシン, rénshēn, にんじん)と呼び薬用にする。
 また、次のものの根をも薬用にする。
   Panax pseudoginseng(假人參・三七人參)
   サンシチニンジン P. notoginseng(三七)
   トチバニンジン P. japonicum(竹節人參)
   P. bipinnatifidus(P.major;羽葉竹節人參・大葉三七)  
 中国では、トチバニンジン Panax japonicum(竹節人參)の根状の茎及び肉質の塊根を薬用にし、根状の茎を竹節參と呼び、塊根を明七或は白三七と呼ぶ。また、葉を七葉子と呼ぶ。『全國中草藥匯編 上』p.372 『(修訂)中葯志』I/17-20
 日本では、生薬チクセツニンジン(竹節人参)は トチバニンジンの根茎を、通例、湯通ししたものである(第十八改正日本薬局方)。
 小野蘭山『本草綱目啓蒙』8(1806)に、「和人参の出タルハ稲(稲生若水)・松岡(玄達)両先生ヨリ以後ノコトナリ」、それ以前の和の人参とはツリガネニンジンであったろう、と。


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