辨 |
種子から菜種油を採るために栽培するナタネ(アブラナ)には、二種がある。
和名 |
別名 |
漢名 |
英名 |
学名 |
アブラナ |
ナタネ(菜種; 在来菜種)、ナタネナ、アカタネ(赤種)、クキタチ(茎立) |
油菜・菜薹 |
Chinese colza |
B. rapa
(B.campestris) |
セイヨウアブラナ |
ナタネ(菜種; 洋種菜種)、クロタネ(黒種) |
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Rape colza |
B. napus |
アブラナは、古くから東アジアで栽培してきたもの(在来菜種)、セイヨウアブラナは19世紀以降ヨーロッパから導入されたもの(洋種菜種)。
在来種は、種子が黄褐色なので赤種と言い、洋種は黒褐色なので黒種と言う。在来種は葉が軟らかく淡緑色で、白い蝋質がなく、嫩茎嫩葉を食用にするので茎立と言う。洋種は、葉が厚く白い蝋質をかぶり、茎葉は食えない。 |
セイヨウアブラナには、次のような変種・品種がある。
ノラボウ(野良坊) 旧武蔵国のうち関東山地沿いの農村で江戸時代から栽培、嫩茎を食用
スウェーデンカブ(カブカンラン) var. napobrassica(B.napobrassica,B.napus;
蕪菁甘藍・洋大頭菜・洋蔓菁・布留克・芥菜疙瘩・洋疙瘩・水芥;
E.Swede, Swedish rape, Russian turnip, Rutabaga)
var. pabulavia(B.fimbriata; E.Siberian kale, Hanover salad, Winter rape)
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アブラナ属 Brassica(蕓薹 yúntái 屬)の植物については、アブラナ属を見よ。 |
訓 |
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説 |
B. campestris と B. oleracea の間の複二倍体に由来、野生種はヨーロッパ海岸の砂浜に分布。
油料作物として世界に広がり、各地で野生化している。
日本には、明治初期にヨーロッパから導入。今では北海道・本州で河原や線路沿いに野生化している。 |
「茎は粉白緑色で、無毛あるいは下部に短い単純毛がある。茎は直立して、高さ20-150cm、丈夫で分枝する。葉は波状鋸葉縁で、脈上に毛を散生する。ロゼット葉はないこともあるが、有柄で羽状に分裂して頂裂片は大型。下方の茎葉は有柄で、柄の基部が広がって茎を抱く。中部の茎葉は長楕円形~披針形、無柄で基部は広がって丸みのある耳状部となり、やや茎を抱く。上方のものは無柄で、茎を抱かない。
花期は春。萼は開花時にはほとんど直立して花瓣の爪部に圧着し、萼片は長楕円形、長さ6-10mm、緑色~黄色。花瓣は鮮黄色、狭卵形で、長さ10-18mm、舷部は平開し、円頭、爪部は明らかで直立する。
長角果は斜上または開出する長さ1-3mmの果柄につき、長さ5-10cmで、斜上する。・・・」(『日本の帰化植物』) |
誌 |
日本古来のいわゆる菜の花は アブラナの花。むかしは、菜種油を採るために広く栽培していたが、明治以降、油菜としての役割をセイヨウアブラナに譲った。今日では、在来のアブラナは、京野菜(菜の花漬けやくくだち)として細々と残っているのみという。
したがって、明治以降の詩歌に詠われる菜の花は、セイヨウアブラナであると考えて間違いない、という。
菜の花に汐さし上る小川かな (河東碧梧桐,1873-1937)
菜の花畠に 入日薄れ、
見渡す山の端 霞深し。
春風そよふく 空を見れば、
夕月かかりて におい淡し。・・・
文部省唱歌「朧月夜」(高野辰之助作詞; 1914))
いちめんのなのはな
いちめんのなのはな
いちめんのなのはな
いちめんのなのはな
・・・
(山村暮鳥「風景 純銀もざいく」、『聖三稜玻璃』1915)
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