おおむぎ (大麦) 

学名  Hordeum vulgare var. hexastichon 
日本名  オオムギ(六条種)
科名(日本名)  イネ科
  日本語別名  ロクジョウオオムギ、フトムギ、カチカタ、ハトムギ、カワムギ
漢名  大麥(タイバク,dàmài)
科名(漢名)  禾本(カホン,hébĕn)科
  漢語別名  
英名  Barley, Six-rowed barley
2005/05/24 東大農園
  イチバンボシ   カシマ麦   水府

 オオムギ属 Hordeum(大麥 dàmài 屬)には、世界の温帯に約34-40種がある。

  H. bogdanii(布頓大麥草・毛稃大麥草)
  チシマムギクサ H. brachyantherum(H.boreale;短葯大麥草)
         
北米西岸・アリューシャン・千島に分布
  ライムギモドキ H. brevisubulatum(短芒大麥草・野黑麥)
  H. bulbosum(球莖大麥)
  ホソノゲムギ H. jubatum(芒穎大麥草)
  H. marinum
    ヒメムギクサ subsp. gussoneanum(H.hystrix, H.geniculatum)
    ハマムギクサ subsp. marinum(鹼大麥)
歐洲原産
  H. murinum
    subsp. glaucum
北アフリカ・西アジア・西ヒマラヤ産
    オオムギクサ subsp. leporinum(H.leporinum;兔大麥)
         
地中海地方・西アジア・西ヒマラヤ産
    ムギクサ subsp. murinum 歐洲産
  ミナトムギクサ H. pusillum
 北米原産
  H. secalinum(大麥草)
地中海地方・中&北歐洲・北西アフリカ・カフカス産
  オオムギ H. vulgare(大麥) 
    アオハダカムギ var. coelestre
    ヤバネオオムギ(ビールムギ・二条オオムギ) var. distichon(H.distichon;
         栽培二稜大麥)
    ロクジョウオオムギ var. hexastichon 
日本では関西以西で栽培 
    ハダカムギ var. nudum(H.distichon var.nudum;裸麥)
    var. spontaneum(H. spontaneum;鈍稃野大麥)
 オオムギの唯一の野生種
    シジョウオオムギ var. vulgare(大麥) 主に外国で栽培
    
 オオムギ属 Hordeum の植物は、総状花序の各節に小穂を3個づつ 二列につける。Hordeum vulgare には、そのうち中央の1小穂のみが結実するものと、3つの小穂すべてが結実するものとがあり、前者を二条オオムギ、後者を六条オオムギと呼ぶ。二条・六条とは、熟した穂に並び連なる穀粒の「すじ」の数を云う。
 麦については、むぎを見よ。
 イネ科 Poaceae(Gramineae;禾本 héběn 科)については、イネ科を見よ。
 ムギ(麥・麦)については、むぎを見よ。
 『本草和名』大麦に、「和名布止牟岐」と。
 『倭名類聚抄』大麦に、「和名布土無岐、一云加知加太」と。
 小野蘭山『本草綱目啓蒙』大麦に、「カチカタ和名鈔 フトムギ同上 オホムギ」と。
 オオムギは、はじめイラク-トルコの山岳地帯でB.C.7000頃に栽培され始め、やがて栽培種が成立したと考えられている。
 西方には、B.C.4200-2500ころヨーロッパに伝わり、ギリシア・ローマ時代にはヨーロッパ各地で主食とされていた。
 中国ではB.C.2700ころすでに栽培されていた、最古の主食用穀物。
 日本には、小麦より遅れて3世紀ころ入った。
 
 コムギと異なりグルテンを含まないのでパンには向かず、西方ではビールやウィスキーの原料とする。
 中国における誌は、むぎを見よ。
 中国では、熟した穎果の発芽したものを麥芽(バクガ,màiyá)と呼び、薬用にする。『中薬志Ⅱ』pp.167-169 『(修訂) 中葯志』III/355-357『全国中草葯匯編』下/311-312 
 日本では、生薬バクガは オオムギの成熟したえい果を発芽させて乾燥したものである(第十八改正日本薬局方)。 
 日本では押麦にして麦飯として食い、味噌・醤油・焼酎などの原料とする。
 『古事記』上に、須佐之男命(すさのおのみこと)に殺された大気津比売(おおげつひめ)の体から五穀が生じたという。すなわち「故(かれ)、殺さえし神の身に生(な)れる物は、頭に蚕生り、二つの目に稲種生り、二つの耳に粟生り、鼻に小豆生り、陰(ほと)に麦生り、尻に大豆生りき」と。この麦は、オオムギ(六条種)であるらしい。
 『日本書紀』神代第5段一書第11に、保食神(うけもちのかみ)に関わる同様の説話が載る。
 
  いざともに穗麦喰はん草枕
  行駒の麦に慰むやどり哉   
(芭蕉、『野ざらし紀行』1985)
 
2005/05/16  新座市大和田

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