からすうり (烏瓜)
学名 |
Trichosanthes cucumeroides (T.cucumeroides var.globosa, Y.cucumeroides
var.stenocarpa, T.cavaleriei) |
日本名 |
カラスウリ |
科名(日本名) |
ウリ科 |
日本語別名 |
タマズサ(玉梓・玉章)、ムスビジョウ(結状)、グドウジン |
漢名 |
王瓜(オウカ,wángguā) |
科名(漢名) |
葫蘆(コロ,húlu)科 |
漢語別名 |
假栝樓(カカツロウ,jiăguālóu)、土瓜(ドカ,tŭguā)、苦瓜蓮、吊瓜、長猫瓜 |
英名 |
Japanese snake gourd |
2004/07/12 小平市 |
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2006/08/21 秋が瀬公園 |
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2005/10/01 清瀬市中里 |
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2023/10/17 小平市玉川上水緑地 |
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2008/10/09 入間市宮寺 |
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2004/11/21 武蔵嵐山 |
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辨 |
漢土で古来薬用されてきた「王瓜」と呼ばれる植物について、牧野富太郎はオオスズメウリ Thladiantha dubia(赤瓟)であり、日本の学者がかつてこれをカラスウリにあてたのは誤りであるとした(『新註校訂
國譯本草綱目』六p.245頭注)が、今日の中国の書籍はいずれもカラスウリを「王瓜」とする。ここでは後者に従う。 |
カラスウリ属 Trichosanthes(栝樓 guālóu 屬)には、東&東南アジア・インド・オーストラリアに約100-110種がある。
ヘビウリ T. anguina (T.cucumerina var.anguina;蛇瓜・蛇豆;E.Snake gourd)
T. baviensis(短序栝樓) IPNI:T.pilosa var.pilosa のシノニム
ムニンカラスウリ T. boninensis(T.ovigera var.boninensis) 小笠原産
T. bracteata(T.hupehensis;湖北栝樓)
T. cordata(心葉栝樓) インドシナ・ヒマラヤ・インド産
アンナンカラスウリ T. costata(Gymnopetalum chinense;金瓜・越南裸瓣瓜)
兩廣・雲南・インドシナ・マレシア・インド産
T. crispisepala(皺萼栝樓) IPNI:T.truncata のシノニム
T. cucumerina(瓜葉栝樓) 雲南・廣西・ヒマラヤ・インド・インドシナ・マレーシア・豪州産
カラスウリ T. cucumeroides (王瓜・假栝樓)
T. dioica ヒマラヤ・インド・スリランカ・ミャンマー産、ヒマラヤでは食用に栽培
T. dunniana(糙點栝樓) 廣西・四川・貴州・雲南産 『雲南の植物Ⅱ』91・『中国本草図録』Ⅹ/4878
T. fissibracteata(裂苞栝樓) 廣西・雲南・インドシナ産
イモノハカラスウリ T. homophylla(芋葉栝樓・全葉栝樓) 臺灣産
イシガキカラスウリ var. ishigakiensis(T.ishigakiensis)
琉球産 絶滅危惧IA類(CR,環境省RedList2020)
T. jinggangshanica(井岡栝樓) 江西井岡山産
T. kerrii(T.villosa;長果栝樓) 廣西・雲南・インドシナ北部産 『雲南の植物Ⅲ』68
T. kirilowii
チョウセンカラスウリ var. kirilowii(T.obtusiloba;
栝樓・瓜樓・瓜蔞・藥瓜・金絲蓮)
対馬・朝鮮・遼寧・華北・華東・陝甘・四川・貴州・雲南・インドシナ産
果実は栝樓・瓜蔞、根は天花粉 『全國中草藥匯編』上pp.306-308
キカラスウリ var. japonica(T.japonica;日本栝樓)
オオカラスウリ T. laceribractea(T.sinopunctata; 長萼栝樓)
臺灣・江西・湖北・兩廣・四川産 『中国本草図録』Ⅹ/4879
T. lepiniana (馬干鈴栝樓) 雲南・チベット・シッキム・インド産
リュウキュウカラスウリ T. miyagii 奄美・琉球産
モミジカラスウリ T. multiloba Miq.
