だいこん (大根) 

学名  Raphanus sativus
日本名  ダイコン
科名(日本名)  アブラナ科
  日本語別名  オオネ(大根)、スズシロ(清白)、カガミグサ(鏡草)
漢名  蘿蔔(ラフク,luobo,lobok)
科名(漢名)  十字花(ジュウジカ,shizihua)科
  漢語別名  萊菔(ライフク,laifu)、蘆菔・蘆萉(ロフク,lufu)、蘆葩(ロハ,lupa)、紫花菘(シカスウ,zihuasong)、菲(ヒ,fei)、葖(トツ,tu)、土酥
英名  (Japanese) Radish, (Chinese, Oriental) Winter radish
2007/03/26 三芳町竹間沢
2005/06/08  所沢市南永井 2005/12/10 三芳町竹間沢
2010/04/09 入間市宮寺 



 ダイコン属 Raphanus(蘿蔔屬)は、かつていくつかの種に分けてきたが、近年では野生種と栽培種の2種にまとめる。

   R. raphanistrum(野蘿蔔)
       
地中海地方・中近東原産、今では広くユーラシア・北アメリカに分布。
       幾つかの変種がある。かつては R.maritimus, R.rostatus などを区別した。
       
栽培種ダイコンの野生種、根は太らない
   ダイコン R. sativus(蘿蔔)
     ダイコン var. longipinnatus(長羽裂蘿蔔)
     ハツカダイコン var. radicula(小蘿蔔・水蘿蔔;E.radish)
     ハマダイコン var. raphanistroides (藍花子)
       
 通説では、栽培種のダイコンが野生化したもの。
       一説に野生のものが伝わったもの、従ってダイコンの原種、という。 
 アブラナ科 Brassicaceae(Cruciferae;十字花科)については、アブラナ科を見よ。
 和名のダイコンは、古名大根(おおね)の音読み。
 スズシロ(淸白)は、根の白さから
(俗に鈴代と書くのは当て字)
 深江輔仁『本草和名』(ca.918)莱菔に、「和名於保祢」と。
 源順『倭名類聚抄』
(ca.934)葍に、「和名於保禰、俗用大根二字」と。
 小野蘭山『本草綱目啓蒙』22(1806)莱菔に、「カゞミクサ古歌 オホネ ダイコン コゝロブト スゞシロ」と。
 漢名の蘿蔔・萊菔・蘆菔・蘆葩は、いずれも西方名(たとえばギリシア語でハツカダイコンをラパニスと言う)の音写。
 ラテン名 Raphanus もこれによる。
 英名 radish は、ハツカダイコン。
 栽培ダイコンの起源については、諸説がある。例えば、原種を R. raphanistrum とする説、ハマダイコンとする説、など。
 地中海地方・中近東で作出され、ハツカダイコンは古代エジプトでB.C.2000頃すでに食用されていた
(ピラミッドの碑文に見えるという)
 ギリシア・ローマを経てヨーロッパに伝えられた。ゲルマン・スラブには中世に、イギリス・フランスには16世紀以降に入った。
 中国では、B.C.500頃から栽培。インド経由で入った華南系と、中央アジア経由で入った華北系がある。
 日本には、A.D.700頃渡来。
 日本のダイコンは、華南系の強い影響のもとに、華北系の影響も受けて成立した。江戸時代に急速に品種改良が進み、世界で最も変化に富む。
 在来種には、次のような群がある。
白首大根  首から尻まで白いもの。江戸時代以来多くの品種がつくられてきた。形の特徴から、収穫に力とコツを要し、流通に不便なことから、生産量は減っている。 
辛味大根  イソチオシアネートを多く含み、辛みの強いもの。
赤大根  皮の赤い大根。色素はアントシアニン。
葉大根  蔬菜として葉を食うためのもの。
 日本の各地方に、次のような品種がある。

  岩手県  安家地大根
  秋田県  秋田大根
       松館しぼり大根
         
鹿角市八幡平松館産、辛味大根。長15cm、長球形。
         
おろして搾った汁を、蕎麦・刺身等の薬味に用いる。
       仁井田大根
  山形県  山形大根
       花作大根
       小真木大根
         
鶴岡市日枝産、秋大根。長20-25cm、径6-8cm、徳利型、白首。はりはり漬用。
       肘折大根
       梓山大根
       野良(ぴりかり)大根
       弘法大根
  宮城県  小瀬菜大根
  福島県  あざき大根
       赤筋大根
         
会津・福島に多産、秋大根。長30-40cm、径10cm、紅赤色の筋が入る。漬物用。
  栃木県  唐風呂大根
  群馬県  上泉理想大根
  茨城県  浮島大根
  埼玉県  西町理想大根
  東京都  亀戸大根(おかめ大根・お多福大根)
         
