辨 |
バラモンジン属 Tragopogon(婆羅門參 póluóménshēn 屬)には、ユーラシア・北アフリカに約110-120種がある。
T. elongatus(長莖婆羅門參) 青海・新疆・中央アジア産
T. orientalis(黃花婆羅門參・東方婆羅門參) 『中国本草図録』Ⅸ/4384
モンゴリア・シベリア・小アジア・歐洲産
バラモンジン(ムギナデシコ・セイヨウゴボウ) T. porrifolius(蒜葉婆羅門參;
E.Salsify, Oyster plant, Oyster root, Vegetable oyster)
歐洲原産、花は淡紫色
キバナムギナデシコ(バラモンギク・キバナバラモンジン・キバナザキバラモンジン) T. pratensis
(婆羅門參・草地婆羅門參) 歐洲・西&中央アジア原産
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キク科 Asteraceae(菊 jú 科)の植物については、キク科を見よ。 |
訓 |
漢語としての婆羅門參(ハラモンシン,póluóménshēn, ばらもんじん)は、李時珍『本草綱目』(ca.1596)に仙茅(キンバイザサ)の別名として初見。すなわち、略略「江南では仙茅を婆羅門參と呼ぶ、初め西域の婆羅門僧が方を唐の玄宗に献じたことから婆羅門と云い、効き目が人參(オタネニンジン)に似ているので參と云う」とある。
日本語としてのバラモンジンは、飯沼慾斎『新訂草木図説』(1875)に Tragopogon porrifolius の名として初見。 |
牧野富太郎は、Tragopogon porrifolius の和名をムギナデシコとしていた。「和名麥撫子ハ嘉永年代頃ヨリノ呼名ニシテ婆羅門參ヨリ舊シ、元來婆羅門參ハひがんばな科ナル仙茅(きんばいざさ)ノ漢名ナレバ之レヲ以テ本種ニ適用スルハ中ラズ、故ニ今其第一名ナルむぎなでしこヲ撰用セリ」(『牧野日本植物図鑑』)。 |
今日の漢語で、Tragopogon の植物を婆羅門參と呼ぶのは、和語の輸入か。
なお、本種に冠せられている蒜葉は、「葉がニンニクのような」の意。 |
属名 Tragopogon は「雄山羊のあご髭」、冠毛の様子から。 |
説 |
地中海地方原産。北米など世界各地に帰化。
日本には、江戸末ないし明治初に食用として渡来。のち逸出して本州・四国に帰化。 |
誌 |
根・葉を食用にし、南欧では野菜として栽培。牡蠣のような風味がある。 |