さきくさ (三枝) 

 
 
 
 『万葉集』に、三枝(さきくさ)と呼ばれる植物が載る。

   世の人の 貴び慕ふ 七種の 宝も我は何せむ
    わが中の 産まれ出でたる 白玉の 吾が子古日は
   明星
(あかほし)の 開くる朝は 敷たへの とこ(床)の邊さらず
    立てれども居れども ともに戯
(たはぶ)
   有星
(ゆふづつ)の ゆふべになれば いざね(寝)よと てをたづさ(携)はり
    父母も 表
(うへ)はなさが(下)り 三枝の 中にをね(寝)むと
    愛
(うつく)しく し(其)がかた(語)らへば ・・・
       
(5/904,読人知らず。「男子(をのこ)名は古日に恋ふる歌」。
           三つあるうちのまん中、ということから「中」にかかる)


   春去れば先づ三枝の幸
(さき)くあらば後にもあはむな恋ひそ吾妹
      
(10/1895,読人知らず。「先づ三枝」を「先づ咲き」に懸ける)

 和名抄などには、佐岐久佐と仮名表記される。しかしその意味は、幸草・福草の意としたり、さきは「咲き」であるとしたり、「裂き・割き」であるとしたり、解釈が定まらない。
 したがってその植物名も定まらず、古来諸説があるが、検討に値するものはミツマタ説とヤマユリ説、近年では そのうちミツマタ説が優勢だが、断定に至らず。 

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