辨 |
フヨウ属 Hibiscus(木槿 mùjĭn 屬)の植物については、フヨウ属を見よ。 |
訓 |
「和名ハ木槿ノ音ニ基ク」(『牧野日本植物図鑑』)。 |
源順『倭名類聚抄』(ca.934)蕣に、「和名木波知春」と。
小野蘭山『本草綱目啓蒙』(1806)32に、「木槿 アサガホ万葉集 ユウカゲグサ古歌 シノゝメグサ同上 ムクゲ京、木槿ノ音転 キハチス和名鈔、奥州 ハチス東国 キバチ奥州常州 モクゲ佐州雲州 モツキ総州常州 カキツバキ奥州 ボンデンクハ薩州 ボデンクハ九州」と。 |
英名の一、Rose of Sharon「シャロンのばら」は、『旧約聖書』雅歌2/1 に、
わたしはシャロンのばら、野のゆり。
I am the rose of Sharon, and the lily of the valleys.
とあるのに因む。シャロンは、イスラエルの地中海沿岸、カイザリヤからヨッパにかけての海岸平野。
また、英名 Syrian hibiscus 、種小名 syriacus は、シリアに因む。
しかしいずれにせよ、ヨーロッパから見て東方に起源することを示すのみで、真の原産地とは無縁。
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説 |
中国中南部原産。
多数の観賞用品種がある。全世界の熱帯・亜熱帯で、庭木としてまた生垣として、観賞用によく栽培する。 |
誌 |
茎の皮から繊維を取り、紙を造る。花の白いものは蔬菜とする。 |
中国では、花を木槿花(ボクキンカ,mùjĭnhuā)と呼び、茎皮・根皮を木槿皮(ボクキンヒ,mùjĭnpí)と呼び、果実を朝天子(チョウテンシ,cháotiānzĭ)と呼び、いずれも薬用にする。『中薬志Ⅲ』pp.312-134 『全國中草藥匯編 上』pp.178-179 『(修訂) 中葯志』V/187-190 |
中国では、一つ一つの花が朝さいて夕べに凋むところから、はかないもの・移ろいやすいものの象徴。
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『礼記』「月令」五月に、「半夏(はんげ、カラスビシャク)生じ、木菫 榮(はなさ)く」と。 |
『爾雅』釋草に「椴(タン,duan)、木槿。櫬(シン,qin)、木槿」とあり、その郭璞注に「別二名也。似李樹華、朝生夕隕、可食。或呼日及、亦曰王蒸」と。 |
朝鮮では、ムクゲは 夏から秋にかけて 次から次へと花をつけ続けるところから、無窮花 mugunghwa と呼んで粘り強いものの象徴。
槿域(ムクゲの花さく地)は朝鮮の代名詞、また ムクゲは今日の韓国の国花。 |
日本では、むかし「あさがお」と呼んだ。アサガオを見よ。 |
安土桃山時代には、茶花として利用されていた。 |
道のべの木槿は馬にくはれけり (「馬上の吟」、芭蕉『野ざらし紀行』1684)
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