東京・埼玉の同県境を流れる荒川の河川敷は、もとは湿生植物の宝庫だった。夏は一面の葦原となるが、ヨシが芽生える前、サクラソウ・ノウルシをはじめ、アマナ・ジロボウエンゴサク・ツボスミレ・シロバナタンポポ・ヒキノカサなど、春の花が一斉に花を開く。ことにサクラソウのあでやかさは、江戸時代から多くの人々により愛せられてきた。
ここ田島ケ原は、そのようなもと荒川河川敷の一部。サクラソウの自生地として、約4.1haが 1920(大正9)年 国の天然記念物に、1952(昭和27)年には特別天然記念物に指定された。爾来、荒川べりの原野がほとんど失われてしまった中で、唯一往昔の姿を今日に保っている。 |