かぶ 

学名  Brassica rapa var. rapa (B.campestris var.rapa, B.rapa var.glabra, B.campestris var.glabra)
日本名  カブ
科名(日本名)  アブラナ科
  日本語別名  カブラ、カブナ・カブラナ、スズナ(鈴菜)、カブダイコン、ウキナ
漢名  蕪菁(ブセイ,wújīng)
科名(漢名)  十字花(ジュウジカ,shízìhuā)科
  漢語別名  蔓菁(マンセイ,mánjīng)、油頭菜(ユトウサイ,youtoucai)、圓根(エンコン,yuangen)、根芥(コンカイ,genjie)、葑(ホウ,fēng)、扁蘿蔔(ヘンラフク,biănluóbo)、諸葛菜(ショカツサイ, zhūgécài)、九英菘(キュウエイシュウ,jiuyingsong)、沙吉木兒
英名  Turnip
2007/03/21 所沢市本郷
2005/03/02 新座市中野

 アブラナ属 Brassica(蕓薹 yúntái 屬)の植物については、アブラナ属を見よ。
 「和名かぶハ株ト通ジ頭ノ義ニシテ塊ヲ也スヨリ云フ、かぶらノらハ單ニ語尾ニ附ケテ呼ビ敢テ意義ナシ かぶなハかぶなる菜ノ意ナリ」(『牧野日本植物圖鑑』)。 
 深江輔仁『本草和名』(ca.918)蕪菁に、「和名阿乎奈」と。
 源順『倭名類聚抄』
(ca.934)に、蔓菁は「和名阿乎菜」、蔓菁根は「和名加布良」と。
 小野蘭山『本草綱目啓蒙』22(1806)蕪菁に、「カブラ カブラナ カブナ ウキナ カブ」と。
 中国では、北方では蔓菁(マンセイ,mánjīng)、江東では蕪菁(ブセイ,wúqīng)と呼ぶ。
 漢名の諸葛菜(ショカツサイ, zhūgécài)は、三国時代の蜀(しょく,今日の四川省にあった国)の丞相諸葛亮(しょかつ・りょう,字は孔明,181-234)にちなむ。優れた軍師であった諸葛亮が、軍隊の食糧補給のために利用したと伝えられる(又はそう考えられた)蔬菜を 諸葛菜と呼んだ。唐のころには、蜀で蔓菁を諸葛菜と呼んでいたという
(韋絢『劉賓客嘉話録』)。今日の中国では、諸葛菜の名は、カブを指す場合とショカツサイを指す場合と両方がある。
 古い栽培植物。
 原産地は中近東・地中海地方、
アブラナの根の太るものを、根菜として栽培化したもの。
 ヨーロッパでは、ギリシア時代に栽培されており、16世紀からフランス・イギリスなどで一般的に普及した。
 小野蘭山『本草綱目啓蒙』22(1806)菘の条に、「ムラサキナ、一名アカナ アフギナ 近江ナ 日野ナ江州 アカゝブラ同上」と。
 中国では、早く『詩経』の時代には すでに栽培されていた。
 国風・邶風(ハイフウ)の「谷風」に、「葑(ホウ)を采り、菲(ヒ)を采るに、下体を以てすることなかれ」とあり、葑(ホウ,fēng)はカブ、菲(ヒ,fĕi)はダイコン。春には苗を食い、夏には心を食い、秋には茎を食い、冬には根を食うといわれ、重要な蔬菜であった。
 ほかに鄘風(ヨウフウ)・桑中に、「(ここ)に葑を采
(と)る、沫(まい)の東に」と。
 賈思勰『斉民要術』
(530-550)巻3に、「蔓菁」の章がある。元代の『飲膳正要』には沙吉木兒の名で載るが、これは蒙古語の音写であろう、という。
 今日でも北部を中心に広範に栽培されているが、江南では少ない。
 日本では、7世紀末までには栽培されていた(693年、持統天皇は五穀の補助としてこの栽培を奨励する詔を出している)
 古くはスズナと呼ばれて、春の七草の一。
 『万葉集』に、

   食薦
(すこも)敷き蔓菁(あをな)煮もち来(こ)
      梁
(うつはり)に行騰(むかばき)懸けて息(やす)む此のきみ(君)
         
(16/3825,長忌寸意吉麿(ながのいみきおきまろ)「行縢・蔓菁・食薦・屋梁を詠む歌」)

 とあり、蔓菁と書いてアヲナと読ませる
(和名抄を参照)

   しぐるゝや田のあらかぶの黒む程 
(芭蕉,1644-1694)

   花と散る身は西念が衣着て    
芭蕉
    木曽の酢茎に春も暮れつつ   
凡兆
     
(『猿蓑』1691。スグキナはカブの一種、根を漬物にし、冬乃至暮春の食物)
 
 今日では、北日本では西欧系が、西日本では東洋系が栽培されており、境界は福井・岐阜・愛知を結ぶ線(カブラ・ラインと呼ばれる)。
 ヒノナは、カブの一種、滋賀県日野の名産で、日野菜と呼ばれる。

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