江戸末から亀戸に産(今は高砂の3農家のみ)、春大根。
         
長25-30cm、径6cm、長円錐形。辛味がある。漬物・あさり鍋用。
       練馬大根
         
練馬区東南部産、秋大根。長60cm、太い円筒形。沢庵漬・煮物用。
       大蔵大根
       みの早生大根
       高倉大根
  神奈川県 三浦大根
         
練馬大根と地大根の自然交雑品、冬大根。煮物用。
  山梨県  浅尾大根
  長野県  信州地大根
       戸隠地大根
       鼠大根
         
坂城町産、秋大根。長25cm、径9cm、品種名は尻が膨らみ、根が伸びる形から。
         
辛味が強く、蕎麦の薬味等に用いる。
       上野大根
       親田辛味大根
       切葉松本地大根
       たたら大根
       灰原地大根
       前坂大根
       牧大根
       赤口大根
       山口大根
       上平大根
       大門大根
  新潟県  十日町辛味地大根
  富山県  平野大根
  石川県  源助大根
         
金沢市打木町松本佐一郎氏が1942年に作った、秋大根。
         
長25cm、径8cm、やや腰太りの円筒形。肉質が柔らかく、煮物用。
  福井県  板垣大根
  岐阜県  守口大根(ほそり大根)
         
大阪府守口市原産(宮前大根・関根大根)、『農業全書』(1697)に記載。
         今は多く愛知県扶桑町産秋大根。径3cm・長100-180(世界最長)、守口漬用。
  愛知県  宮重大根(尾張大根)
         
西春日井郡宮重原産、秋大根。根の上は地上に出て緑色、甘みがある。
       方領大根(尾張大根)
         
海部郡甚目町方領原産、秋大根。煮物用。
  滋賀県  山田大根(鼠大根)
       伊吹大根
  京都府  聖護院大根(淀大根)
         
左京区聖護院産、秋大根。江戸後期に田中屋喜兵衛が宮重大根から作った。
         
根は丸く大きく、柔らかく甘く、煮崩れしない。煮物・おでん用。
       鷹峯大根(吹散大根)
         
北区鷹峯産、秋大根。元禄時代から栽培。長3-5cm、球形。
         
水気が少なく、辛みが強い。蕎麦の薬味に用いる。
       壬生青味大根
       鞍馬大根
       静御前大根
       白上り大根(京大根)
       大原青味大根
       時無大根
       桃山大根
       佐波賀大根
       中堂寺大根
  大阪府  大坂四十日大根
       田辺大根
  奈良県  祝大根(雑煮大根)
       大和丸大根
       大和白上り大根
  和歌山県 紀州白大根
       和歌山大根
       青身大根 
和歌山市産、雑煮に用いる。
  鳥取県  板井原大根
  岡山県  蒜山大根
  広島県  うぐろ大根
       笹木三月子大根
  山口県  岩国赤大根
         
岩国市産、秋大根。長15cm、径12cm、皮は深紅色、肉は白色。
         
日清・日露戦争の頃満洲から導入。酢物・漬物・生食(紅白蒲鉾の代りに)用。
       とっくり大根
  徳島県  阿波晩生大根 
沢庵用。
  愛媛県  庄大根
  福岡県  小田部大根
  佐賀県  女山大根
  長崎県  紅大根
  熊本県  赤大根
  宮崎県  糸巻大根
       すえ大根(平家大根)
  鹿児島県 桜島大根(島でこん)
         
桜島北東部産、冬大根。径40cm、球形、重20-30kgに達する(世界最大)。
         甘く、柔らかい。煮物・漬物用。
       国分大根
       横川大根(燕大根)
         
霧島市横川産、秋大根。長40cm、径10cm、首は赤く、下部は白い。
         
一名つばめ大根とは、播種から収穫までの時間の短さから。
       城内大根
       開聞岳大根
       有良大根
  沖縄県  鏡水大根(島大根)
 
