おおばこ (大葉子)
学名 |
Plantago asiatica subsp. asiatica (P.asiatica var.asiatica, P.asiatica
var.densiuscula, P. major var. asiatica) |
日本名 |
オオバコ |
科名(日本名) |
オオバコ科 |
日本語別名 |
オンバコ・オンバク・オンバ・オンバツ・オンバツノハ・オンバッコ・オバコグサ・オンバン・アンバツ・アンバン・ウンバツ・ウンバグサ・ウンバノハ、ガイロッパ・カイツルバ・カロエッパ、ツンベ、スモトリグサ、メンバツクサ、 |
漢名 |
車前(シャゼン,chēqián) |
科名(漢名) |
車前(シャゼン,chēqián)科 |
漢語別名 |
車葥(シャゼン,chēqián)、芣苢・芣苡(フイ,fúyĭ)、牛遺(ギュウイ,niuyi)、當道、馬舃(バセツ,măxì)、驢耳朶菜、車軲轆菜、車輪菜、蝦蟇衣、地衣 |
英名 |
Asiatic plantain |
雌蕊 |
雄蕊 |
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2005/11/07 田島が原 |
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辨 |
Plantago asiatica には、次のような種内分類群がある。
オオバコ subsp. asiatica(var.asiatica, var.densiuscula, P.major var.asiatica;車前)
イサワオオバコ f. albostriata
ケバノオオバコ f. amamiana
ヤグラオオバコ f. folioscopa
ホウキオオバコ f. paniculata
ヤツマタオオバコ f. polystachya
フイリオオバコ f. variegata
エナガオオバコ var. laxa
マルミオオバコ var. sphaerocarpa 立山産
ヤクシマオオバコ var. yakusimensis(P.asiatica var.densiuscula f.yakusimensis,
P.yakusimensis) 屋久島・済州島産
subsp. densiflora(長果車前・密花車前) 兩湖・雲貴・チベットに産
subsp. erosa(疏花車前) 福建・兩湖・兩廣・四川・貴州・雲南・チベット・陝西・青海に産
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オオバコ科 Plantaginaceae(車前 chēqián 科)には、全世界に約97属 1850-1900種がある。
incl. Callitrichaceae, Hippuridaceae, Trapellaceae
Adenosma(毛麝香屬) 熱帯&亜熱帯アジア・濠洲北部に約22種
A. indiana(球花毛麝香・大頭陳・地松茶) 兩廣・雲南・インドシナ・ヒマラヤ・インド・マレシア産
全草を薬用 『全國中草藥匯編 上』pp.53-54
アンゲロンソウ属 Angelonia(香彩雀屬)
キンギョソウ属 Antirrhinum(金魚草屬)
オトメアゼナ属 Bacopa(假馬齒莧屬)
アワゴケ属 Callitriche(水馬齒屬) 全世界に60-75種
アワゴケ C. japonica 本州・四国・九州・琉球・臺灣・タイなどに産
ミズハコベ C. palustris(C.stagnalis;水馬齒・沼生水馬齒)
北海道・本州・四国・九州・琉球・雲南・チベットから広く北半球に産
チシマミズハコベ C. hermaphroditica(綫葉水馬齒) 北半球の温帯・亜寒帯に産
ヒナウンラン属 Chaenorhinum(毛彩雀屬) 北アフリカ・歐洲・西アジアに21種
ヒナウンラン C. minus
ジャコウソウモドキ属 Chelone(鰲頭花屬) 北米東部に4種
コリンソウ属 Collinsia(錦龍花屬) 北米西部に約20種
ツタバウンラン属 Cymbalaria(蔓柳穿魚屬)
