やまぶき (山吹) 

学名  Kerria japonica
日本名  ヤマブキ
科名(日本名)  バラ科
  日本語別名  オモカゲグサ、カガミグサ
漢名  棣棠(テイトウ,ditang)
科名(漢名)  薔薇(ショウビ,qiangwei)科
  漢語別名  土黃 條(ドコウジョウ,tuhuangtiao)
英名  Japanese rose, Kerria
2009/04/20 福島市岡部
2007/04/29 神代植物公園
2005/04/16 野川公園
2007/06/02 調布市
2006/12/14 小平市

 次のような品種がある。
   ヤエヤマブキ f. plena
   キクザキヤマブキ f. stellata
   シロバナヤマブキ f. albescens 
 ヤマブキ属 Kerria(棣棠花屬)は、この一属一種。
 シロヤマブキは別属。
 バラ科 Rosaceae(薔薇科) バラ亜科 Rosoideae(薔薇亞科)については、バラ亜科を見よ。
 和名は、その細い枝が風に揺られるので山振といわれたものの、転訛。
 ときにヤマブキを漢字で款冬と書くことがあるが、これは山蕗の漢名、ヤマブキ違い。
 源順『倭名類聚抄』(ca.934)に、蕗は「和名布々木」、款冬は「和名夜末不々木、一云夜末不木。万葉集云山吹花」と。
 属名 Kerria は、一説に イギリスの植物学者カー William Kerr(?-1814)に因む。
 東アジアに分布。
 『万葉集』19/4185;4186に、大伴家持「詠山振(やまぶき)花歌一首」が載り、庭に植えた山吹を詠う。

   うつせみは 恋を繁みと 春まけて 念ひ繁けば
   引き攀ぢて 折りも折らずも 見る毎に 情
(こころ)なぎむと
   繁山の 谿べに生ふる 山振を 屋戸に引き殖ゑて
   朝露に にほへる花を 見る毎に 念ひは止まず 恋し繁しも
     反歌
   山吹を 屋戸に殖ゑては 見るごとに 念ひは止まず 恋こそ益れ

 20/4302;4303 には、宴会で山吹を余興にした様子を歌う。

 (天平勝宝6年)三月十九日、家持の庄(たどころ)の門の槻(つき)の樹の下に
     宴飲する歌二首 
やまぶきは な(撫)でつつおほ(生)さむ ありつつも
     きみ
(君)(来)ましつつ かざ(挿頭)したりけり
  右一首、置始連長谷(おきそめのむらじはつせ)
わがせこ(背子)が やど(宿)のやまぶき さ(咲)きてあらば
     や
(止)まずかよ(通)はむ いやとしのは(毎年)
  右一首、長谷 花を攀じ、壷を提げて到来る。是に因りて、
     大伴宿禰家持 此の歌を作り、之に和す。

 『万葉集』に詠われるヤマブキの歌17首のうち、11首が大伴家持が歌い或いは大伴家持の周辺で歌われたもの。それら以外では、

   かはづ鳴く かむなび河に かげ見えて 今か開くらむ 山振の花
(8/1435,厚見王)
   山振の 立ち儀(よそ)ひたる 山清水 酌みに行かめど 道のしらなく
      
(2/158,高市皇子)
   かくしあらば 何か殖ゑけむ 山振の 止む時もなく 恋ふらく念へば
      
(10/1907,読人知らず)
   山振の にほへる妹が はねず色の 赤裳のすがた 夢に見えつつ
(11/2785,読人知らず)
 
 橘諸兄(684-757)は、山城の国井出の里玉川のほとりに邸宅を営んだが、その庭にヤマブキを多数植えた。天平12年(740)には聖武天皇が御幸するなど、井出の玉川はヤマブキの名所として、後世まで有名であった。
 『八代集』に、

   いまもかも さきにほふなむ たち花の こじまのさきの 山吹の花
   春雨に にほへる色も あかなくに かさへなつかし 山ぶきの花
   山ぶきは あややなさきそ 花みんと うへけんきみが こよひこなくに
   かはづなく ゐでの山吹 ちりにけり 花のさかりに あはましものを
     
(よみ人しらず、『古今和歌集』)
   吉野河 岸の山吹 ふく風に そこの影さへ うつろひにけり
     
(紀貫之、『古今和歌集』)
   山吹の 花色衣 ぬしやたれ とへどこたへず くちなしにして
     
(素性法師、『古今和歌集』)

 『亭子院歌合』(913.3.13)に、

  春ふかき 色はなけれど 山吹の 花の心を まづぞ染めつる
 (凡河内躬恒)
  風吹けば おもほゆるかな 山ぶきの 岸の藤浪 今や咲くらん
 (兼覧王)
  吹く風に とまりもあへず 散る時は 八重山吹の はなもかひなし
 (藤原興風)

 『八代集』などに、

   わがきたる ひとへ衣は やまぶきの やへのいろにも おとらざりけり
     
(藤原兼輔弼、『後撰和歌集』)
   岩ねこす 清瀧川の はやければ 浪をりかくる 岸の山吹
     
(源国信、『新古今和歌集』)
   駒とめて 猶水かはん 山ぶきの 花の露そふ ゐでの玉川
      (藤原俊成、『新古今和歌集』)

 西行
(1118-1190)『山家集』に、

   きし
(岸)ちか(近)み うゑけん人ぞ うらめしき なみ(浪)に折らるる 山ぶきのはな
   山ぶきの はなさくさと
(里)に なりぬれば こゝにもいで(井出)と おもほゆる哉
   やまぶきの はなさく井での さと
(里)こそは やし(安)うゐたりと おもはざらなん
     
(拾遺に、山ぶきを寄す)
 
 太田道灌(1432-1486)に纏わる有名な伝説については、ヤエヤマブキの項を見よ。 
 『花壇地錦抄』(1695)巻三「山椒(さんせう)るひ」に、「酴醿(やまふき) 花黄色、せんやうとひとへあり。小てまりの木のやうにしだるる物也。・・・酴醿(やまふき)ハ立花ニ上ミにつかふよし」と。ただし、酴醿は キイチゴ属 Rubus(懸鈎子屬)のトキンイバラ(ボタンイバラ) R.commersonii (酴醿・酴蘼・荼蘼,トビ,tumi)であり、当らない。 

   ほろほろと山吹ちるか瀧の音 
(芭蕉,1644-1694。吉野の川上にて)
   山吹や宇治の焙炉
(ほいろ)の匂ふ時 (同,『猿蓑』1691)
   山吹や笠に指べき枝の形
(な)り (同)
 

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