辨 |
トロロアオイ属 Abelmoschus(秋葵 qiūkuí 屬)には、アジア・アフリカの熱帯に約11-15種がある。
A. crinitus(長毛黃葵・假芙蓉) 『中国本草図録』Ⅹ/4738
兩廣・雲貴・インドシナ・インド・マレーシア・ジャワ・フィリピン産
オクラ A. esculentus(Hibiscus esculentus;珈琲黃葵)
ノリアサ A.×glutinotextilis(Hibiscus glutinotextile)
トロロアオイ A. manihot(Hibiscus manihot;黃蜀葵・秋葵)
var. pungens(剛毛蜀葵) 『雲南の植物Ⅱ』103
リュウキュウトロロアオイ(トロロアオイモドキ) A. moschatus(Hibiscus abelmoschus;
黃葵・香黃葵・麝香秋葵・山油麻) 『中国本草図録』Ⅴ/2207
琉球・臺灣・兩廣・江西・湖南・雲南・熱帯アジア・熱帯オセアニア産
センカクトロロアオイ var. betulifolius(Hibiscus abelmoschus
var.betulifolius, A.mpschatus var.lanynatus)
絶滅危惧IA類(CR,環境省RedList2020)
var. tuberosus(A. esquirolii; A. sagittifolius; 五指山參)
A. muliensis(木里秋葵) 四川・雲南産
ボケアオイ A. sagittifolius(箭葉秋葵・五指山參) 『雲南の植物Ⅲ』106
兩廣・雲貴・インドシナ・インド・マレーシア・豪州産
A. tuberculatus インド北部産。オクラの原種という。
トロロアオイ属 Abelmoschus(秋葵 qiūkuí 屬)は、フヨウ属 Hibiscus(木槿 mùjĭn 屬)に包摂することがある(『新維管束植物分類表』『改訂新版 日本の野生植物』)。 |
アオイ科 Malvaceae(錦葵 jĭnkuí 科)については、アオイ科を見よ。 |
訓 |
和名のトロロ・ネリは、根に粘液を含むことから。
これを、紙薬・滑水(日本語で言うねり。製紙に用いる糊材)として利用した。 |
漢語の葵(キ,kuí)は、 |
『大和本草』に、「黄蜀葵(ワウスケ) トロロト云」と。
小野蘭山『本草綱目啓蒙』12(1806)に、「黄蜀葵 トロゝ カミノキ オホスケ筑前 カウヅ丹波 カミトロゝ カボチヤアサガホ フノリ豫州 京ノフノリ土州 京ブノリ同上 ネリ能州 オホレン肥前 トロゝアフヒ勢州 トロトロ同上 ビナンサウ雲州」と。 |
花期は旧暦の六月であるのに、漢名を秋葵というのは、猛暑の中で秋を思わせる黄色の花をさかせるからである、という。 |
説 |
中国南部・東南アジア原産。中国では、東北・西北を除く全国で栽培しており、ときに半野生品を見る。日本には、江戸時代までには渡来していた。
紡錘形に肥大した根は、多量の粘液を含む。観賞用のほか、薬用・糊着剤として栽培。 |
誌 |
日本では、古くから、根を打ち砕いて水につけたものを、和紙をすく糊として用いる。
|
中国では、根・葉・花・種子を薬用にする。『全国中草葯匯編』上/774 |
中国では、唐宋以来観賞されてきた。
○ 唐・作者不詳「花鳥図」壁画(838、 北京市海淀区八里荘出土) |