辨 |
諸書の記述をかんがみるに、中国で薬用に供する川芎(センキュウ,chuānxiōng)と、日本で栽培するセンキュウとは、学名が異なる。分類上の見解の相違か、或は別種か。
中国に産する川芎は、Conioselinum sinense 'Chuanxiong' (Ligusticum sinense 'Chuanxiong', L.
chuanxiong; 川芎)
日本で栽培するセンキュウは、Ligusticum officinale(Cnidium officinale;洋川芎)
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「セリ科植物は、果実の形態で分類されることが多いので、果実をつけないセンキュウの分類学的な位置ははっきりしない。「日本薬局方」では、生薬の「川芎」をクニディウム・オッフィキナレの根茎と規定し、ハマゼリ属 Cnidium に分類する見解を採用している。・・・これをマルバトウキ属 Ligusticum に分類したり、ミヤマセンキュウ属 Conioselinum に近縁とする見解もある」(『週刊朝日百科 植物の世界』3-110)。 |
YList によれば、センキュウは Ligusticum officinale(Cnidium officinale)。
『第十八改正日本薬局方』も、生薬センキュウは「センキュウ Cnidium officinale Makino
(Umbelliferae)の根茎を,通例,湯通ししたものである」と。 |
マルバトウキ属 Ligusticum(藳本 găoběn 屬)については、マルバトウキ属を見よ。
ハマゼリ属 Cnidium(蛇牀 shéchuáng 屬)については、ハマゼリ属を見よ。 ミヤマセンキュウ属 Conioselinum(山芎 shānxiōng 屬)については、ミヤマセンキュウ属を見よ。 |
訓 |
和名は、漢名川芎の音。川芎を見よ。 |
『本草和名』芎藭に、「和名於无奈加都良久佐」と。
『延喜式』芎藭に、「ヲムナカツラ」と。
『倭名類聚抄』芎藭に「和名本草、於無奈加豆良」と。
小野蘭山『本草綱目啓蒙』芎藭に、「オムナカヅラ延喜式 ウシクサ丹後 牛ノ諸病ヲ治ス故ニ名ヅク」と。 |
説 |
日本では 本州の高原・北海道などで栽培。中国では、吉林省延辺地区で栽培(『全国中草薬匯編 上』p.134)。
宮崎安貞『農業全書』(1696)に、「園に作る薬種」の一として「川芎」をあげ、
「川芎も良薬なり。古は本朝にはなかりしを、寛永(1624-1644)の比長崎よりたねを伝へ来て、大和にて多く作る。其外諸所に作るは性よからず。・・・山下など性よき肥地ある所にては多く作るべし。厚利の物なり」(岩波文庫本)と。 |
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花を開くことが珍しいうえ、結実しないので、根茎の一部を植えて増やす。
結実しないのは、「体細胞内で形の異なる染色体同士が結合していることや、花粉が作られる際に花粉母細胞の減数分裂に異常が起こるためと考えられている」(『週刊朝日百科 植物の世界』3-110)。 |
茎や葉に、セロリーにそっくりな香りがある。 |
誌 |
中国では、川芎と同様に薬用にする(『全国中草薬匯編 上』134)。
日本では、これをセンキュウとして栽培・利用。 |