いちい (一位) 

学名  Taxus cuspidata (T.cuspidata var.borealis, T.caespitosa var.latifolia, T.caespitosa var.angustifolia, T.biternata)
日本名  イチイ
科名(日本名)  イチイ科
  日本語別名  シャクノキ(笏木)、アララギ、オンコ(オッコ・オッコノキ・ウンコ・アッコ)、アカギ(赤木)、スオウ(蘇芳)・ミネズボ・ミネゾウ(峰蘇芳)・ミネツブ・ムネツブ・インゾウ(犬蘇芳)、ヘダノキ、キャラボク(伽羅木)、ヤマビャクダン(山白檀)
漢名  東北紅豆杉(トウホク コウトウサン,dōngběi hóngdòushān)
科名(漢名)  紅豆杉(コウトウサン,hóngdòushān)科
  漢語別名  紫杉(シサン,zishan)、赤柏松(セキハクショウ,chibaisong)、米樹(ベイジュ,mishu)
英名  Japanese yew
2007/04/19 薬用植物園
2006/06/04 北大 (札幌)
2016/08/26 長野県小県郡長和町長久保 (旧中山道長久保宿) 
2008/10/26 長野県小布施町
 裸子植物については、裸子植物を見よ。
 イチイ科 Taxaceae(紅豆杉 hóngdòushān 科)には、6属約28-32種がある。

  ウラジロマキ属 Amentotaxus(穗花杉屬) 中国~アッサムに1-4種
    A. argotaenia(穗花杉・華西穗花杉)
 『中国本草図録』Ⅶ/3041
    A. formosana(臺灣穗花杉)
    A. yunnanensis(雲南穗花杉)
  ナンヨウイチイ属 Austrotaxus(澳洲紅豆杉屬)
ニューカレドニアに1種
  イヌガヤ属 Cephalotaxus(三尖杉屬)
  シロミイチイ属 Pseudotaxus(白豆杉屬) 
中国に1種
    P. chienii(白豆杉)
  イチイ属 Taxus(紅豆杉屬)
  カヤ属 Torreya(榧屬) 
   
 イチイ属 Taxus(紅豆杉 hóngdòushān 屬)には、約12種がある。

  セイヨウイチイ
(ヨーロッパイチイ) T. baccata(E.Yew)
  T. chinensis(T.wallichiana var.chinensis;
         紅豆杉・中國紅豆杉・卷柏・扁柏・紅豆樹・觀音杉)
         
安徽・兩湖・陝甘・廣西・西南産
         『中国本草図録』Ⅶ/3042、『中草藥現代研究』Ⅲp.305
  イチイ
(アララギ・オンコ) T. cuspidata(東北紅豆杉・紫杉・赤柏松・米樹)
    キミノオンコ f. luteobaccata
    キャラボク var. nana(T.cuspidata var.caespitosa, T.cuspidata 'Nana',
         T.caespitosa, T.umbraculifera)
      オウゴンキャラ 'Aurescens'
  T. wallichiana(西藏紅豆杉・喜馬拉雅紅豆杉)
         
雲南・チベット・ヒマラヤ・インドシナ・マレシア産
    タイワンイチイ var. mairei(T.chinensis var.mairei, T.mairei,
         T.phytonii;南方紅豆杉・美麗紅豆杉)
         
臺灣・華東・兩湖・兩廣・河南・陝甘・西南・ヒマラヤ・ベトナム産
  T. yunnanensis(T.celebica;雲南紅豆杉)
 四川・雲南・東ヒマラヤ産 『雲南の植物Ⅰ』41 
   
 和名シャクノキは、この材で神主の用いる笏(しゃく)を作ったことから、という。『倭名類聚抄』に「木可為笏也」と。
 イチイは、むかし仁徳天皇の時代に、飛騨位山(くらいやま)に産するイチイ木の材から、正一位・従一位の笏を作ったので、爾来この木を笏の料にと定め、木に正一位を授けた、という伝説から。
 「和名ハ一位ニシテ古來此材ヲ以テ笏ニ作リシニ由リ位階ノ正一位從一位ニ比シ斯ク名ク」(『牧野日本植物図鑑』)。
 全国各地の方言に、アララギがある
 あららぎは「まばらに生えるネギ」の意で、本来ノビルを指す。そのアララギとイチイの結びつきについては、ランの訓を見よ。
 ただし、牧野は「あららぎハ蓋シ其樹容ニ基キシ名乎或ハ其枝葉ノ疎密ニ由リシ名乎不明ナリ」と(『牧野日本植物図鑑』)。
 アイヌ名をララマニ・ラルマニ、つまりララマの木という。
 一説に、アララギは このララマニの転訛と云う、そうとでも考えなければ アララギの名義を思いつかぬ、と
(武田久吉『民俗と植物』)
 「おんこハ北海道ノあいぬ語ナリ」(『牧野日本植物図鑑』)。 
 アカギ・ミネゾウは、材が紅褐色であることから。
 キャラボク・ヤマビャクダンとは、材の色と香りがビャクダンに似ることから。
 北海道・本州・四国・九州・朝鮮・ロシア沿海地方・樺太・千島・吉林に分布。埼玉では絶滅危惧Ⅱ類(VU)。
 日本では、しばしば庭木・生垣として植栽。
 葉や種子は有毒(赤い果肉は無毒)
 中国では、枝葉を薬用にする。『中草藥現代研究』Ⅲp.305
 『万葉集』に櫟(いちひ)とあるもの(16/3885)は、今日のイチイではなく、ブナ科のイチイガシ
 『花壇地錦抄』(1695)巻三「冬木之分」に、「伽羅木(きやらほく) つがもみのごとくにて、色青黒し。根本より葉こもりて、木ふり見事。笏ニ用らるゝ木ニて、一位木(いちいほく)共いふとぞ。此木、異名多し。○おつかう○みねすわり○あらゝぎ○とが○一位。此木ヲ植レバ疫をはらふとて加羅木といふよし。葉は少の異にて、色々の名あり○めきやらぼくハ、葉こまかにつまりて八重 ○をきやらぼくハ、葉あらし ○ひとへきやらハ葉もミのごとし。葉八重成めきやらぼくを上とス」と。
 
   あららぎのくれなゐの実を食むときはちちはは恋し信濃路にして
     
(1921,斎藤茂吉『つゆじも』)
    
 岐阜県の県木。飛騨位山にはイチイの原生林がある。
 イギリスでは、ヨーロッパイチイをトピアリ(刈り込み)の素材とする。

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