辨 |
イチョウ科 Ginkgoaceae(銀杏 yínxìng 科)は、イチョウ属 Ginkgo(銀杏 yínxìng 屬)イチョウ G.biloba(銀杏・公孫樹)の一属一種のみ。 |
裸子植物については、裸子植物を見よ。 |
訓 |
「和名いちゃうハ鴨脚ノ中國宋代ノ音なりと大槻博士ノ大言海ニ謂ヘリ」(『牧野日本植物圖鑑』)。
チチノキは、気根が乳房のように垂れ下がることから。
また 種子をギンナンというのは、銀杏の唐音ギンアンから。 |
小野蘭山『本草綱目啓蒙』26銀杏に、「イチヨウ木ノ名 ギンナン実ノ名、即銀杏ノ唐音ナリ ギナン筑前」と。 |
漢名の公孫樹は、祖父が植えても その孫の代に初めて実が生る、というところから。
銀杏は、その実の色から。鴨脚は葉の形から。 |
英名 Maidenhair tree は、黄葉を若い女性の金髪になぞらえて。 |
属名の Ginkgo は、銀杏の漢音ギンコウの転訛。
種小名は、「二浅裂の」の意、葉の形から。ただし、現実には イチョウの葉の形は変異が多い。 |
説 |
中国原産。浙江西天目山・重慶金仏山に自生品がある。
日本には、室町時代以前に(一説に仏教渡来と共に)中国から持ち込まれた。 |
雌雄異株。
明治29(1896)年9月、東京大学理科大学植物学教室に勤めていた画家平瀬作五郎は、イチョウの精子を発見した。のち明治45(1912)年、平瀬は帝国学士院恩賜賞を受賞。 |
誌 |
中国では、種子を白果(ハクカ,báiguŏ,びゃくか)と呼び、葉を銀杏葉と呼び、薬用にする。『中薬志』Ⅱpp.91-93・Ⅲpp.296-297 『(修訂) 中葯志』III/295-297,V/135-138 『全国中草葯匯編』上/801-802 |
銀杏踏でしづかに児(ちご)の下山哉 (蕪村,1716-1783)
稚子(をさなご)の寺なつかしむいてう哉 (同)
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薄田泣菫「公孫樹下にたちて」(1902,『二十五絃』)
きつぱりと冬が來た
八ツ手の白い花も消え
公孫樹(いてふ)の木も箒になつた
きりきりともみ込むやうな冬が來た ・・・
高村光太郎「冬が来た」(『道程』1914)より
いてふの実の白きを干せる日の光うつろふまでに吾は居りにき
(1931,斎藤茂吉『石泉』)
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東京都のマークはイチョウの葉(裂け目のない扇形)のデザイン。 |