辨 |
ウルシ科 ANACARDIACEAE(漆樹 qīshù 科)には、世界の熱帯から温帯に約80-81属 約800-850種がある。
Allospondias(嶺南酸棗屬) 福建・兩廣・インドシナ・マラヤに2種
A. lakonensis(Spondias lakonensis;嶺南酸棗) 福建・兩廣・インドシナ産
カシューナッツ属 Anacardium(腰果屬) 熱帯アメリカに約12-20種
カシューナットノキ A. occidentale(腰果) 熱帯アメリカ原産、世界各地で栽培
アカタネノキ属 Bouea(士打樹屬) 四川・雲貴・インドシナ・インドネシアに約3-4種
アカタネノキ B. macrophylla 東南アジア産
B. oppositifolia(Spondias haplophylla, Haplospondias haplophylla;
單葉檳榔靑) 雲南・東南アジア・ベンガル産
ウミソヤ属 Buchanania(山檨子屬) 熱帯アジア・濠洲州・太平洋諸島に約25-30種
ウミソヤ B.arborescens(山檨子) 臺灣・フィリピン・東南アジア・濠洲東北部産
B. cochinchinensis(B.latifolia;豆腐果) 廣東・雲南・インドシナ・ヒマラヤ・インド産
B. microphylla(小葉山檨子) 廣東・フィリピン産
B. yunnanensis(雲南山檨子) 雲南産
ウミソヤモドキ属 Campnosperma 世界の熱帯に点々と14-30種
ウミソヤモドキ C. brevipetiolatum スラウェシ・ニューギニア・太平洋諸島産
チャンチンモドキ属 Choerospondias(南酸棗屬) 1種
チャンチンモドキ C. axillaris(Spondias axillaris;南酸棗)
九州・華東・兩湖・兩廣・西北・インドシナ・ヒマラヤ産 絶滅危惧IB類(EN,環境省RedList2020)
『全国中草葯匯編』上/583 『(修訂) 中葯志』III/168-171
ケムリノキ属 Cotinus(黃櫨屬)
Dobinea(九子母屬) 四川・貴州・雲南・ヒマラヤに2種
D. delavayi(羊角天麻・大九股牛) 四川・雲南産 『全國中草藥匯編』上/164,下/30
D. vulgaris(貢山九子母)
イボモモノキ属 Dracontomelon(人面子屬) 兩廣・雲南・東南アジア・ニューギニアに約8-9種
イボモモノキ D. dao(D.magniferum) 中国では D.duperreanum のシノニム
D. duperreanum(人面子) 兩廣・雲南・ベトナム産
D. macrocarpum(大果人面子) 雲南産
Drimycarpus(辛果漆屬) 雲南・ベトナム・ミャンマー・ヒマラヤに約2-4種
D. anacardiifolius(大果辛果漆)
D. racemosus(辛果漆)
レンガス属 Gluta(膠漆樹屬) 熱帯アジア・マダガスカルに約35種
Lannea(厚皮樹屬) アジア・アフリカの熱帯・亜熱帯に約36-70種
L. coromandelica(L.grandis;厚皮樹) 兩廣・雲南・インドシナ・インド産
マンゴー属 Mangifera(杧果屬)
ナンヨウウルシ属 melanococcoa 1種
ナンヨウウルシ M. tomentosa(Rhus taitensis;)
フィリピン・ジャワ・スラウェシ・ニューギニア・濠洲東北部・太平洋諸島産
Pegia(藤漆屬) 兩廣・西南・インドシナ・ヒマラヤに2-3種
P. nitida(藤漆) 廣西・雲貴・インドシナ・ヒマラヤ産
P. sarmentosa(利黃藤) 兩廣・雲貴・インドシナ・カリマンタン産
ランシンボク属 Pistacia(黃連木屬)
ヌルデ属 Rhus(鹽膚木屬)
コショウボク属 Schinus(肖乳香屬) 南米に約30種
コショウボク S. molle(肖乳香) 南米原産
サンショウモドキ S. terebinthifolius(巴西胡椒木) 南米原産、小笠原に帰化
タイトウウルシ属 Semecarpus(肉托果屬) 臺灣・雲南・熱帯アジア・濠洲北東部に約70-87種
タイトウウルシ S. longifolius(S.gigantifolius;大葉肉托果)
臺灣・フィリピン・インドネシアに分布
S. microcarpus(小果肉托果) 雲南・ミャンマー産
