辨 |
Erigeron acris には、次のような種内分類群がある。
エゾムカシヨモギ var. acris(var.foliosus;飛蓬・蓬・轉蓬) 広く北半球の温帯に産
ヒロハムカシヨモギ var. amplifolius 北海道・東北産
ムカシヨモギ(マンシュウムカシヨモギ) var. kamtschaticus(E.kamtschaticus,
E.manshuricus, E.elongatus var.manshuricus, E.sachalinensis,
E.acris subsp.kamtschaticus;堪察加飛蓬)
本州中部以北・北海道・朝鮮・華北・陝西・吉林・極東ロシア・アラスカ・カナダに産
ホソバムカシヨモギ var. linearifolius(E.koidzumii) 本州・四国産
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アズマギク属(ムカシヨモギ属) Erigeron(飛蓬 fēipéng 屬)については、アズマギク属を見よ。 |
訓 |
漢名の飛蓬(ヒホウ,fēipéng)は、強風が吹くと根から抜けて、株全体が地上をころころと転がることから。転蓬(テンポウ,zhuànpéng)とも云う。
(一説に、転蓬はアカザ科ホウキギの仲間という。) |
なお、漢名を蓬(ホウ,péng)と呼ぶ植物は、ムカシヨモギ属の通称、ないしは就中このエゾムカシヨモギを指すものであり、日本で蓬の字をヨモギ Artemisia indica var. maximowiczii に当てるのは誤り。
ヨモギ属 Artemisia の漢名は、蒿(コウ,hāo)。 |
和名ムカシヨモギについて。
日本では、古来「蓬」を「よもぎ」と訓んできた。後に、その訓は誤りであったこと、真の「蓬」なる植物は別にあることが知られた。この時、それ(真の「蓬」)を、むかし「蓬」を「よもぎ」と訓んでいたということから、「むかしよもぎ」と名づけたものだ、という。日本人の昔の誤解に上塗りする命名であり、はなはだ分りにくい。 |
属名は、ノボロギクのギリシア名 erigeron、語源は eri(早い)+geron(老人)。 |
説 |
北海道・本州(中部以北)・極東ロシア・華北・東北・西北・四川・チベット・モンゴリアからイベリアまでのユーラシア大陸 及び北アメリカの、温帯・寒帯に分布。 |
誌 |
中国では、花序・果実を薬用にする。 |
転蓬 本根を離れ
飄颻(ひょうよう)して長風に随う
何ぞ意(おも)わん 迴飆(かいひょう)の挙り
我を吹いて雲中に入れんとは
高高として上がるに極り無く
天路 安(いずくん)ぞ窮む可けんや
類(に)たり 此の遊客子の
躯(み)を捐(す)てて 遠く戎(いくさ)に従うに
毛褐 形を掩わず
薇藿(びかく) 常に充(あ)かず
去り去りて 復た道(い)う莫(な)けん
沈憂 人をして老いしむ
(曹植(192-232)「雑詩六首 其の二」)
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