辨 |
マツブサ科 Schisandraceae(五味子 wŭwèizĭ 科)については、マツブサ科を見よ。 |
シキミ属 Illicium(八角 bājiăo 屬)には、約40種がある。
シキミ I. anisatum(I.religiosum, I.japonicum;
日本莽草・東毒茴・毒八角・日本大茴香)『全國中草藥匯編 上』p.391
ウスベニシキミ f. roseum 花の色は淡紅色
オキナワシキミ var. masa-ogatae 一説に変種として区別しがたいという
アカバナシキミ I. arborescens(臺灣八角・紅花八角・碗龍仔) 臺灣産
I. brevistylum(短柱八角) 湖南・兩廣・雲南産
ホソバシキミ I. daibuensis(I.arborescens var.oblongum;大武八角・恒春八角)
臺灣産
I. difengpi(地楓・血楓皮) 廣西産 『中国本草図録』Ⅱ/0568
『(修訂) 中葯志』V/380-387 『全国中草葯匯編』下/232-233
I. henryi(紅茴香・八角茴樹) 河南・陝甘・安徽・江西・福建・兩湖・兩廣・四川・貴州・雲南産
『中国本草図録』Ⅳ/1640 『全國中草藥匯編 上』pp.390-391
var. mulsistamineum(多蕊紅茴香)
I. jiadifengpi(假地楓皮) 浙江産
I. lanceolatum(紅毒茴・披針葉茴香・狹葉茴香・莽草・山木蟹・木蟹柴・山大茴)
『中国本草図録』Ⅹ/4598
I. macranthum(大花八角) 雲南産 『全国中草葯匯編』下/232-233
I. majus(大八角・假八角・野八角・神仙果) 湖南・兩廣・貴州・雲南・インドシナ産
『中国本草図録』Ⅹ/4599 『全国中草葯匯編』下/232-233
シロバナシキミ I. philippinense(白花八角) 臺灣・フィリピン産
I. simonsii(野八角・土八角・川茴香)
四川・貴州・ヒマラヤ産 『雲南の植物Ⅱ』48・『中国本草図録』Ⅴ/2101
ヤエヤマシキミ I. tashiroi(I.anisatum var.tashiroi;巒大八角) 琉球・臺灣産
トウシキミ I. verum(八角・八角茴香・大茴香;E.star-anise)
『中国本草図録』Ⅰ/0069・『雲南の植物Ⅲ』41
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しばしばトウシキミとシキミとを混同するが、誤り。トウシキミ(八角,はっかく)は有名な香辛料だが、シキミには猛毒がある。 |
訓 |
漢名を樒(ミツ,mì)というものはジンコウ Aquilaria agallocha、熱帯アジアに産するジンチョウゲ科の香木、別名は密香樹。
したがって、日本では樒をしきみと読んでシキミを表すものとするが、誤り。 |
『本草和名』莽草に、「和名之岐美乃木」と。
『延喜式』■草に、「シキミ」と。
『倭名類聚抄』に、樒は「漢語抄云之岐美」と、莽草は「和名本草云、之木美」と。
小野蘭山『本草綱目啓蒙』13 莽草に、「シキミ和名鈔 ハナ江戸 ハナシバ筑前 ハナノキ播州雲州 カウシバ遠州 カウノキ同上 葉花和方書 香葉同上 仏前草和方書葉末」と。
莽草がシキミであることについて、『全国中草薬匯編』上 p.391参照。 |
説 |
本州(宮城県以南)・四国・九州・沖縄・朝鮮最南部に分布。
全木にアニサチン anisatine という痙攣性の神経毒を含む。ことに果実は毒性が強く、誤って食うと死ぬことがある。 |
誌 |
中国では、同属の次の植物の樹皮を地楓皮(チフウヒ,dìfēngpí)と呼び薬用にする(〇印は正品)。
『(修訂) 中葯志』V/380-387 『全国中草葯匯編』下/232-233
〇I. difengpi(地楓・血楓皮)
I. jiadifengpi(假地楓皮)
I. macranthum(大花八角)
I. majus(大八角・假八角・野八角・神仙果)
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古代には、神事・仏事にさかきとして用いられたが、中世以降は、(一部を除いて)、仏事、ことには葬式に用いられ、しばしば墓場などに植えられる。 |
『万葉集』に、
おくやま(奥山)の しきみがはな(花)の な(名)のごとや
しくしくきみ(君)に こ(恋)ひわたりなむ (20/4476,大原真人今城)
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西行(1118-1190)『山家集』に、
しきみお(置)く あか(閼伽)のをしき(折敷)の ふち(縁)なくば
何にあられ(霰)の 玉とち(散)らまし
(はなまゐらせけるをりしも、をしきにあられのちりけるを)
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野とゝもに焼る地蔵のしきみ哉 (蕪村,1716-1783)
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