ばしょう (芭蕉) 

学名  Musa basjoo
日本名  バショウ
科名(日本名)  バショウ科
  日本語別名  
漢名  芭蕉(バショウ,bajiao)
科名(漢名)  芭蕉科
  漢語別名  芭且、天苴、綠天、扇仙、香蕙、甘露樹、大葉芭蕉、牙蕉、板蕉
英名  Japanese banana
2005/07/28 学内

2005/05/09 同上 2005/11/16 同上

2006/02/27 同上


 バショウ科 Musaceae(芭蕉科)は、ユーラシアの熱帯に3属約50種がある。
   Ensete アフリカと東南アジアに6種
     E. glaucum(象腿蕉) 『雲南の植物Ⅲ』270
     エンセーテ E. ventricosum
エチオピア産
   バショウ属 Musa(芭蕉屬)
   Musella 
1種
     チユウキンレン M. lasiocarpa(地涌金蓮) 
 バショウ属 Musa(芭蕉屬)は、約40-50種があり、熱帯アジア・西アフリカ・カナリア諸島・西インド諸島など、世界の熱帯を中心に分布。
   マレーヤマバショウ
(バナナ・ミバショウ) M. acuminata (阿加蕉)
          
原種はマレーシア西部からインド東部に野生。生食用バナナはその改良品種。
   リュウキュウバショウ(広義) M. balbisiana(倫阿蕉) 東南アジア・ミクロネシア・ポリネシア
          
 西部に野生。『週刊朝日百科 植物の世界』10-197
     リュウキュウバショウ
(狭義。リュウキュウイトバショウ) var. liukiuensis
          (M.textilis var.liukiuensis, M.liukiuensis)
     ssp. malaccensis
マレー半島産
   バショウ M. basjoo (芭蕉)
   サンジャクバナナ M. cavendishii (牙蕉)
   センナリバナナ M. chiliocarpa
   ヒメバショウ(ビジンショウ) M. coccinea(M.uranoscopos;指天蕉・美人蕉・紅蕉)
          
中国(兩廣・貴州・雲南)に分布。日本には江戸初期頃に中国福建から長崎に(一説に
          琉球から)渡来。『中国本草図録』Ⅸ/4436・『週刊朝日百科 植物の世界』10-195 
   M.×corniculata(E.Horn plantain) リョウリバナナの一
   フェイバナナ M. fehi 
ニューギニア・ポリネシアで食用に栽培。東南アジア起源の栽培バナナとは
          別系統。『週刊朝日百科 植物の世界』10-197
   M. ingens
ニューギニア産、世界最大の野生バナナ
   コウトウバショウ M. insularimontana
   タイワンバショウ(広義) M. itinerans (阿寛蕉)
     タイワンバショウ(狭義) var. formosana(M. formosana)
   M. nana (香蕉) 『中国本草図録』Ⅰ/0433
   リンゴバショウ M. ornata
   M.×paradisiaca (大蕉・芭蕉;E.Plantain)リョウリバナナの一。『中国本草図録』Ⅸ/4437
     var. sapientum (香蕉・甘蕉) 
中国(福建・兩廣・雲南)・臺灣で栽培
   M. rosacea
中国(南部)・インドシナに分布
   M. rubra (阿希蕉) 
中国(雲南西部)・ビルマ・タイに分布。
   マニラアサ M. textilis (蕉麻)
     コウトウアバカ var. tashiroi
   M. yamiensis 
 世界で食用に栽培するバナナ類については、バナナを見よ。
 漢名の芭蕉は、広義には芭蕉屬 Musa の植物の総称、(今日では)狭義にはバショウ M.basjoo を指す。
 古くから芭蕉の語はバショウ属の総称であるようだが、のちに実が食用になるもの(バナナの類)を甘蕉として区別した。やがてバナナの栽培が普及すると、一般には芭蕉・甘蕉ともにバナナを指すようになり、今日に至る。
 和名は、漢名の音。
 深江輔仁『本草和名』(ca.918)甘蕉に、「和名波世乎波乃祢」と。
 源順『倭名類聚抄』
(ca.934)芭蕉に、「和名発勢乎波」と。
 小野蘭山『本草綱目啓蒙』11
(1806)に、「甘蕉 バセヲハ和名鈔 ニハミグサ バセヲ今名 ウドンゲ東鑑花ノ名」と。
 漢名芭蕉について。芭蕉は葉を落とさず、一枚の葉が舒(のび)ると一枚が焦(ひからび)るので、蕉という(陸佃『埤雅』)。また、俗に干物を巴と謂うので、巴も蕉の意である、という(李時珍『本草綱目』引)
 属名 Musa の由来については二説ある。一に、バナナのアラビア名 mawza から。一に、ローマの医師 Antonio Musa への献名。
 種小名 basjoo は、和名から。
 英名 banana は、西アフリカのウォロフ語による バナナの現地名 banana から。16世紀末のスペイン語・ポルトガル語を経由して。
 Japanese というのは、バショウを日本原産と考えたことから。
 原産地は中国と言うが、原生品は報告されていない。広く長江以南で栽培。
 日本には 中国から渡来したといい、古くから 観葉植物として暖地
(本州中部以南・四国・九州)で栽培する。
 バショウ属の中で、もっとも北地に適応しており、南限は北緯30度前後という。
 茎は地下にあり、地上の茎のように見える部分(偽茎・偽稈)は葉鞘の集まり、剥いても中身は無い。
 果実はバナナ状だが、長約6cmと小さく、中には黒い種が詰まっていて、食用にはならない。ただし、日本ではそもそもよほどの暖地を除き、種子が成熟する以前に地上部は枯死する。
 欧米では、観葉植物として栽培するが、日本原産の植物と考えており、学名・英名はこれによる。
 中国では、バショウの根茎を芭蕉根・芭蕉頭と呼び、葉を芭蕉葉と呼び、花・蕾を芭蕉花と呼び、種子を芭蕉子と呼び、茎の汁を芭蕉油と呼び、それぞれ薬用にする。
 『列子』周穆王篇第九章に、「鄭人(ていひと)に野に薪とる者有り。駭(おどろ)ける鹿に遭ひ、御(むか)へて之を撃ち、之を斃(たふ)せり。人の之を見んことを恐る。遽(にはか)にして諸(これ)を隍中(くわうちゅう。から堀の中)に蔵(かく)し、之を覆ふに蕉(せう)を以てし、其の喜びに勝へず」と。
 