 1970年代に耐病総太りの青首大根が現れ、全国に広まる。1979年10月には、台風20号により三浦半島で白首の三浦大根がほぼ全滅。今日では、流通して店頭に並ぶ大根のほとんど全てが、青首大根である。 
 外来のダイコンには、次のようなものがある。
二十日大根
 radish
 16世紀にヨーロッパで作出された極早生種(25-45日で収穫)
 根は小型で丸く、色は赤・紅白・紫・黄・白・青首・茶・黒など。 
黒大根  皮は黒色、実は白いもの。ヨーロッパ産。
紅心大根
 (紅心美)
 皮は淡緑色、実は赤いもの。中国産。
 中国では、種子を萊菔子・蘿蔔子と呼び、薬用にする。『中薬志Ⅱ』pp.415-417 
 『詩経』国風・邶風(ハイフウ)の「谷風」に「葑(ホウ)を采り、菲(ヒ)を采るに、下体を以てすることなかれ」とあり、葑はカブ、菲はダイコン。また『詩経』小雅・谷風之什の「信南山」に「中田に廬有り、疆埸(キョウエキ)に瓜有り」とあるが、廬は一説にダイコンであるという。
 はじめ薬用に用いられたが、のち蔬菜として栽培されるようになった。
 日本では、『古事記』に淤富泥(おほね)として、『日本書紀』に於朋泥(おほね)として出る。
 『日本書紀』11仁徳天皇30年、天皇は皇后磐之姫(いはのひめ)が紀伊に出かけている留守に八田皇女を宮中に召し入れた。皇后は怒って、そのまま都には帰らず山城に住み着いた。十一月、「明日(くるつひ)、乗輿(すめらみこと)、筒城宮(つつきのみや)に詣(いた)りて、皇后(きさき)を喚(め)したまふ。皇后、参見(まゐあ)ひたまはず。時に天皇(すめらみこと)、歌(うたよみ)して曰(のたま)はく、
   つぎねふ やましろめ
(山背女)
     こくは
(木鍬)(持)ち う(打)ちしおほね(大根)
   さはさはに な
(汝)がい(言)へせこそ
     うちわた
(打渡)す やが(弥木)はえ(栄)なす き(来)(入)りまゐ(参)(来)
亦歌して曰はく、
   つぎねふ やましろめの こくはもち うちしおほね
   ねじろ
(根白)の しろただむき(白腕)
     ま
(纏)かずけばこそ し(知)らずともい(言)はめ
 
 のちに春の七草の一、清白(すずしろ)
 「又宮の前大根とて、大坂守口のかうの物にする細長き牙(は)脆き物あり。又餅大根とて、秋蒔きて春に至り、根甚だふとく、葉もよくさかへ味からき物あり。三月大根あり。はだ菜あり。又夏大根色々あり。又播州津賀野大根とて彼地の名物なり。此外蕎麦切に入る。甚だからきをもとめつくるべし。」(宮崎安貞『農業全書』1697)

   身にしみて大根からし秋の風 
(芭蕉,1644-1694。このダイコンは、辛味大根だったか)
   ものゝふの大根苦きはなし哉 
(同)
   菊の後大根の外更になし 
(同)
 

   暮れて洗ふ大根(おほね)の白さ土低く武蔵野の闇はひろがりて居り
   大根こぐ少女を見れば丘の其処に我が家も近くある心地かな
   大根も秋菜も漬けぬ村の女(め)は庭べの土に栗をうづめぬ
     
(島木赤彦『馬鈴薯の花』)

   ゆふされば大根の葉にふる時雨いたく寂しく降りにけるかも
     
(1914,斉藤茂吉『あらたま』)
  
 ダイコンの繊切りを「千六本」というのは、「繊蘿蔔(せんらふく)」の転訛。
 「雪虎――これはなんのことはない、揚げ豆腐を焼き、大根おろしで食べるのである。その焼かれた揚げ豆腐に白い大根おろしのかけられた風情を「雪虎」と言ったまでのことである。・・・
 これはまったく夏向きのもので、朝、昼、晩の、いずれに用いてもよい。まず揚げ豆腐の五分ぐらいの厚さのもの(東京では生揚げと称しているもの)を、餅網にかけて、べっこう様の焦げのつく程度に焼き、適宜に切り、新鮮な大根おろしをたくさん添え、いきなり醤油をかけて食う。
 分量と器を、その場その場で加減し、注意さえすれば、単に自家用の美食に止まらず来客に用いても、立派な役目を果たすのである。そして美味くできれば、その味、簡適にして醇乎、まことに一端の食通をもよろこばすことができる。なまなかてんぷらなぞ遠く及ばない。そして、これを美味く拵えるコツは、よい揚げ豆腐を手に入れることは言わずもがな、新鮮な大根を求めることである。」(北大路魯山人『魯山人味道』「夏日小味」1931)
 「たくあん漬(たくわん漬)」は、日に干したダイコンを、塩と糠に漬けたもの。
 その名は、一説に「貯え漬け」の転訛、一説に沢庵和尚
(沢庵宗彭、1573-1645)の墓石と、大根を漬ける重し石の形が似ていることから。いずれにせよ、沢庵が創始したというのは、俗説という。


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