このてがしわ (児手柏) 

学名  Thuja orientalis (=Biota orientalis;Platycladus orientalis)
日本名  コノテガシワ
科名(日本名)  ヒノキ科
  日本語別名  ハリギ、テガシワ、フタオモテ
漢名  側柏(ソクハク,cebai)
科名(漢名)  柏科
  漢語別名  柏・柏樹、扁柏(ヘンハク,bianbai)、香柏、
英名  Oriental arbor-vitae, Chinese arbor-vitae
2006/02/18 神代植物公園

2006/03/26 薬用植物園 2007/04/06 薬用植物園

2005/08/19 薬用植物園
2007/12/25 同上
 ネズコ属(クロベ属) Thuja(崖柏屬)には、5-6種がある。
   T. koraiensis(朝鮮崖柏・長白側柏・偃側柏)
   ニオイヒバ T. occidentalis(E.Arbor vitae) 北アメリカ東部産
   コノテガシワ T. orientalis(Biota orientalis;側柏)
   アメリカネズコ
(ベイスギ) T. plicata 合衆国西部(アラスカ乃至カリフォルニア)産
   ネズコ
(クロベ・ゴロウヒバ) T. standishii(T.japonica)

 コノテガシワを、独立させてコノテガシワ属 Biota(側柏屬)とすることがある。 
 ヒノキ科 Cupressaceae(柏科)については、ヒノキ科を見よ。
 和名に含まれるかしわについては、カシワを見よ。児の手とは、葉が立った形を子どもの掌に擬えて。漢名の側も同様。
 漢語の柏(ハク;bo,bai)は、広くはヒノキ科の植物の総称、狭くはコノテガシワ。
 源順『倭名類聚抄』(ca.934)柏に「和名加閉」と。
 小野蘭山『本草綱目啓蒙』
(1806)30柏に、「カヘ和名鈔 コノテガシハ 両面 ハリギ土州」と。
 中国(北部)原産、今日の中国では、園林・造林用に 新疆・青海を除く全国で植栽する。
 日本への渡来時期は、元文(1736-1741)年間といい(牧野)、あるいは奈良坂の奈良豆彦神社の境内には樹齢450年のものがあるという。今日では、北海道南部から沖縄まで、全国で庭園樹として植える。
 種子は柏実・柏子仁(ハクシジン,baiziren,はくしにん)と、葉は側柏葉と呼び、薬用にする。『中薬志』Ⅱpp.282-284・Ⅲpp.512-514 
 松柏(ショウハク,songbai,マツとコノテガシワ)は、中国では古来長寿と貞節の象徴。
 古くから松柏は「百木の長」
(『史記』128「亀策列伝」)として、ともに常緑で葉を落とさずに茂る植物の象徴である。たとえば『荘子』徳充符篇に、「命を地に受けたるは、惟(ただ)松柏のみ独り正しく、冬夏 青青(せいせい)たり」とある。
 この常緑性により、松柏は早くから次の二つの含意を持ち続けた。
  1.『詩経』「小雅」「鹿鳴之什」の「天保」に、「松柏の茂るが如く、爾
(なんじ)に承(つ)がざる無けん」とあるように、永遠の生命力、つまり衰えずに栄え続けること、ひいては長寿と子孫繁栄などの象徴となった。
  2.『論語』子罕編に「歳寒くして、然る後に松柏の彫
{シボ}むに後るるを知る」とあるように、逆境・困難の時にあってなお緑を絶やさない、すなわち節を守って変わらない、君子の高節の象徴となった。
 松柏は、上記の1.の理由から、しばしば宮殿あるいは墓所・寺廟などに植えられる。
 たとえば、杜甫「古柏行」に「孔明
(諸葛亮)廟前老柏有り、柯は青銅の如く根は石の如し」と。同「蜀相(諸葛亮)」に「丞相の祠堂 何の処にか尋ねん、錦官城外 柏森森」と。
 日本の『万葉集』18/4169 では、「松柏」はまつかえと読み、「松柏(まつかえ)の」は 栄えにかかる枕詞。
 『万葉集』に、

   奈良山の 児手柏の 両面
(ふたおもて)に かにもかくにも 佞人(ねじけひと)の友
      
(16/3836,消奈行文)
   ちば
(千葉)のぬ(野)の このてかしはの ほほ(含)まれど
     あやにかなしみ お
(置)きてたかき(来)(20/4387,大田部足人)

と、「このてかしは」が詠われている。
 しかし、コノテガシワは中国原産で、日本に入ったのは近世と思われ、これらの「このてかしは」はコノテガシワではない。それでは一体何かというについては諸説が有り、定まらない。

 平安時代の歌には、「このてかしは」は、秋の野にハギとともに花開くといい、またしぐれ降るころのうす紅葉のさまは 葉守の神(カシワを見よ)も愛でるだろう、などと詠われていて、顕昭『袖中抄』
(1185-1187)は これを男郎花(オトコエシ)の一名とする。

   いはれの
(磐余野)の はぎ(萩)がたえまの ひまひまに
     このてがしはの はな
(花)さきにけり (西行『山家集』雑)
 
 『花壇地錦抄』(1695)巻三「冬木之分」に、「両面(りやうめん) ひの木のるひにて、葉色青く見事。枝、根本より多ク出、葉ハ手を合せたるごとくつまり、四方面ニしげる故に、このてかしわ共いふ。此るひに数多ありて人をまよわす」、「唐ひば 両面ニまぎるゝ斗にて、葉も色も異あり。世間にて是を両面又ハこのてかしわといふて売買ス。吟味有べし」、「ちやうせんひば 両面のるい也。木のちいさき時ハ見分なし。後わるし。両面よりおとる」と。

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