グレープマンゴー属 Sorindeia 熱帯アフリカに9-10種
アムラノキ属 Spondias(檳榔靑屬)
Terminthia(三葉漆屬)
T. paniculata(Searsia paniculata;三葉漆)
ウルシ属 Toxicodendron(漆科)
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ウルシ属 Toxicodendron(漆樹 qīshù 屬)には、東&東南アジア・ヒマラヤ・南北アメリカに約22-27種がある。
T. delavayi(Rhus delavayi;山漆樹・小漆樹) 四川・雲南産
T. orientale
ツタウルシ subsp. orientale(T.radicans subsp.orientalis, Rhus ambigua)
タチツタウルジ f. rishiriense
タイワンツタウルシ subsp. hispidum(T.radicans subsp.hispidum, Rhus intermedia;
刺果毒漆藤・野葛)
臺灣・兩湖・四川・貴州・雲南産
ポイズンアイビー subsp. radicans
ハゼノキ(ロウノキ) T. succedaneum(Rhus succedanea;野漆・木蠟樹・洋漆樹)
アンナンウルシ(トンキンウルシ) var. dumoutieri(Rhus succedanea var.dumoutieri)
東南アジア産
ヤマハゼ T. sylvestre(Rhus sylvestris;木蠟樹・野漆樹・野毛漆)『中国本草図録』Ⅳ/1730
本州(東海道以西)・四国・九州・朝鮮・臺灣・長江中下流域に産
ヤマウルシ T. trichocarpum(Rhus trichocarpa;毛漆樹)
アオヤマウルシ f. viride(Rhus trichocarpa f. viridis)
ウルシ T. vernicifluum(Rhus verniciflua, R.kaempferi, R.vernicifera;
漆・山漆・大木漆)
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訓 |
和名ウルシの語源については、「潤汁(うるしる)」「塗汁(ぬるしる)」の転訛などの諸説がある。『日本国語大辞典 第二版』参照。 |
源順『倭名類聚抄』(ca.934)漆に「和名宇流之」と。 |
説 |
遼寧・華北・西北・華東・兩湖・兩廣・四川・貴州・雲南・チベット・ヒマラヤの、暖温帯の照葉樹林に分布する。
日本には古く渡来して北海道・本州・四国・九州で栽培され、里山にしばしば野生化。 |
誌 |
茎から漆液を採り、果実から蝋を採る。
茎から採る白い漆(うるし)液は、空気に触れると酸化して黒くなり、硬くなるので、接着剤として有効。固まった漆は、光沢があり、酸・アルカリに対して耐久性があり、防湿性・防腐性に優れる。
東南アジア・東アジアの照葉樹林帯の住人たちは、古くからこれを接着剤・塗装剤として用いた。 |
中国では、河北省藁城県台西村から殷代の漆器の残片が、湖北省折春県家家咀から西周時代の漆杯が、出土している。しかし、漆器の製作が盛んに行われるようになるのは、戦国・漢時代から、四川・湖南などにおいて。
文献の上では、『詩経』『周礼』などにより、古くから漆が用いられ、広い漆畑も営んだことが知られる。 |
また、ウルシの根・皮・葉・種子及び樹皮からの浸出物を、薬用にする。 |
『詩経』国風・鄘風(ようふう)・定之方中に、「定の方(まさ)に中(ちゅう)するとき、楚宮を作る。之を揆(はか)るに日を以てし、楚室を作る。之に榛(しん)栗(りつ)と、椅(い)桐(とう)梓(し)漆(しつ)を樹(う)え、爰(ここ)に伐(き)りて琴瑟(きんしつ)とす」と。 |
賈思勰『斉民要術』(530-550)巻5に「漆」が載る。 |
日本では、縄文前期(ca.B.C.6000-ca.B.C.5000)の鳥浜貝塚(福井県)から、漆塗の櫛・容器が出土している。 |
『花壇地錦抄』(1695)巻三「山椒(さんせう)るひ」に、「漆(うるし) 葉ハくるみのごとく、木にうるし有」と。 |
たらたらと漆の木より漆垂りものいふは憂き夏さりにけり
(1915,斉藤茂吉『あらたま』)
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