辨 |
Cirsium japonicum は、形態的な変異に富み、幾つかの種内分類群があるという。ここでは YList による。(中国のものについては『植物分类学报』22卷(1984)石铸論文があるというが、未見)。
ノアザミ C. japonicum(var.japonicum, var.maritimum, C.kitagoense,
C.laciniatum, C.maackii var.vulcani, C.senile;薊)
シロバナアザミ f. leucanthum
カラノアザミ subsp. maackii(var.ussuriense, var.maackii,
C.maackii;大薊・野薊・刺薊菜)『全國中草藥匯編 上』pp.96-97
朝鮮・極東ロシア・遼寧・吉林・黑龍江・河北・山東・江蘇・安徽・四川産
ホソバカラノアザミ var. nakaianum
サイシュウトゲアザミ var. spinosissimum(C.mackii var.spinosissimum)
タカサゴアザミ var. australe
オニオオノアザミ var. diabolicum(C.diabolicum) 飛騨山脈・頚城山地産
トゲアザミ var. horridum 四国産
ミヤマコアザミ var. ibukiense(C.ibukiense) 北陸・近畿北部産
オキノアザミ var. okiense 隠岐島産
シロバナタカサゴアザミ var. takaoense
ケショウアザミ var. vestitum 本州(近畿以西)・四国産
シロバナケショウアザミ f. arakii
ビャッコアザミ var. villosum 本州中部産
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ノアザミには、「初夏に咲き,平地に多い,花茎があまり分岐しない形と,本州(東北地方と中部地方)の内陸地に分布し,夏から秋に咲く,茎が良く分岐するものの二型が認められる」(「日本のアザミ」)。 |
夏の信州の高原には、ノアザミとノハラアザミがさき揃う。その見分け方は・・・、
花期: ノアザミは5-8月、ノハラアザミは8-10月。
花: ノアザミは枝頂に一花、ノハラアザミはしばしば2-3花が集まって着く。
総苞: ノアザミは粘つく。ノハラアザミは粘つかない。
花期の根出葉: ノアザミの根出葉は、有ってもロゼット状にならない。
ノハラアザミの根出葉は、花期にもロゼット状に残る。 |
アザミ属 Cirsium(薊 jì 屬)の植物については、アザミ属を見よ。 |
訓 |
和名アザミ及び漢名薊(ケイ,jì)の語源については、アザミ属の訓を見よ。
漢名大薊(タイケイ,dàjì)については、アザミ属の誌を見よ。
ヤユバキ・マユツクリは、花の形を 化粧に用いる眉刷毛に擬えて。 |
説 |
種としては、北海道・本州・四国・九州・臺灣・福建・浙江・江西・江蘇・山東・河北・内蒙古・陝西・兩湖・兩廣・四川・貴州・雲南・ベトナムに分布。
var. japonicum は、北海道・本州・四国・九州・臺灣に分布。
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初夏にさく、唯一のアザミ。夏には、丈1-2mに伸長する。
雌性両全性異株、雌性株は少ない(西日本に多い)。 |
誌 |
中国では、ノアザミなどの全草・根を大薊(タイケイ,dàjì)と呼び薬用にする(〇印は正品)。 『全國中草藥匯編 上』pp.67-69 『(修訂) 中葯志』IV/1-10
Cirsium chlorolepsis(兩面刺・靑刺薊・滇大薊・白馬刺)
〇ノアザミ Cirsium japonicum(薊・大薊・將軍草・老虎脷・山蘿蔔)
カラノアザミ subsp. maackii(C.maackii;大薊・野薊・刺薊菜)
Cirsium chlorolepsis(兩面刺・靑刺薊・滇大薊・白馬刺)
Cirsium eriophoreoides(C.bolocephalum;貢山薊・大刺兒菜・藏大薊)
タカアザミ Cirsium pendulum(煙管薊)
アレチアザミ Cirium segetum(刺兒菜・小薊・野紅花・大小薊)
ヤマアザミ Cirsium spicatum(虎薊)
ヒレアザミ Carduus crispus(飛廉・絲毛飛廉)
ウナズキヒレアザミ Carduus nutans (飛廉・麝香飛廉)
オニヒレアザミ Olgaea lomonossowii(Takeikadzuchia lomonossowii;蝟菊)
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日本では、昔から庭に植栽し、また生け花に用い、ハナアザミとも呼ぶ。
『増補地錦抄』(1710)は、花の色が白・紅・薄紫・濃い紫などの、また大輪の品種を記載する。 昭和初期以来、花屋でドイツアザミの名で売られているものはこれであり、ドイツ国とは無関係。 |
野薊に触(さは)れば指(おゆび)やや痛し汐見てあればすこし眼痛し (北原白秋『桐の花』1913)
どくだみも薊の花も焼けゐたり人葬所(ひとはふりど)の天(あめ)明けぬれば
(斎藤茂吉「死にたまふ母」(1913)より。『赤光』所収)
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