サワトウガラシ属 Deinostema(澤蕃椒屬) 東アジア温帯に2種
マルバノサワトウガラシ D. adenocaula 本州・四国・九州・朝鮮・臺灣・四川・貴州・雲南産
サワトウガラシ D. violacea(Gratiola violacea;澤蕃椒)
本州・四国・九州・朝鮮・遼寧・吉林・黑龍江・江蘇・極東ロシ産
ジギタリス属 Digitalis(毛地黃屬)
アブノメ属 Dopatrium(虻眼屬) 旧世界の熱帯・亜熱帯に約12-15種
アブノメ D. junceum(虻眼)
本州福島以南・四国・九州・琉球・朝鮮・臺灣・漢土南部・東南アジア・濠洲・アフリカに産
キクガラクサ属 Ellisiopyllum(幌菊屬) 1種
キクガラクサ E. pinnatum(幌菊)
本州・四国・臺灣・江西・河北・甘肅・四川・貴州・雲南・ヒマラヤ・フィリピン・ニューギニア産
イワカラクサ属 Erinus(狐地黃屬)
ルリカンザシ属(ヒナデマリ属) Globularia(地團花屬) 歐洲・北アフリカに22-23種
オオアブノメ属 Gratiola(水八角屬) 北半球温帯・南米・濠洲に約20-30種
カミガモソウ G. fluviatilis 本州・四国・九州産
G. griffithii(黃花水八角) 廣東・アッサム産
オオアブノメ Gratiola japonica(白水八角)
本州・九州・朝鮮・江蘇・江西・雲南・遼寧・吉林・黑龍江・極東ロシア産
サクマソウ属 Hemiphragma(鞭打繡球屬) 1種
H. geterophyllum(鞭打繡球) 臺灣・湖北・陝甘・四川・貴州・雲南・チベット・フィリピン・セレベス産
スギナモ属 Hippuris(杉葉藻屬) 北半球冷温帯・濠洲南部に1-4種
ヒロハスギナモ H. tetraphylla 北海道から北半球の周極地方に産
スギナモ H. vulgaris(杉葉藻) 北海道・本州中部以北から世界の温帯・亜寒帯に産
ヒメツルウンラン属 Kickxia(銀魚草屬) 旧世界に約10種
ウルップソウ属 Lagotis(兔耳草屬) 歐亞・北米に約28-30種
L. brevituba(短筒兔耳草) 甘肅・靑海・チベット産
L. clarkei(大萼兔耳草・洪連・顯莖兔耳草)
チベット・ヒマラヤ産 『(修訂) 中葯志』IV/532-539 『全国中草葯匯編』下/392
ウルップソウ(ハマレンゲ) L. glauca(兔耳草)
北海道・本州中部・極東ロシア・アラスカ産 『全国中草葯匯編』下/392
L. integra(全緣兔耳草) 靑海・四川・雲南・チベット産
L. kunawurensis(L.spectabilis;噶穆兔耳草) チベット・ヒマラヤ産 『全国中草葯匯編』下/392
L. ramalana(圓穗兔耳草) ブータン産
ユウバリソウ L. takedana 北海道産
ホソバウルップソウL. yesoensis 北海道産
L. yunnanensis(雲南兔耳草) 四川・雲南産 『雲南の植物』204
シソクサ属 Limnophila(石龍尾屬) 旧世界の熱帯・亜熱帯に約36-44種
シソクサ L. aromatica(L.chinensis var aromatica, L.gratissima;
紫蘇草・香石龍尾・止咳草) 『全国中草葯匯編』下/121-122
本州関東以西・四国・九州・琉球・臺灣・江西・廣東・東南アジア・濠洲産
エナシシソクサ L.fragrans 琉球・臺灣・フィリピン・ニューギニア・濠洲産
コキクモ L. indica(L.trichophylla;有梗石龍尾)
本州・臺灣・廣東・雲南から旧世界の熱帯・亜熱帯に産
ホウライシソクサ L. rugosa(大葉石龍尾) 琉球・臺灣・福建・廣東・湖南・雲南・熱帯アジア産
『全国中草葯匯編』下/132
L. sessiliflora(石龍尾) 遼寧・河南・華東・湖南・兩廣・四川・貴州・雲南・東南アジア・インド産
ウンラン属 Linaria(柳穿魚屬)
キリカズラ属 Lophospermum(冠子藤屬) 中米に6種
ツルキンギョソウ属 Maurandella 北米に1種
ツタバキリカズラ属 Maurandya(蔓桐花屬) 中米に2種