この蕉は樵に通じ、たきぎ・そだの類と解釈されているが、歴史的にはバショウのイメージと重なっている。 
 沈括(1031-1095)『夢溪筆談』17「書画」に、「(張)彦遠の画評に言はく、〈王維の物を画(ゑが)くに、多く四時を問はず。花を画くが如きは、往々桃・杏(あんず)・芙蓉(ふよう)・蓮花(れんか)を以て同じく一景に画く〉と。予の家の蔵する所の摩詰(王維)が画ける袁安臥雪図は、雪中の芭蕉有り。此れ乃ち心に得て手に応じ、意到れば便ち成るものなり。故に理に造(いた)り神に入り、迥(はるか)に天意を得たり。此れ、俗人と論ずべきは難し」と。

 張彦遠は、唐代、晩唐(836-906)の絵画史家。著に『歴代名画記』があるが、この一文は載せない。
 王維(699?-761)は、唐代、盛唐(710-765)の詩人、画家。字は摩詰。
 袁安臥雪とは、故事人物画の画題。 袁安(?-92)、字は邵公、汝南汝陽(河南省)の人。『汝南先賢伝』(『後漢書』45引)に、「時に(洛陽に)大いに雪ふり、地に積もること丈余なり。洛陽令、自ら出でて案行し、人家を見る。皆な雪を除き、出でて食を乞う者有り。袁安の門に至り、行路の有る無し。謂えらく、〈安、已に死せり〉と。人をして雪を除かしめ、戸に入りて安を見るに、僵臥{きょうが}せり。問う、〈何を以てか出でざる〉と。安曰く、〈大いに雪ふり、人皆な餓ゆ。宜しく人に干{もと}むべからず〉と。令 以為{おもへ}らく、〈賢なり〉と。挙げて孝廉と為す」とある。 
 日本では、『古今集』(ca.910)10物名に 紀乳母(きのめのと)が「さゝ(笹)・まつ(松)・びは(枇杷)・はせをば(芭蕉葉)」を詠いこんだ歌が載る。

   いさゝめに 時まつまにぞ 日はへぬる 心ばせをば人に見えつゝ
 
 また『本草和名』
(918)・『倭名類聚抄』(931-938)などに、「はせをは」とある。
 西行(1118-1190)『山家集』に、

   かぜふけば あだにや(破)れ行 ばせをばの あればと身をも たのむべきかは
 
 江戸時代の俳人 松尾芭蕉(1644-1794)は、1680年深川村六間堀に草庵を営み、翌年門人からバショウ一株を贈られて以来、それを芭蕉庵と呼んだ。

   芭蕉葉を柱にかけん庵の月
   帆となり帆となる風の芭蕉かな
   此寺は庭一盃のばせを哉 
   幾霜に心ばせをの松かざり

   芭蕉葉は何になれとや秋の風 
(路通,『猿蓑』1691)
   はせを葉や打かへし行月の影 
(乙刕,『猿蓑』1691)
 
  



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