なし (梨) 

学名  Pyrus pyrifolia var. culta(P. serotina)
日本名  ナシ
科名(日本語)  バラ科
  別名  ヤマナシ、ニホンナシ、アリノキ・アリノミ
漢名  沙梨(サリ,shālí)
科名(漢語)  薔薇(ショウビ,qiángwēi))科
  別名  
英名  Japanese pear, Sand pear
2007/04/01 新座市大和田
2007/05/27 同上
2007/07/05 行田市
 あまり整形をしていない木でした。   
2008/10/26 長野県小布施町
 野生種はヤマナシ var. pyrifolia(沙梨)。ナシはその栽培品、日本で作られた。
 品種に、赤梨系
(長十郎など)と青梨系(二十世紀など)がある。
 ナシ属 Pyrus(梨 lí 屬)の植物には、ついては、ナシ属を見よ。
 日本では、深江輔仁『本草和名』(ca.918)梨に、及び源順『倭名類聚抄』(ca.934)梨に、「和名奈之」と。
 小野蘭山『本草綱目啓蒙』26
(1806)梨、「ナシ アリノミ阿州。京師ニテハ鹿梨ヲアリノミト云 アリノキ豫州」と。鹿梨はヤマナシ
 ナシの音が「無し」に通じるというので、一部でこれを忌み、平安時代から「ありのき・ありのみ」と言うことがある。
 和名のナシは、ヤマナシを改良した栽培品種の総称。持統天皇(645-702)の時代に栽培の記録があり、江戸時代には改良と普及が進んだ。
 今日日本で栽培されるナシはほとんどがこれであり、中国・朝鮮でも栽培されている。
 中国におけるナシの文化史は、ナシ属の項を見よ。
 『万葉集』には、

   黄葉
(もみぢば)の にほひは繁し 然れども 妻梨の木を 手折りかざさむ
      
(10/2188,読人知らず)
   露霜の 寒き夕の 秋風に 黄葉
(もみち)にけりも 妻梨の木は (10/2189,読人知らず)
      
(「つまなし」という木は無い。「妻が無い」とかけて、単に「ナシ」をいうものか)
   なし
(梨)(なつめ) きみ(黍)に粟(あは)嗣ぎ 延(は)ふ田葛(くず)
     後もあはむと 葵
(あふひ)花咲く (16/2834,読人知らず)
   十月
(かむなづき) しぐれの常か 吾がせこ(背子)
     屋戸の黄葉
(もみちば) 落(ち)りぬべく見ゆ
       
(19/4259,大伴家持。「当時梨の黄葉を矚(み)て 此の歌を作る」)
 
 『古今集』に、

   あぢきなし なげきなつめそ うき事に あひくる身をば すてぬものから
     
(藤原兵衛、物名「なし なつめ くるみ」)
   おふのうらに かたえさしおほひ なるなしの なりもならずも ねてかたらはん
     
(伊勢歌)
 
 清少納言『枕草子』第37段「木の花は」に、「なしの花、よにすさまじきものにして、ちかうもてなさず、はかなき文つけなどだにせず、あいぎゃう(愛敬)おくれたる人のかほ(顔)などをみては、たとひにいふも、げに、は(葉)のいろよりはじめて、あいなくみゆるを、もろこしには限りなきものにて、ふみにもつくる、なほさりともやうあらんと、せめてみれば、花びらのはしに、をかしき匂ひこそ、心もとなうつきためれ。やうきひ(楊貴妃)のみかど(帝)の御つかひにあひてなきけるかほににせて、「梨花一枝、春、雨をおびたり」などいひたるは、おぼろげならじとおもふに、なほいみじうめでたきことは、たぐひあらじとおぼえたり」と。
 西行(1118-1190)『山家集』に、

   はな
(花)のをり(折) かしはにつつむ しなのなし(信濃梨)
     ひとつなれども ありのみと見ゆ
       
(「れいならぬ人の大事なりけるが、四月になしのはなのつきたりけるを見て、
        
なしのほしきよしをねがひけるに、もしやと人にたづねければ、
        
かれたるかしはにつゝみたるなしをたゞひとつつかはして、
        
こればかりなど申たりける」。45句は 異本あり)

 『新古今集』に、

   さくらあさの をふのうら浪 立ちかへり みれどもあかず 山なしの花
(源俊頼)
 

   甲斐がねに雲こそかゝれ梨の花 
(蕪村,1716-1783)
   梨の花月に書ミ
(ふみ)よむ女あり (同)
 

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