キバナオトメアゼナ属 Mecardonia(伏脇花屬)
アレチキンギョソウ属 Misopates 旧世界に7-8種
アレチキンギョソウ M. orontium(小花金魚草)
マツバウンラン属 Nuttallanthus(細柳穿魚屬)
イワブクロ属 Pennellianthus 1種
イワブクロ P. frutescens(Penstemon frutescens) 北海道・本州北部・極東ロシア・アリューシャン産
ツリガネヤナギ属 Penstemon(釣鐘柳屬)
コオウレン属 Picrorhiza(天竺黃連屬) ヒマラヤに2種
incl. Neopicrorhiza
ヒガシコオウレン P. scrophulariifolia(Neopicrorhiza scrophulariifolia;
胡黃連・綠花胡黃連) 雲南・チベット・ヒマラヤ産
『週刊朝日百科 植物の世界』2-84 『中国本草図録』Ⅱ/825 『全国中草葯匯編』上/583-584
コオウレン P.kurroa(胡黃連) 雲南・チベット・ヒマラヤ・カシミール産
『中薬志Ⅰ』358 インドでは下剤とする
オオバコ属 Plantago(車前屬)
ハナチョウジ属 Russelia(爆仗竹屬)
セイタカカナビキソウ属 Scoparia(野甘草屬)
Scrofella(細穗玄參屬) 1種
S. chenensis(細穗玄參) 甘肅・青海・四川産
メキシコジギタリス属 Tetranema(四蕊花屬) 中米に8種
ヒシモドキ属 Trapella(茶菱屬) 1-2種
ヒシモドキ T. sinensis(茶菱)
本州・四国・九州・朝鮮・極東ロシア・遼寧・吉林・黑龍江・河北・華東・兩湖・廣西産
クワガタソウ属 Veronica(婆婆納屬)
incl. Hebe, Pseudolysimachion
クガイソウ属 Veronicastrum(腹水草屬)
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オオバコ属 Plantago(車前 chēqián 屬)には、世界に約240-270種がある。
ダキバオオバコ P. amplexicaulis アフリカ北部・アラビア・イラン産
ホソバオオバコ P. aenaria
アメリカオオバコ(ノゲオオバコ) P. aristata(E.Largebracted plantain;芒苞車前) カナダ・USA産
オオバコ P. asiatica(車前;E.Asiatic plantain)『中国雑草原色図鑑』214
エゾオオバコ P. camtschatica(海濱車前)
ケナシエゾオオバコ f. glabra
セリバオオバコ P. coronopus
ムジナオオバコ P. depressa(平車前・小車前・驢耳朶菜・車輪菜;
E.Depressed plantain) 『中国本草図録』Ⅳ/1858・『中国雑草原色図鑑』214
朝鮮・遼寧・吉林・黑龍江・華北・華北・西北・四川・貴州・雲南・チベット・ヒマラヤ・
・モンゴリア・極東ロシア・シベリア・中央アジアに産
タイワンオオバコ P. formosana(P.asiatica var.formosana) 琉球・臺灣産
ハクサンオオバコ P. hakusanensis 本州石川県以北の日本海側に産
ケナシハクサンオオバコ f. glabra
シロバナハクサンオオバコ f. viridescens
ニチナンオオバコ(イトバオオバコ) P. heterophylla(E.Many-seeded plantain) 南北米洲産
トウオオバコ P. japonica(P.major var.japonica, P.togashii, P.macronipponica)
エノシマオオバコ f. hiyamae
ヘラオオバコ P. lanceolata(長葉車前;E.Buckhorn plantain)『中国雑草原色図鑑』215
セイヨウオオバコ(オニオオバコ) P. major(大車前;E.Common plantain,
Greater plantain, Broadleaf plantain) 『中国本草図録』Ⅴ/2321・Ⅷ/3815