本州(紀伊半島以西)・四国・九州産
T. pedata (趾葉栝樓・叉指葉栝樓・土花粉・山苦瓜)
江西・湖南・兩廣・雲南・インドシナ産 『中国本草図録』Ⅸ/4351
ケカラスウリ T. pilosa(T.rostrata, T.ovigera, T.baviensis, T.trichocarpa,
T.himalensis;全緣栝樓・杏籽栝樓)
鹿児島・琉球・臺灣・兩廣・雲貴・東南アジア・濠洲北部産 『全国中草葯匯編』下/340
シマカラスウリ T. quinquangulata (五角栝樓)
臺灣・雲南・インドシナ・マレシア・ニューギニア産 『雲南の植物Ⅲ』68
T. quinquefolia(木基栝樓) 雲南・ラオス産
T. reticulinervis(兩廣栝樓) 兩廣産
T. rosthornii
var. multicirrata(T.damiaoshanensis;多卷鬚栝樓・南方栝樓)
兩廣・四川・貴州産
トウカラスウリ var. rosthornii(T.crenulata, T.guizhouensis,
T.stylopodifera, T.uniflora;中華栝樓・雙邊栝樓・瓜蔞・藥瓜)
陝甘・湖北・江西・四川・貴州・雲南産 『中国本草図録』Ⅶ/3360 果実を栝樓と呼び、根を天花粉と呼び、薬用 『全國中草藥匯編』上pp.306-308
var. scabrella(T.scabrella;糙籽栝樓) 四川産
T. rubriflos (紅花栝樓) 兩廣・貴州・雲南・チベット産
『雲南の植物Ⅲ』68・『中国本草図録』Ⅴ/2338
T. rugantisemina(皺籽栝樓) 雲南産
T. scabra(Gymnopetalum scabrum;鳳瓜) 兩廣・雲貴・インドシナ・マレシア・インド産
T. sericeifolia(絲毛栝樓) 廣西・雲貴産
T. smilacifolia(菝葜葉確認) 雲南・チベット産
T. tetragonosperma(方籽栝樓) 雲南産
T. tricuspidata(T.bracteata;三尖栝樓・大苞栝樓) 貴州産 『全國中草藥匯編 上』p.307
T. truncata (T.crispisepala;截葉栝樓・大子栝樓)
兩廣・雲南産 『全國中草藥匯編 上』p.307
T. wallichiana(T.multiloba C.B.Clarke;薄葉栝樓)
雲南・チベット・ヒマラヤ・インド産 『雲南の植物Ⅱ』91
subsp. subrosea(T.subrosea;粉花栝樓) 廣西・雲南産
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ウリ科 Cucurbitaceae(葫蘆 húlu 科)については、ウリ科を見よ。 |
訓 |
別名のタマズサ・ムスビジョウは、種子の形から。 |
『本草和名』王苽に「和名比佐久」と。
『延喜式』栝樓根に、「カラスウリ」と。
『大和本草』に、「王瓜(タマツサ) 又名土瓜・・・其實マルク長シ、玉章(ツサ)ト云・・・王瓜ノ實ハ文(フミ)ヲムスヘルニ似タリ、故ニ玉ツサト云」と。
小野蘭山『本草綱目啓蒙』14 王瓜に、「カラスウリ タマヅサ キツネノマクラ丹波 ゴウリ筑後 タマヅサゴウリ筑前 ムスビゼウ阿州 グドウジ土州 チヤウチゴフ豫州」と。 |
『本草綱目』18王瓜の条に、別名として老鴉瓜(ロウアカ,lăoyāguā)・赤雹子(セキハクシ, chìbózĭ)などを挙げ、李時珍の説に「瓜は雹子(ハクシ,bózĭ。小さな瓜)に似て、熟せば則ち色赤し。鴉、喜んで之を食ふ。故に俗に赤雹(セキハク,chìbó)・老鴉瓜(ロウアカ,lăoyāguā)と名づく」とある。なお、今日の中国で赤瓟(セキハク,
chìbó)と呼ぶ植物はオオスズメウリ Thladiantha dubia(赤瓟)。 |
属名は、ギリシア語 thrix(毛)と anthos(花)の組合わせ、花冠が毛のように細裂することから。 |
説 |
本州(東北南部以南)・四国・九州・臺灣・華東・兩湖・兩廣・四川・貴州・雲南に分布。 |
誌 |
中国では、カラスウリ属 Trichosanthes(栝樓 guālóu 屬)の幾つかの植物などを薬用にする。(〇印は正品)。
王瓜根(オウカコン, wángguāgēn):次のものの根
『全國中草藥匯編 上』pp.168-169
〇カラスウリ T. cucumeroides(王瓜・假栝樓)
天花粉(テンカフン,tiānhuāfěn):次のものの根
