辨 |
俗に、ニオイアヤメを「いちはつ」と呼ぶことがあるが、別種。
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アヤメ属 Iris(鳶尾 yuānwěi 屬)の植物については、アヤメ属を見よ。 |
訓 |
「和名ハ此花ノ多種アル中ニテ最モ早ク花サク故最初(イチハツ)ノ義ナリト謂ハルレドモ正否不明ナリ」(『牧野日本植物図鑑』)。
一八と書くのは、末広がりの縁起を担いだ語呂合わせ。 |
『本草和名』鳶尾に、「和名古也須久佐」と。
『倭名類聚抄』鳶尾に、「和名古夜須久佐」と。
小野蘭山『本草綱目啓蒙』鳶尾に、「イチハツ ヤツハシ薩州」と。 |
漢名はその形から。烏園も、正しくは烏鳶であろう(本草綱目)。ただし、本草綱目は、この草のどこがどのように鳶に似ているのかは、記していない。
なお、鳶は タカ科の鳥トビ(トンビ) Milvus migrans。 |
学名の種小名 tectorum(屋根の、屋根に生える)は、日本でよく藁屋根に植えたことから。英名の Roof iris も同(下の誌を見よ)。 |
説 |
山西・陝甘・華東・兩湖・廣西・西南・チベット原産。日本では史前帰化植物。
日当たりと水はけのよい場所を好み、乾燥にも耐える。 |
誌 |
中国では、根茎(鳶尾根・鳶頭)を薬用にする。『全國中草藥匯編 上』pp.491 |
日本の旧俗に、シャガやイチハツは、 藁屋根に植えると大風を防ぐ(ないしは火を防ぐ)と信じられた。そのじつは、よく地下茎を張り巡らして、藁屋根の崩壊を予防することからか、という。 |
『花壇地錦抄』(1695)巻四・五「草花 夏之部」に、「一八 春末夏初。一初共いふ。花形杜若のごとく、六やうのやうニミゆる。白むらさきの二種あり」と。
『大和本草』に、「紫羅傘(イチハツ) 又鳶尾ト云・・・民家茅屋ノ棟ニイチハツヲウヘテ大風ノ防トス、風イラカヲ不レ破」と。 |