しきみ (樒) 

学名  Illicium anisatum (I.religiosum, I.japonicum)
日本名  シキミ
科名(日本名)  マツブサ科
  日本語別名  ハナノキ・ハナシバ、コウノキ・コウシバ・マッコウギ、ブツゼンソウ
漢名  日本莽草(ニホンボウソウ,rìběn măngcăo)
科名(漢名)  五味子(ゴミシ,wŭwèizĭ)科
  漢語別名  東毒茴(トウトクカイ,dōngdúhuí)、大毒茴(タイトクカイ,dàdúhuí)、
 毒八角(トクハッカク,dúbājiăo)、莽草(ボウソウ,măngcăo)
英名  Japanese anise tree
2023/03/15 神代植物公園 
2013/03/20 小石川植物園 

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2007/03/29 神代植物公園

2024/04/11 同上 2024/05/02 同左
2005/08/11 薬用植物園 

 マツブサ科 Schisandraceae(五味子 wŭwèizĭ 科)については、マツブサ科を見よ。
 シキミ属 Illicium(八角 bājiăo 屬)には、約40種がある。

  シキミ I. anisatum(I.religiosum, I.japonicum;
         日本莽草・東毒茴・毒八角・日本大茴香)『全國中草藥匯編 上』p.391
    ウスベニシキミ f. roseum
花の色は淡紅色
    オキナワシキミ var. masa-ogatae
一説に変種として区別しがたいという
  アカバナシキミ I. arborescens(臺灣八角・紅花八角・碗龍仔)
 臺灣産
  I. brevistylum(短柱八角)
湖南・兩廣・雲南産
  ホソバシキミ I. daibuensis(I.arborescens var.oblongum;大武八角・恒春八角)
         
臺灣産
  I. difengpi(地楓・血楓皮)
 廣西産 『中国本草図録』Ⅱ/0568 
         『(修訂) 中葯志』V/380-387 『全国中草葯匯編』下/232-233
  I. henryi(紅茴香・八角茴樹)
 河南・陝甘・安徽・江西・福建・兩湖・兩廣・四川・貴州・雲南産
         『中国本草図録』Ⅳ/1640 『全國中草藥匯編 上』pp.390-391
    var. mulsistamineum(多蕊紅茴香)
  I. jiadifengpi(假地楓皮)
浙江産
  I. lanceolatum(紅毒茴・披針葉茴香・狹葉茴香・莽草・山木蟹・木蟹柴・山大茴)
        
 『中国本草図録』Ⅹ/4598
  I. macranthum(大花八角) 雲南産 『全国中草葯匯編』下/232-233
  I. majus(大八角・假八角・野八角・神仙果) 湖南・兩廣・貴州・雲南・インドシナ産
         『中国本草図録』Ⅹ/4599 『全国中草葯匯編』下/232-233
  シロバナシキミ I. philippinense(白花八角)
臺灣・フィリピン産
  I. simonsii(野八角・土八角・川茴香)
         
 四川・貴州・ヒマラヤ産 『雲南の植物Ⅱ』48・『中国本草図録』Ⅴ/2101
  ヤエヤマシキミ I. tashiroi(I.anisatum var.tashiroi;巒大八角)
琉球・臺灣産
  トウシキミ I. verum(八角・八角茴香・大茴香;E.star-anise)
        
『中国本草図録』Ⅰ/0069・『雲南の植物Ⅲ』41 
   
 しばしばトウシキミとシキミとを混同するが、誤り。トウシキミ(八角,はっかく)は有名な香辛料だが、シキミには猛毒がある。
 漢名を樒(ミツ,mì)というものはジンコウ Aquilaria agallocha、熱帯アジアに産するジンチョウゲ科の香木、別名は密香樹。
 したがって、日本では樒をしきみと読んでシキミを表すものとするが、誤り。
 『本草和名』莽草に、「和名之岐美乃木」と。
 『延喜式』■草に、「シキミ」と。
 『倭名類聚抄』に、樒は「漢語抄云之岐美」と、莽草は「和名本草云、之木美」と。
 小野蘭山『本草綱目啓蒙』13 莽草に、「シキミ
和名鈔 ハナ江戸 ハナシバ筑前 ハナノキ播州雲州 カウシバ遠州 カウノキ同上 葉花和方書 香葉同上 仏前草和方書葉末」と。

 莽草がシキミであることについて、『全国中草薬匯編』
上 p.391参照。
 本州(宮城県以南)・四国・九州・沖縄・朝鮮最南部に分布。
 全木にアニサチン anisatine という痙攣性の神経毒を含む。ことに果実は毒性が強く、誤って食うと死ぬことがある。
 中国では、同属の次の植物の樹皮を地楓皮(チフウヒ,dìfēngpí)と呼び薬用にする(〇印は正品)。 
    
『(修訂) 中葯志』V/380-387 『全国中草葯匯編』下/232-233

  〇I. difengpi(地楓・血楓皮)
   I. jiadifengpi(假地楓皮)
   I. macranthum(大花八角)
   I. majus(大八角・假八角・野八角・神仙果)
    
 古代には、神事・仏事にさかきとして用いられたが、中世以降は、(一部を除いて)、仏事、ことには葬式に用いられ、しばしば墓場などに植えられる。
 『万葉集』に、

   おくやま
(奥山)の しきみがはな(花)の な(名)のごとや
     しくしくきみ
(君)に こ(恋)ひわたりなむ (20/4476,大原真人今城)
 
 西行(1118-1190)『山家集』に、

   しきみお
(置)く あか(閼伽)のをしき(折敷)の ふち(縁)なくば
      何にあられ
(霰)の 玉とち(散)らまし
       
(はなまゐらせけるをりしも、をしきにあられのちりけるを)
 

   野とゝもに焼る地蔵のしきみ哉 
(蕪村,1716-1783)
 

2006/02/22 跡見学園女子大学新座キャンパス
2008/03/21 同上

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