辨 |
Ficus erecta には、次のような種内分類群がある。
イヌビワ(イタビ) var. erecta(矮小天仙果)
ホソバイヌビワ f. sieboldii(F.erecta var.sieboldii)
ケイヌビワ var. beecheyana(F.erecta var.yamadorii, F.beecheyana;
天仙果)淡路島・小豆島・琉球・臺灣・華東・兩湖・兩廣・貴州・ベトナム産
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イチジク属 Ficus(榕 róng 屬)の植物については、イチジク属を見よ。 |
訓 |
「和名ハ犬枇杷ノ意、其果びはニ似テ小ク品位下等ナレバいぬヲ加ヘ其名トス、いたび并ニいぬぶハ其語原不明」(『牧野日本植物圖鑑』)。 |
『本草和名』木蓮子及び折傷木に「和名以多比」と。『倭名類聚抄』木蓮子に「和名以太比」と。 『大和本草』に、「薜荔(ヘキリ) イタヒ也」と。ただし薜荔は蔓をなす藤本である。
小野蘭山『本草綱目啓蒙』27 無花果の条に、「天仙果 イチジク イヌビハ エノビハ ヱノビ和州 ヨノンバ同上 カキノホウヅキ勢州 チゝタツボ同上 サルガキ駿州 コダラ薩州 カクロ ウシノヒタヒ防州 マメギ豫州 マメヅタ マメギシバ イヌホウヅキ共ニ同上 イタブ土州 イタツボウ大坂 ヤマビハ肥前 チゝブ筑後 イシヅク同上 イヌトウガキ藝州 ウシノシタ豊前 サルノシリ城州 カラスノビハ同上」と。 |
説 |
本州(関東以西)・四国・九州・琉球・済州島・臺灣に分布。
実は食用になる。 |
誌 |
中国では、宋祁(998-1061)に「天仙果贊」がある。 |
日本では、『万葉集』に、
ちちの実の 父のみこと ははそ葉の 母のみこと
おぼろかに 情(こころ)尽して 念(おも)ふらむ 其の子なれやも・・・
(19/4164,大伴家持)
大王の まけ(任)のまにまに 島守に わがたちくれば
ははそば(葉)の はは(母)のみことは みも(御裳)のすそ(裾) つみあげかきなで
ちちのみの ちち(父)のみことは たくづの(栲綱)の しらひげ(白鬚)のうへ(上)ゆ
なみだ(涙)たり なげ(嘆)きのたばく・・・ (20/4408,防人の歌)
とある「ちちのみ」は、一説にイヌビワとする。近畿地方の方言に、イヌビワをチチノキ・チチノミということから。(他説はちちのみをイチョウとするが、イチョウは万葉時代にはまだ渡来していなかった可能性がある)。なお、「ははそ葉」の ははそは、コナラ。
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