辨 |
ナシ属 Pyrus(梨 lí 屬)の植物には、ユーラシア・北アフリカの温帯・暖帯に約30種がある。
P. armeniacifolia(杏葉梨) 新疆産
ホクシマメナシ P. betulifolia(杜梨・棠梨・杜・常棣・甘棠)
P. calleryana
var. calleryana(P.ussuriensis var.calleryana;豆梨・鹿梨・杜梨・梨丁子)
朝鮮・山東・河南・華東・兩湖・兩廣・ベトナム産 『中国本草図録』Ⅲ/1186
マメナシ var. dimorphophylla 日本(愛知・三重・岐阜)産 絶滅危惧IB類(EN,環境省RedList2020)
セイヨウナシ P. communis(西洋梨) 歐洲・西アジア原産
P. hopeiensis(河北梨) 河北・山東産
チョウライナシ P. lindleyi(嶺南梨・鳥梨)
P. pashia(川梨・棠梨刺)四川・貴州・雲南産 『雲南の植物Ⅱ』117・『中国本草図録』Ⅵ/2658
P. phaeocarpa(褐梨) 河北・山西・山東・陝甘産
P. pyrifolia
ヤマナシ var. pyrifolia(沙梨) 『中国本草図録』Ⅹ/4630
ナシ(ニホンナシ・アリノミ) var. culta(=P. serotina;E.Japanese pear,Sand pear)
P. serrulata(麻梨・黃皮梨) 浙江・江西・兩湖・兩廣・四川産
P. sinkiangensis(新疆梨) 陝甘・青海・新疆産
P. ussuriensis
ミチノクナシ(イワテヤマナシ・ホクシヤマナシ・チョウセンヤマナシ) var. ussuriensis
(P.usuriensis var.aromatica;秋子梨・花蓋梨・沙里梨・酸梨)
本州(東北)・朝鮮・遼寧・吉林・黑龍江・華北産 『中国本草図録』Ⅳ/1676
絶滅危惧IB類(EN,環境省RedList2020)
シナナシ(チュウゴクナシ) var. culta(P. bretschneideri;白梨・白挂木・罐梨;
E.Chinese pear)ミチノクナシの栽培品、 華北・陝甘・青海産
アオナシ var. hondoensis
アイナシ P. × uyematsuana マメナシとヤマナシの雑種。愛知・三重・岐阜に産
P. xerophila(木梨・酸梨・野梨・棠梨) 河南・山西・陝甘産
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日本では、ヤマナシ P.pyrifolia var.pyrifolia(沙梨,サリ,shālí)を栽培化して ナシ(ニホンナシ) var.culta(P. serotina)を作った。長十郎・二十世紀など多くの品種がある。
また、かつてはアオナシ P.ussuriensis var.hondoensis をもとにした品種群があったが、今日ではほとんど栽培していない。 |
中国では、ミチノクナシ P.ussuriensis(秋子梨,シュウシリ, qiūzǐlí)を栽培化して、シナナシ P.ussuriensis var.culta(白梨,ハクリ,báilí)を作った。多くの品種がある。 |
西方には、ヨーロッパ(中部・東南部)・小アジア原産で 広く地中海地方で栽培するセイヨウナシ(E.Common pear) P.communis、ヨーロッパ・小アジア原産のサリチフォリア P.salicifolia などがある。 |
バラ科 Rosaceae(薔薇 qiángwēi 科)については、バラ科を見よ。 |
訓 |
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説 |
中国で食用に栽培する梨は、北部では白梨(シナナシ)、南部では沙梨(ヤマナシ・ナシ)。
日本で栽培する梨は、ほとんどはナシ。 |
誌 |
『礼記』「内則」に、周代の君主の日常の食物の一として梨を記す。 |
賈思勰『斉民要術』(530-550)巻4に「挿梨」が載る。説かれているのは、華北・西北に分布するシナナシであるとされる。 |
白居易「長恨歌」に、帝の使いが海上の仙山に楊貴妃の霊 玉真を尋ねたとき、玉真のようすは、
玉容寂寞涙欄干 玉容 寂寞として 涙 欄干たり
梨花一枝春帯雨 梨花一枝 春 雨を帯ぶ
蘇軾は「和孔密州五絶 其三」に「東欄の梨花」を詠って、
梨花淡白にして 柳は深青
柳絮飛ぶ時 花 城に満つ
惆悵たり 東欄二株の雪
人生 幾たびの清明を看得ん
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日本におけるナシの文化史は、ナシを見よ。 |