辨 |
チャンチン属 Toona(香椿 xiāngchūn 屬)には、中国・ヒマラヤ・東南アジアに4-6種がある。
T. fargesii(T.rubriflora;紅花香椿) 中国南部・ヒマラヤ産
T. hexandra(T.ciliata, Cedrela toona;紅椿・紫椿)
福建・湖南・兩廣・西南・東南&南アジア産 『雲南の植物Ⅱ』174
チャンチン T. sinensis(香椿)
T. sureni(紫椿・紅楝子・紅椿) 雲南・東南アジア産
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センダン科 MELIACEAE(楝 liàn 科)については、センダンを見よ。 |
訓 |
「和名ハ香椿ノ中國音ひやんちんノ轉ゼシモノニシテ、香椿ハ椿ノ別名ナリ」(『牧野日本植物圖鑑』)。 |
小野蘭山『本草綱目啓蒙』31 椿に、「タマツバキ古名河州 キヤンチン京 ヒヤンチン チヤンチン共同上 チヤン播州 ライデンボク丹波常州 ナンジヤノキ常州 カミナリノキ勢州 クモヤブリ同上 ユミギ土州 シロハゼ同上 ヒヨケノキ防州 ヒンボク同上 テンツゞキ江州 ホウチン能州」と。 |
漢名椿(チン,chūn)は、会意兼形声文字。春は音符であると同時に、「がっしりとこもる」意を表す(藤堂『学研漢和大字典』)。
古くは杶(チュン,chūn,『尚書』禹貢)に作り、橁(チュン,chūn,『左伝』)に作る。 |
椿(チン,chūn)は、チャンチン或はニワウルシ Ailanthus altissima(椿・臭椿・樗)を指す。
『本草綱目』に、「香ばしき者を椿と名づけ、臭き者を樗(チョ,chū)と名づく」と。
日本では、椿字の本義を知らず、椿を「つばき」と訓み、ツバキにあてる。
ツバキは春に花を開くことから、木偏に春と書いてツバキを指すものとしたのだろう、したがって「椿(つばき)」は国字である、という。 |
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説 |
華北・華東・兩湖・兩廣・四川・貴州・雲南に分布。人里に生育する。
春の芽が赤くて美しいので、庭木として観賞用に栽培する(黑龍江省以外)。 |
日本には古く入り、本州・四国・九州で人家に植えている。
一説に、隠元禅師が黄檗宗万福寺に植えたことに始まる、という。 |
誌 |
材はまっすぐで紅色、中国では建築材とするほか 木彫工芸の材とする。
嫩芽は香椿頭(コウチントウ,xiangchuntou)と呼んで食用にし、伝統的な晩春の蔬菜である(日本では、黄檗山万福寺において普茶料理に用いる)。
また、根皮を椿白皮(チンハクヒ,chunbaipi)と呼び、葉を椿葉(チンヨウ,chunye)と呼び、果実を香椿子(コウチンシ,xinagchunzi)と呼び、樹汁を春尖油(シュンセンユ,chunjianyou)と呼び、それぞれ薬用にする。『中薬志Ⅲ』pp.459-463 『(修訂) 中葯志』V/518 |
先秦には、椿は長寿の木として空想されていた。
上古、大椿なる者有り。八千歳を以て春と為し、八千歳を秋と為す。(『荘子』逍遥游篇) |
爾来、椿ひいてはチャンチンは、長寿の象徴として、ひいては家長たる父親の象徴として、詩に詠われ、絵に画かれた。 |