辨 |
ショウガ属 Zinziber(薑 jiāng 屬)については、ショウガ属を見よ。 |
訓 |
和名は、古名メガの転訛。
『本草和名』白蘘荷に、「和名女加」と。『倭名類聚抄』蘘荷に、「和名米加」と。
『大和本草』に、「蘘荷{ミヤウガ}」と。
小野蘭山『本草綱目啓蒙』11 に、「蘘荷 メガ和名鈔 メウガ」と。 |
漢語の茈・紫・柴の字については、ムラサキの訓を見よ。 |
説 |
熱帯アジア原産。
中国では長江流域・陝西・甘肅・四川・貴州などで、日本では全国で、栽培する。
若い花穂(実は苞。「茗荷の子」)や嫩芽(「茗荷竹」)を食用にする。 |
誌 |
中国では、古くは蔬菜とされたが、今日ではほとんど用いない。ただし、根茎を薬用にする。
日本では、平安時代以来一貫して食用にする。 |
賈思勰『斉民要術』(530-550)に、「種蘘荷芹■{草冠に豦}」が載る。 |
ミョウガを食うと物を忘れると言う説は、日本においてのみ。
「むかしからみょうがを食べると、忘れっぽくなると言われ、真偽のほどは別としても、不眠症にきく民間薬として古くから用いられてきました。そのせいか、みょうがにはいろんなエピソードが伝わっています。その中でも有名なのが周梨槃特(しゅうりはんどく)の話です。槃特はお釈迦さまの弟子で、生来、のろまで記憶力も悪く、仏道の修行も進まず、自分の名までも忘れてしまうというふうでした。ある人が気の毒がり、その名を書いた札を首にかけてやりました。すると、こんどは、その名札をかけたことも忘れてしまいました。そんな反面、非常に誠実な努力家であったため、晩年には、ついに悟道の域に達したと言われます。その槃特が死んで、遺骸を葬った墓地から草が生えてきたので、おおかた、名を荷(にな)ってきたものであろうと、それからこの草に「茗荷」という名がつけられたという話です。ちょっと落しばなしみたいな伝説なので、皮肉屋の川柳子はさっそく「馬鹿らしい事は茗荷の謂(いわ)れなり」と批評しています。物忘れと言えば、江戸の古典落語にも『茗荷屋』という話があります。この話も槃特の話と同巧異曲(にたりよったり)で、よくない宿屋の亭主が、大金持った客と見て、その持金をなんとか忘れさせようと、しきりにみょうがを食べさせたら、客は宿賃の払いを忘れて、そのまま出立してしまった――という筋です。「茗荷」は・・・冥加(神仏の加護、おたすけ、おかげ)にも通じるところから「弓矢の冥加に叶う」というわけで、武家などの紋所としてむかしから尊ばれ、鍋島家の家紋が抱茗荷(だきみょうが)だったところから、江戸の川柳子はまた、「茗荷でも馬鹿にはならぬ御家柄」と詠んでいます」(平野雅章『食物ことわざ事典』1978)。 |
わが心しづかになれど家隅(いへくま)の茗荷黄いろにうらがれわたる
(1945,齋藤茂吉『小園』)
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