辨 |
スモモ属 Prunus(李 lĭ 屬)については、スモモ属を見よ。 |
訓 |
ギリシア・ローマで amygdala と呼ばれ、イスラム世界では これに定冠詞 al をつけて呼ばれた。近代ヨーロッパ語の名は、いずれもこれが訛ったもの。 |
和名のアメンドウは、ポルトガル語の amendoa から、アーモンドは 英語の almond から。
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小野蘭山『本草綱目啓蒙』25(1806)巴旦杏に、「アメンドウ アメンドウス」と。 |
漢名の扁桃は、歴史的には、モモの一品種で 平べったい実をつける蟠桃(ハントウ, pántáo) Prunus persica var. platycarpa の別名、巴旦杏はスモモ Prunus salicana の一種を指す。 |
説 |
西アジア原産。有史以前に地中海地域に伝えられ、栽培されてきた。
日本には、明治時代にアメンドウ・扁桃などの名で移入されたが、一部で栽培されるのみ。 |
誌 |
果実の核の中の仁を利用し、甘いもの(甜味扁桃, sweet almond)は食用、苦いもの(苦味扁桃, bitter almond)は薬用(苦杏仁)にする。 |
日本には、近世初期に渡来。
『花壇地錦抄』(1695)巻二「桃のるひ」に、「あめんたう 葉ほそく長クやなぎのごとく、今は中絶してなし」、「大坂桃(あふさかもゝ) 是を今世間にてあめんたうといふ。葉ほそ長ク、木しかミて、花もゝいろ、大りん」と。 |
『旧約聖書』民数記1716-23に、「主はモーセに仰せになった。イスラエルの人々にこう告げなさい。彼らのうちから、父祖の家ごとに杖を一本ずつ取りなさい。すなわち・・・十二本の杖を取り、その杖におのおのの名前を書き記し、レビの杖にはアロンの名を記しなさい。・・・それを、わたしがあなたたちと出会う臨在の幕屋の中の掟の箱の前に置きなさい。わたしの選ぶ者の杖は芽を吹くであろう。・・・明くる日、モーセが掟の幕屋に入って行き、見ると、レビの家のアロンの杖が芽を吹き、つぼみを付け、花を咲かせ、アーモンドの実を結んでいた」と。 |
中世ドイツのミンネゼンガーであるタンホイザーにまつわる伝説の中で、懺悔するタンホイザーを許さない教皇ウルバヌス4世は、彼にアーモンドの枯枝で作った杖を渡し、「この杖に花が咲いたならお前の罪は許されるであろう」と宣告するが、神の恩寵により罪を許されたタンホイザーの杖には、アーモンドの花が開いたのであった(ワーグナー作詞作曲、楽劇『タンホイザー』)。 |