辨 |
和名をアオイ・漢名を葵(キ,kuí)という植物については、あおいを見よ。 |
カンアオイ属 Asarum(細辛 xìxīn 屬)については、カンアオイ属を見よ。 |
訓 |
和名のふたばとは、二枚の葉が互生することから。 |
小野蘭山『本草綱目啓蒙』9(1806)細辛の条に、「加茂あふひは古歌に モロハグサ フタバグサ カザシグサ ヒカゲグサ カタミグサ モロカヅラトモ云、是ハ双葉細辛ナリ」と。 |
説 |
本州(中部以西)・四国・九州・陝甘・浙江・湖北・四川・貴州に分布。 |
誌 |
京都では北山などに自生し、賀茂神社・松尾大社の神事に用いられ、5月の賀茂神社の祭は葵祭と呼ばれる。 |
『八代集』に、
ゆきかへる やそうぢ人の 玉かづら かけてぞたのむ あふひてふ名を
(よみ人しらず「かものまつりの物見侍ける女の車にいひいれて侍ける」、
『後撰集』。「葵」と「逢ふ日」とをかける)
ゆふだすき かけてもいふな あだ人の あふひてふなは みそぎにぞせし
(よみ人しらず「返し」、『後撰集』)
あしひきの 山におふてふ もろかづら もろともにこそ いらまほしけれ
(よみ人しらず、『後撰集』)
清少納言『枕草子』第66段「草は」に、「あふひ(葵)、いとをかし。神代よりして、さるかざしとなりけん、いみじうめでたし。もののさまもいとをかし」と。
西行(1118-1190)『山家集』に、
むらさきの 色なき比(ころ)の 野べなれや かたまつり(片祭)にて かけぬあふひは
(齋院おはしまさぬ比にて、まつりのかへ(帰)さもなかりければ、
むらさきの(紫野)もとほ(廻)るとて)
『新古今集』に、
いかなればそのかみ山のあふひ草としはふれ共二葉なるらん (小侍従)
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江戸幕府の徳川家は、三河国加茂の出であることから、京の賀茂にあやかりフタバアオイを紋所にした。ただし、双葉葵では不敬ということから、実在しない三つ葉葵にした、という。 |
中国では、全草を薬用にする。『全國中草藥匯編 上』p.43 中国の細辛・日本のサイシンについては、カンアオイを見よ。 |