ぬるで (白膠木・塩麩子) 

学名  Rhus javanica var. chinensis (R.chinensis)
日本名  ヌルデ
科名(日本名)  ウルシ科
  日本語別名  ヌデ・ヌリデ・ヌルデンボウ・ヌルテンボウ・ヌルデッポウ・ノデッポウ・ノデボ、フシノキ、シオノキ、カツノキ・カツンボウ、ゴマギ、オッカド(御門)・オッカドノキ
漢名  鹽膚木(エンフボク,yánfūmù)
科名(漢名)  漆樹(シツジュ,qīshù)科
  漢語別名  五倍子(ゴバイシ,wŭbèizĭ)・五倍子樹・五倍柴・倍子柴・木五倍子、鹽膚子・鹽楊樹・鹽樹根・紅鹽果、酸醬頭・鹽酸白、烏酸桃・紅葉桃・烏桃葉・烏烟桃、土椿樹、山梧桐
英名  
2024/03/21 薬用植物園 
2009/04/30 同上
2024/06/20 シミック八ヶ岳薬用植物園 
2004/08/17 薬用植物園
2004/09/09 同上
2006/09/07 埼玉県長瀞町

2006/11/04 薬用植物園

 ヌルデ属 Rhus(鹽膚木 yánfūmù 屬)には、世界に約35-40種がある。

  ウラジロハゼ R. hypoleuca(白背麩楊 báibèi fūyáng)
臺灣・福建・湖南・廣東産 
  ヌルデ R. javanica
    タイワンフシノキ
(タイワンヌルデ・ハネナシヌルデ) var. javanica(var.toyohashiensis,
         R.chinensis var.roxburghii)
 絶滅危惧IA類(CR,環境省RedList2020)
         
本州東海地方・琉球・臺灣・朝鮮・漢土(南部)・インドシナ・ヒマラヤ・インドネシアに産
    ヌルデ var. chinensis(R.chinensis, R.semialata;鹽膚木)
  R. potaninii(R.henryi;靑麩楊・倍子樹・烏倍子)
『中薬志Ⅲ』pp.613-618 
  R. punjabensis
    var. punjabensis(旁遮普 pangzhepu 麸楊)
    var. sinica(R.sinica;紅麩楊・漆倍子・早倍子樹)
『中国本草図録』Ⅶ/3202 
  R. teniana(滇麩楊)
 雲南産 
  トゲナシヤマウルシ R. trichocarpa f.subinermis
  R. wilsonii(川麩楊)
 四川・雲南産 
   
 ウルシ科 Anacardiaceae(漆樹 qīshù 科)については、ウルシ科を見よ。
 「葉ニ五倍子ヲ生ジふしト云フ、故ニ此木ヲふしの木ト稱ス、又此樹白色ノ膠漆アリテ物ヲ塗リ得ベシ故ニぬるでト云フト謂ヘリ」(『牧野日本植物図鑑』)。
 別名カツノキは、むかし聖徳太子と蘇我馬子が物部守屋を滅ぼすに当り、太子がヌルデの材を以て四天王像を彫って勝利を祈った
(587,四天王寺の創建)とされることから、という(引用元失記)
 オッカドは、材でオッカド(御門)棒を作り、小正月に門に立てたことから。
 小野蘭山『本草綱目啓蒙』(1806)28塩麩子に、「フシノキノミ フシノキ以下木ノ名 ヌルデ ヌデ濃州 ヌリダ備前 ユリデ佐州 ノデノキ尾張上総 カツキ カツギ カツノキ奥州 カチノキ 将軍木 サイハイノキ アカベソ城州醍醐 ゴマギ津軽 ヲツカドノキ信州 ヤマハゼ土州 メウルシ江戸」と。
 北海道・本州・四国・九州・琉球・朝鮮・臺灣・漢土(河北以南)・ヒマラヤ・インドシナに分布。
 ヌルデを初め 同属のいくつかの種は、葉・葉柄にヌルデシロアブラムシ(ヌルデノフシムシ)などの幼虫が寄生すると、その部分に虫こぶ(蟲癭・虫瘤)ができ、多量のタンニンを含む。中国ではこれを五倍子(ゴバイシ,wŭbèizĭ)と呼び、日本では五倍子(ふし)・附子(ふし)と呼ぶ。
 中国では、ヌルデの根・葉を 薬用にする。 『全国中草葯匯編』上/660-661
 中国では、R.javanica(R.chinensis;鹽膚木)・R.potaninii (靑麩楊)・R.punjabensis var.sinica (紅麩楊)などが作る五倍子(ゴバイシ,wŭbèizĭ)を、薬用にする。『中薬志Ⅲ』pp.613-618、『全國中草藥匯編 上』pp.152-153 『(修訂) 中葯志』V/823-832
 日本では、ヌルデが作る五倍子(ふし)、染料・薬用にする。昔はお歯黒の媒染材として用いた。
 材は軽く軟らかいので、各種の細工物に用い、関東では正月の祝い箸や削り花を作る。かつては采配の柄を作るのに用い、勝軍木と呼んだ。
 乾燥した材は、燃すと激しく爆ぜるので、護摩に用いる。
 『万葉集』に、

   あしがり(足柄)のわをかけやまの(不詳)かづの木の
     わ(吾)をかづさねもかづ(穀)さ(割)かずとも (14/3432,読人知らず)

とあるのは、ヌルデ(一説にカジノキ)。
 『花壇地錦抄』(1695)巻三「山椒(さんせう)るひ」に、「雌漆(めうるし) 葉うるしのごとく、秋 紅葉する事、花にかへたり。実ハ女中歯黒ニ合ル、ふしと云物也。一名■{備の人偏に木偏を代入}(ぬるで)共云。かつの木共云」と。

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