辨 |
ナツツバキ属 Stewartia(紫莖 zĭjīng 屬)には、東アジア・USA東部に約20種がある。
S. calcicola(Hartia yunnanensis;雲南折柄茶・雲南舟柄茶) 廣西・雲南産
コウライシャラノキ S. koreana(S.pseudocamellia var.koreana)
ヒメシャラ S. monadelpha
トチュウシャラノキ f. sericea
ナツツバキ(シャラノキ) S. pseudocamellia
S. pteropetiolata(Hartia sinensis;折柄茶・舟柄茶) 雲南産
S. rubiginosa(紅皮紫莖) 湖南・廣東産
ヒコサンヒメシャラ S. serrata(f.epitricha, S.epitricha, S.sericea)
本州(丹沢山地以西)・四国・九州・済州島産
トウゴクヒメシャラ f. sericea
S. sinensis(S.gemmata;紫莖) 安徽・浙江・江西・湖北・四川産
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ツバキ科 Theaceae(山茶 shānchá 科)については、ツバキ科を見よ。 |
訓 |
和名ナツツバキは、6-7月にツバキに似た白い花を咲かせるところから。シロバナナツツバキと呼ばれることがある。
シャラノキの称謂は、日本でこの木を、仏教経典に出る娑羅双樹(シャラソウジュ・サラソウジュ)と間違えたことから。『和漢三才図会』(1712)。
サルスベリの別名は、樹幹が滑らかなことから。ただし、標準和名をサルスベリと言うものは別種。 |
説 |
本州(福島以西)・四国・九州・済州島に分布。
日本では、本種を沙羅双樹と誤認したことから、しばしば寺院に植えられている。 |
誌 |
『花壇地錦抄』(1695)巻三「辛夷(こぶし)のるひ」に、「しやら双じゆ 葉ハ榎ニにて、花白く、大りん。つばき花形なり。花ハ一日也。朝 咲たる花、夕ニしぼむ。其次の花、明日又咲て段々也」と。 |
いにしへも今のうつつも悲しくて沙羅雙樹のはな散りにけるかも
白たへの沙羅の木(こ)の花くもり日のしづかなる庭に散りしきにけり
(1925,斎藤茂吉『ともしび』)
沙羅の花ここに散りたり夕ぐれの光ののこる白砂(しろすな)のうへ
(1930円通寺にて,斎藤茂吉『たかはら』)
沙羅雙樹芽ぶかむとする山のうへに一日(ひとひ)を居りていにしへおもほゆ
(1933,斎藤茂吉『白桃』)
また立ちかへる水無月の
歎きをたれにかたるべき。
沙羅のみづ枝に花さけば、
かなしき人の目ぞ見ゆる。
芥川龍之介「相聞三」(1925)
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