辨 |
「莜麥」と呼ばれる品種について、中尾佐助「莜麥文化圏」(『著作集』1所収)参照。 |
カラスムギ属 Avena(燕麥 yànmài 屬)には、約35種がある。
ミナトカラスムギ A. barbata(裂稃燕麥) 南ヨーロッパ原産
チュウゴクカラスムギ A. chinensis(A.sativa var.chinensis,
A.nuda var.chinensis;莜麥,ユウマイ,yóumài・油麥)
マカラスムギの稞型、歐洲在来
華北・湖北・四川・貴州・雲南・陝甘・寧夏・靑海・新疆で栽培・野生
A. eriantha(異穎燕麥) 北西アフリカ・バルカン・カフカス・西&中央アジア産
カラスムギ A. fatua(野燕麥;E.Wild oat)『中国雑草原色図鑑』291
コカラスムギ var. glabrata(光稃野燕麥)
A. longiglumis イベリア・サルデーニャ・北アフリカ産
ハダカエンバク A. nuda(A,sativa var.nuda;
裸燕麥,ラエンバク,luŏyànmài・稞燕麥,カエンバク,huàyànmài)
マカラスムギから選抜された稞型のもの、歐洲在来
マカラスムギ(オートムギ・エンバク) A. sativa(燕麥・鈴當麥・香麥;E.oat)
カラスムギから歐洲で選抜された栽培植物。『中国本草図録』Ⅸ/4394
A. sterilis
オニカラスムギ subsp. ludoviciana(A.persica, A.ludoviciana;長穎燕麥)
地中海地方・エチオピア・西&中央アジア・西ヒマラヤ産
セイヨウチャヒキ A. strigosa フランス・イベリア原産 |
イネ科 Poaceae(Gramineae;禾本 héběn 科)については、イネ科を見よ。 |
訓 |
「和名烏麥ハからすノ食フむぎノ意、雀麥ハすずめノ食フむぎノ意ナリ、又茶挽草ハ小兒其穗ヲ採リ唾ヲ付ケシ爪上ニ載セ之レヲ口ニテ吹ケバ茶臼ヲ挽ク如ク囘旋スルヲ以テ斯ク云フ」(『牧野日本植物図鑑』1940初版)。
この牧野富太郎の文章は、後の『改訂増補 牧野新日本植物図鑑』(筆者が見ているのは1989版)では「子供がその穂を採り、油をつけてうりの上にのせ、吹けば茶をひくように廻るのでこのようにいう」と書き直されている。唾を油と誤り、爪を瓜と誤った上で、瓜の上に油をつけるのは意味が分からないから、烏麦の穂の方に油をつけることにしたのだろう。 なお、最新の『新分類
牧野日本植物図鑑』(2017)では、件の個所は「茶挽草は子供がその穂を採り、唾をつけた爪の上にのせ、吹けば茶臼をひくように廻るのでこのようにいう」と牧野の原意に戻されている。 |
深江輔仁『本草和名』(ca.918)穬麦に、「和名加良須毛岐」と。
源順『倭名類聚抄』(ca.934)穬麦に「和名加良須牟岐」と。
小野蘭山『本草綱目啓蒙』18(1806)穬麥に、「カラスムギ和名鈔 カウボウムギ」と。 |
説 |
西アジア原産、歐亞温帯・北アフリカに分布。日本には麦とともに入ったものであろう、といい、今日では全国に帰化。 |
誌 |
茎・葉を飼料・肥料とするほか、中国では実を救荒食として利用した。
また、全草を薬用にする。 |
中国では、『爾雅』釋草に「蘥(ヤク,yue)、雀麥(ジャクバク,quemai)」と、郭璞注に「即燕麥(エンバク,yanmai)也」と。 |
燕麦(からすむぎ)のなびきおきふす山畑晴れたりとおもふにはや曇りける
(1932志文内,斎藤茂吉『石泉』)
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