辨 |
栽培品は、花の色に変異があり、果実がつきにくく、雑種起源であろうという。 |
一株に赤白の花をさき分けるものは、江戸時代に作られた品種トウヨウニシキ(東洋錦)。今日まで最も愛好されている。
そのほか、この譜には カンザラサ(寒更紗)を載せる。 |
ボケ属 Chaenomeles(木瓜海棠 mùguāhăitáng 屬・貼梗海棠 tiēgěnghăitáng 屬)には、東アジアに4種がある。
マボケ C. cathayensis(C.lagenaria var.cathayensis, C.speciosa var.cathayensis,
Cydonia cathayensis, Pyrus cathayensis;
毛葉木瓜・西南木瓜・木瓜海棠・木桃)
陝甘・江西・兩湖・廣西・四川・貴州・雲南産 『中国本草図録』Ⅱ/0594
クサボケ C. japonica(C.maulai;日本木瓜・日本海棠・倭海棠・樝・樝子・柤)
シロバナクサボケ f. alba
ヤエクサボケ f. plena
ボケ C. speciosa(Cydonia speciosa, Pyrus speciosa, Chaenomeles lagenaria;
貼梗木瓜・貼梗海棠・皺皮海棠・鐡脚海棠・
報春花・楙) 『中国本草図録』Ⅱ/0596
アイノコボケ C. × superba
C. thibetica(Pyrus xizangensis;西藏木瓜) 四川・チベット産 『中国本草図録』Ⅴ/2132
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バラ科 Rosaceae(薔薇 qiángwēi 科)については、バラ科を見よ。 |
訓 |
牧野によれば、「和名ぼけハ木瓜卽もくくわノ轉音ナリ、我邦ニテハ舊ク木瓜ヲ其品ニ宛テシヲ以テ此名ヲ得タルナリ、而シテ木瓜ハ元來くわりんトぼけノ中間形ヲ呈セル種ニシテ今之レヲ我邦ニ見ズ Ch. cathayensis(Hemsl.)Koehne. ノ學名ヲ有シ和名ヲまぼけト云フ」(『牧野日本植物図鑑』)。
ただし、今日の漢名を木瓜(ボクカ,mùguā)というものはカリン。 |
『本草和名』木瓜に、「和名毛介」と。
『倭名類聚抄』木瓜に「和名本草、木瓜、毛介」と。
小野蘭山『本草綱目啓蒙』26 に、「木瓜 通名」と。 |
漢名の海棠については、リンゴ属を見よ。 |
英名の japonica は、次の経緯から。
すなわち、C.P.Thunberg(1743-1828)はクサボケを Pyrus japonica として紹介した。J.Banks(1743-1820)は、1796年ボケをクサボケの同種のものとして紹介したが、美しい花木として受け入れられた。1818年ボケはクサボケとは別種であるとして、学名は
Cydonia speciosa と改められた。しかし一般には、もとの japonica の呼称が残った(『週刊朝日百科 植物の世界』5-146)。 |
説 |
陝西・甘肅・四川・貴州・雲南・ミャンマー(東北部)に分布。日中の各地で観賞用に栽培。 |
日本には平安時代以前に入り、多くの園芸品種を生み出した。 |
誌 |
中国では、次のものの果実を木瓜(ボクカ,mùguā)と呼んで薬用にする(〇印は正品)。 『中薬志Ⅱ』pp.56-58 『全國中草藥匯編 上』pp.171-173 『(修訂) 中葯志』III/213-219
マボケ Chaenomeles cathayensis(Cydonia cathayensis;
毛葉木瓜・西南木瓜・木瓜海棠・木桃)
〇ボケ Chaenomeles speciosa(C.lagenaria;
皺皮木瓜・貼梗木瓜・貼梗海棠・鐡脚海棠・報春花・楙)
Chaenomeles thibetica(Pyrus xizangensis;
西藏木瓜)
〇カリン Pseudocydonia sinensis(Chaenomeles sinensis, Cydonia sinensis;
木瓜・光皮木瓜・榠樝・木李・海棠)
マルメロ Cydonia oblonga(榲桲)
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『詩経』国風・衛風・木瓜(ぼくか)に、
「我に投するに木瓜を以てす」とある木瓜は カリン(木瓜・榠樝)、
「我に投するに木桃を以てす」とある木桃は マボケ(木桃)であろう、という。 |
賈思勰『斉民要術』(530-550)巻4に「種木瓜」が載る。 |
『花壇地錦抄』(1695)巻三「山椒(さんせう)るひ」に、「木瓜(ぼけ) 木ハかいだうのごとく、花色あか、うすいろの二種有」と。 |