『全國中草藥匯編 上』pp.307-308 『(修訂)中葯志 』I/310-330
カラスウリ T. cucumeroides (王瓜・假栝樓)
オオカラスウリ T. laceribractea(T.sinopunctata,T.hupehensis; 長萼栝樓)
T. tricuspidata(T.bracteata;三尖栝樓・大苞栝樓)
〇チョウセンカラスウリ T. kirilowii(T.obtusiloba;栝樓・瓜樓・瓜蔞)
〇トウカラスウリT. rosthornii(T.uniflora;中華栝樓・雙邊栝樓)
T. truncata (T.crispisepala;截葉栝樓・大子栝樓)
Momordica cochinchinensis(木鼈子・漏苓子)
テングスズメウリ Solena heterophylla(Melothria heterophylla;
茅瓜・異葉馬㼎兒)
瓜蔞(カロウ,guālóu):次のものの果実
『全國中草藥匯編 上』 pp.306-307 『(修訂) 中葯志』III/307-317
T. tricuspidata(T.bracteata;三尖栝樓・大苞栝樓)
〇チョウセンカラスウリ T. kirilowii(T.obtusiloba;栝樓・瓜樓・瓜蔞)
〇キカラスウリ var. japonica(T.japonica;日本栝樓)
〇トウカラスウリT. rosthornii(T.uniflora;中華栝樓・雙邊栝樓)
T. truncata (T.crispisepala;截葉栝樓・大子栝樓)
瓜蔞皮(カロウヒ,guālóupí):次のものの果皮
『(修訂) 中葯志』III/307-317
カラスウリ T. cucumeroides (王瓜・假栝樓)
〇チョウセンカラスウリ T. kirilowii(T.obtusiloba;栝樓・瓜樓・瓜蔞)
〇キカラスウリ var. japonica(T.japonica;日本栝樓)
〇トウカラスウリT. rosthornii(T.uniflora;中華栝樓・雙邊栝樓)
var. multicirrata(T.damiaoshanensis;多卷鬚栝樓・南方栝樓)
T. truncata (T.crispisepala;截葉栝樓・大子栝樓)
瓜蔞子(カロウシ, guālóuzĭ):次のものの種子
『全國中草藥匯編 上』pp.308 『(修訂) 中葯志』III/307-317
〇チョウセンカラスウリ T. kirilowii(T.obtusiloba;栝樓・瓜樓・瓜蔞)
T. rosthornii
var. multicirrata(T.damiaoshanensis;多卷鬚栝樓・南方栝樓)
〇トウカラスウリ var. rosthornii(T.uniflora, T.crenulata;
中華栝樓・雙邊栝樓)
T. tricuspidata(T.bracteata;三尖栝樓・大苞栝樓)
T. truncata (T.crispisepala;截葉栝樓・大子栝樓)
これらのほか、次のようなものが瓜蔞皮・瓜蔞子に混って誤用されているという。
『(修訂) 中葯志』III/307-317
T. bracteata(T.hupehensis;湖北栝樓)
オオカラスウリ T. laceribractea(T.sinopunctata; 長萼栝樓)
T. lepiniana(馬干鈴栝樓)
T. rubriflos (紅花栝樓)
T. villosa(密毛栝樓)
Momordica cochinchinensis(木鼈子・漏苓子)
Adenia cardiophylla(三開瓢) トケイソウ科
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日本では、生薬カロコン(栝樓根)は、チョウセンカラスウリ、キカラスウリ又はオオカラスウリのコルク層をできるだけ除いた根である(第十八改正日本薬局方)。(カラスウリは用いない)。 |
『礼記』「月令」四月に、「王瓜生ひ、苦菜(くさい。ケシ・アザミなどの苦味のある草) 秀づ」と。
『大戴礼』「夏小正」四月に、「王萯(わうふ。カラスウリ) 秀(ひい)づ」と。 |
『爾雅』釋草に、「蔩(イン,yín)、菟瓜(トカ,tùguā)」と、郭璞注に「菟瓜、似土瓜(ドカ,tŭguā)」と。 |
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