おにどころ (鬼野老) 

学名  Dioscorea tokoro
日本名  オニドコロ
科名(日本名)  ヤマノイモ科
  日本語別名  トコロ(野老)、トコロヅル・トコロヅラ、ナガドコロ
漢名  山萆薢(サンヒカイ,shānbēixiè)
科名(漢名)  薯蕷(ショヨ,shŭyù)科
  漢語別名  粉萆薢(フンヒカイ,fĕnbēixiè)、山草薢(サンソウカイ,shāncăoxiè)
英名  
2006/08/02 三芳町竹間沢
雄株
雌株

2005/08/11 薬用植物園

2023/10/18 小平市玉川上水緑地 

2021/12/02 小平市玉川上水緑地  

   オニドコロ・ヤマノイモ(ジネンジョ)・ナガイモの見分け方については、ヤマノイモの辨を見よ。
 ヤマノイモ属 Dioscorea(薯蕷屬)については、ヤマノイモ属を見よ。
 和名トコロの語源は、諸説があるが、不明。古くはトコロヅラといい、中古からトコロと呼ばれた。
 『本草和名』薢に「止古呂」と、萆解に「和名於尓止古呂」と。
 『延喜式』萆薢に、「トコロ、オニトコロ」と。
 『倭名類聚抄』薢に「土古呂」と。
 『大和本草』に、「萆薢(トコロ,ヲニトコロ)」と。
 北海道・本州・四国・九州・陝甘・山東・華東・湖北・廣東・四川に分布。
 根茎は肥厚して横に這い、しばしば曲り、多くの鬚根を出す。味は 苦い。
 むかごをつけない。
 中国では、塊茎を萆薢(ヒカイ,bēixiè)として薬用にする。『新注校定国訳本草綱目』6/p.295。 また、一部の地方で草薢(ソウカイ,căoxiè)として薬用にする。(正式の草薢は、D.hypoglauca 及び D.officinalis の根茎)。 ヤマノイモの誌を参照。
 日本では、根はふつう食わないが、昔は焼いたり茹でたりして食用にしたという(和名抄)
 また根茎のようすを、腰が曲り鬚の生えた老人に擬え、野老と書いて海産の海老と対照し、長寿の象徴として正月飾りに用いる。
 すなわち、「長壽ヲ祝スル爲メ正月ノ春盤ニ用ヰ其鬚根ヲ老人ノ鬚髭ニ擬シ、山ニ生ズルヲ以テ野老ト書セリ、卽チえびヲ海老ト書スルト同趣ナリ。根莖ヲ食スル處アリ、味苦シ」(『牧野日本植物圖鑑』)。
 『古事記』に、日本武尊(やまとたけるのみこと)が三重の能煩野(のぼの)で死んだとき、
 是に倭(やまと)に坐(いま)す后(きさき)等及御子(みこ)等、諸々下り到りて、御陵(みささぎ)を作り、即ち其地(そこ)の那豆岐田(なづきだ)に匍匐(は)ひ廻(もとほ)りて、哭(なき)(ま)して歌曰(うた)ひたまひしく、
 なづきの田の 稲幹(いながら)に 稲幹に 匍(は)ひ廻ろふ 野老蔓(ところづら)
 『万葉集』に、

    皇祖神
(すめがみ)の 神の宮人 冬薯蕷葛(ところつら)
        いや常
(とこ)しくに 吾かへりみむ  (7/1133,読み人知らず)
   ・・・冬薯蕷葛 尋め行きければ・・・
(9/1809,高橋虫麿)
 トコロには、和名抄・新撰字鏡・名義抄に薢の字があてられており、「署蕷」は、和名抄にはヤマノイモ、名義抄にはヤマツイモの訓がある。しかし、音数のことを考慮に加えて、冬薯蕷をトコロと訓むことにする。(日本古典文学大系万葉集二1133補注)
 

   此山のかなしさ告よ野老堀 
(芭蕉,1644-1694)
 

跡見群芳譜 Top ↑Page Top
Copyright (C) 2006- SHIMADA Hidemasa.  All Rights reserved.
クサコアカソウ シュロソウ スハマソウ イワチドリ チダケサシ 跡見群芳譜トップ 野草譜index