辨 |
ジュズダマ属 Coix(薏苡 yìyĭ 屬)には、約5種がある。
C. aquatica(水生薏苡)
ジュズダマ C.lacryma-jobi(薏苡)
オニジュズダマ var. maxima(念珠薏苡)
ハトムギ var. ma-yuen(C.ma-yuen, C.chinensis;
薏苡・川穀・苡米・綠穀・回回米・馬圓薏苡)
C. puellarum(小珠薏苡)
C. stenocarpa(窄果薏苡) |
イネ科 Poaceae(Gramineae;禾本 héběn 科)については、イネ科を見よ。 |
訓 |
和名は、その実で数珠をつくることから。
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『本草和名』薏苡子に、「和名都之太末」と。
『延喜式』薏苡に、「ツシタマ、ツゝタマ」と。
源順『倭名類聚抄』薏苡に、「和名豆之太万」と。
小野蘭山『本草綱目啓蒙』19(1806)薏苡仁の条に、「一種ジユズダマ、一名ヅシダマ和名鈔 スゝダマ豫州 ズズゴ東国 ハチゴク上総 スダメ三州 スゞダマ阿州 スゞダマ新校正」と。 |
ラテン名の lacryma-jobi は、『旧約聖書』ヨブ記にちなみ「ヨブの涙」、その実の垂れるさまから(英名も同)。 |
説 |
東南アジア原産、遼寧・河北以南には野生する。日本のものは、栽培品の逸出野生化。 |
中尾佐助によれば、「ハトムギは一年生で種子の殻は薄いが、近縁のジュズダマは多年生で種子の殻は厚い。ジュズダマは根栽文化の伝播したところはポリネシアの東半分を除いてはたいてい伝播したが、この種子は食べることもできるが、むしろ首かざりの材料、おもちゃといった用途が大きく、生じ方はレリクト・クロップの生態である。ところがハトムギはなかなかすぐれた農作物で、栽培品種はおどろくばかり変異に富んでいる。・・・」
「ハトムギ類は…重要なものは、次の二種である。
(1) C. ma-yuan ハトムギは栽培型で、一年生である。粒のからは薄く、澱粉はモチ性である。インド・マレーシア一帯で現在少量ずつ栽培されている。ハトムギが食糧経済の根幹をなしている民族は少なく、アッサムのナガ族の一部と、シナの広東・広西省の傜続くらいした知られていない。
(2) C. lachryma-jobi ジュズダマは、栽培またはレリクト・クロップの状態で見られ、東南アジアからメラネシアまで、西はインドからアフリカにいたるまである。多年生でからは厚いが、胚乳は立派なもので食糧となしうる。澱粉はウルチ性である。」
また中尾は、東アジアの人々の餠性澱粉への嗜好は、このハトムギ利用に淵源するものであろうという。(以上、中尾佐助『栽培植物と農耕の起源』) |
誌 |
実に糸を通して数珠繋ぎにした装飾品(首飾りなど)は、東南アジアやアフリカの各地にみられる(『週刊朝日百科 植物の世界』117)。 |
中国では、実を川穀(センコク,chuāngŭ)と呼び、根を川穀根と呼び、薬用にする。 『全国中草葯匯編』下/88 |