『万葉集』中、マコモをよむ歌
→マコモ
長歌
・・・ 夏麻(なつそ)引く 命かたまけ か(苅)り薦の 心もしのに ・・・
(13/3255,読人知らず)
刺し焼かむ 小屋のしこ屋に 掻き捨てむ 破薦敷きて
うち折れむ しこのしこ手を 指し易えて 宿(ね)らむ君ゆゑ ・・・
(13/3270,読人知らず)
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短歌
三島江の 玉江の薦(こも)を 標(し)めしより 己がとそ念ふ 未だ刈らねど
(7/1348,読人知らず)
三嶋江の 入江の薦を 苅りにこそ 吾をばきみは 念ひたりけれ (11/2766,読人知らず)
真薦(まこも)苅る 大野川原の 水隠(みごも)りに 恋ひ来(こ)し妹が 紐解く吾は
(11/2703,読人知らず)
苅薦(かりこも)の 一重を敷きて さぬ(寝)れど も君としぬ(寝)れば 冷(さむ)けくもなし
(11/2520,読人知らず。或は「冷(すず)しくもなし」)
薦枕 相まきし児も 在らばこそ 夜の深(ふ)くらくも 吾が惜しみせめ (7/1414,読人知らず)
独り寝と 茭朽ちめやも 綾席(あやむしろ) 緒に成るまでに 君をし待たむ
(11/2538,読人知らず)
食薦(すこも)敷き 蔓菁(あをな)煮もち来 樑(うつはり)に
行騰(むかばき)懸けて 息(やす)む此の公(きみ) (16/3825,読人知らず)
畳薦(たたみこも) 隔て編む数 通はさば 道の柴草 生ひざらましを (11/2777,読人知らず)
あふよしの 出で来るまでに 畳薦 重ね編む数 夢にし見えむ
(11/2885,読人知らず)
何所にそ 真朱(まそほ)穿(ほ)る岳(をか) 薦畳 平群のあそ(朝臣)が 鼻の上を穿れ
(16/3843,穂積朝臣。ソホは赤土)
たたみけめ(畳薦) 牟良自(むらじ)がいそ(磯)の はなりそ(離磯)の
はは(母)をはなれて ゆ(行)くがかな(悲)しさ (20/4338,助丁生部道麿)
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枕詞「刈薦(かりこも)の」(刈ったコモは乱れやすいことから、「乱れ」にかかる)
飼飯(けひ)の 海の庭好くあるらし 刈薦の 乱れ出づ見ゆ 海人の釣船
(3/256,柿本人麻呂)
吾が聞きに かけてな言ひそ 刈薦の 乱れて思ふ 君が直香(ただか)そ
(4/697,大伴像見)
妹が為め 寿(いのち)遺せり 刈薦の 念(おも)ひ乱れて 死ぬべきものを
(11/2764,読人知らず)
吾妹子に 恋ひつつあらずは 刈薦の 思ひ乱れて 死ぬべきものを (11/2864,読人知らず)
草枕 羈(たび)にし居れば 苅薦の みだれて妹に 恋ひぬ日は無し (12/3176,読人知らず)
みやこ辺に ゆかむ船もが かりこもの みだれておもふ ことつ(告)げやらむ
(15/3640,羽栗)
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枕詞「水薦(みこも)刈る」(信濃国には 薦が生えている湖が多いことから、信濃にかかる)
水薦刈る信濃の真弓吾が引かばうま人さびていなと言はむかも
水薦刈る信濃の真弓引かずして弦(を)はくる行事(わざ)を知るとは言はなくに
(2/96;97, 久米禅師及び石川郎女の贈答歌)
この「水薦刈」三字を、羽倉信名『万葉集童蒙抄』は「みすずかる」と訓んだ。また賀茂真淵は、「水薦刈」は「水篶刈(みすずかる)」の誤字とした。
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それでは、このミスズとは何を指すかについて、有力な説は三つ。
スズタケ Sasamorpha borealis
ネマガリダケ(チシマザサ) Sasa kurilensis
チマキザサ Sasa palmata
東北ではネマガリダケをスズタケと呼び、信州ではチマキザサをスズタケと呼ぶという。 |
後には、「みすずかる」は信濃にかかる枕詞として定着し、今日に至る。 |
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枕詞「弱薦(わかこも)を」(「かる」にかかる)
やすみしし 吾が大王(おおきみ) 高照らす 吾が日の皇子(みこ)の
馬並めて みかり立たせる 弱薦を かり(狩)路の小野に ・・・
(3/239,柿本人麻呂)
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