遼寧・吉林・黑龍江・華北・西北・江蘇・福建・臺灣・廣西・四川・貴州・雲南・チベットから
歐亞の温帯・亜寒帯に産
イヌオオバコ var. jeholensis
P. maritima(沿海車前・鹽生車前) 歐洲・西アジア・北米北部・南米南部産 『中国本草図録』Ⅸ/4338
シロバナオオバコ P.media(北車前) 歐亞の温帯・亜寒帯に産
『中国本草図録』Ⅹ/4855・『週刊朝日百科 植物の世界』2-216
P. minuta(P.lessingii;小車前) 山西・西北・モンゴリア・中央アジア・歐洲ロシア産
エダウチオオバコ(ホソバオオバコ) P. psyllium(P.arenarium, P.indica;對葉車前)
テキサスオオバコ P. rhodosperma
トゲオオバコ P. spinulosa
ハイオオバコ P. squarrosa 地中海地方東部産
ツボミオオバコ(タチオオバコ) P. virginica(北美車前;E.Dwarf plantain)『中国雑草原色図鑑』215
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訓 |
「和名ハ大葉子ノ意ニシテ、其闊葉ニ基キ名ケシナリ」(『牧野日本植物図鑑』)。
ガイロッパは、蛙の葉(漢名の蝦蟇衣も同意)。 |
一説に、中国の古典に見える芣苢(フイ,fúyĭ)は ハトムギとする。 |
『本草和名』及び『倭名類聚抄』車前子に、「和名於保波古」と。
『延喜式』車前子に、「オホハコ」と。
小野蘭山『本草綱目啓蒙』12(1806)に、「オホバコ延喜式 オバコ播州勢州 マルバコ南部 カイルバ同上 カイルパ仙台 スモトリ但州 ホウヅキバ房州総州 ミチボウキ甲州 マリコ蝦夷」と。 |
漢名は、この草がよく道端の牛馬に踏まれる場所に生えることから、車前・牛遺・當道・馬舃(舃は履物)という。
幽州で牛舌という。ガマがその葉の下に隠れ伏すので、江東で蝦蟇衣という(以上、本草綱目)。 |
説 |
北海道・本州・四国・九州・琉球・朝鮮・臺灣・華東・兩湖・兩廣・四川・貴州・雲南・チベット・東南アジア・インド・華北・西北・遼寧・吉林・黑龍江・極東ロシアに分布する。
日本のものは、史前帰化植物と考えられている。 |
雌雄異熟。花穂は下から上へと開花するが、雌蕊が先に熟し、後れて下方に雄蕊が熟す。 |
誌 |
中国では、古くは苗や若葉を蔬菜として用いた。
次のものの種子を車前子(シャゼンシ,chēqiánzĭ)、全草を車前草(シャゼンソウ,chēqiáncăo)と言い、薬用に供する(〇印は正品)。『中薬志Ⅱ』pp.148-152 『全國中草藥匯編 上』pp.169-170 『(修訂) 中葯志』III/242-249
〇オオバコ Plantago asiatica(車前)
〇ムジナオオバコ P. depressa(平車前・小車前・驢耳朶菜)
〇セイヨウオオバコ P. major(大車前)
日本では、生薬シャゼンシ(車前子)は オオバコの種子であり、シャゼンソウ(車前草)は オオバコの花期の全草である(第十八改正日本薬局方)。 |
『詩経』国風・周南・芣苢(ふい)に、「芣苢を采(と)り采る、薄(しばら)く言(ここ)に之を采る」と。
芣苢(フイ,fúyĭ)は音が胚胎に通じ、その実は「子に宜し」という(『説文』)。芣苢を摘むのは、子求めの祈り。 |
信濃路はあかつきのみち車前草(おほばこ)も黄色になりて霜がれにけり
(1926,斎藤茂吉『ともしび』)
ひと里も絶えたる沢に車前草の花にまつはる蜂見つつをり
(1932志文内,斎藤茂吉『石泉』)
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ホウキオオバコ f. paniculata 2011/08/27 富山県薬用植物指導センター |
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ヤツマタオオバコ f. polystachya 2021/07/20 薬用植物園 |
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