| 辨 | 
             ウワミズザクラ属 Padus(稠李 チュウリ,chóulĭ 屬)には、北半球の温帯に約20種がある。 
             
              エゾノウワミズザクラ P. avium(Padus racemosa, Prunus padus; 
                     稠李・夜合・稠桃) 
                ウラジロウワミズザクラ var. glauca(Prunus padus f.glauca) 
                ケウワミズザクラ var. pubescens(Prunus padus var.pubescens,  
                     Padus racemosa var.pubescens;多毛稠李)『中国本草図録』Ⅳ/1674 
              P. brachypoda(Prunus brachypoda;短梗稠李) 河南・陝甘・四川・貴州・雲南産  
              イヌザクラ P. buergeriana(Prunus buergeriana, Laurocerasus buergeriana; 
                     橉木・橉木稠李・橉木櫻・華東稠李)『中国本草図録』Ⅶ/3153 
              ウワミズザクラ(ハハカ) P. grayana(Prunus padus var.japonica,  
                     Prunus grayana;灰葉稠李) 
              ウラボシザクラ P. maackii(Prunus maackii;斑葉稠李・山桃) 
                     遼寧・吉林・黑龍江産 『中国本草図録』Ⅲ/1183 
              モロツカウワミズザクラ P. nakatakei  
              P. napaulensis(Prunus napaulensis;粗梗稠李) 
                     安徽・江西・陝西・四川・貴州・雲南・ビルマ・ヒマラヤ産  
              シマウワミズザクラ P. obtusata(Prunus obtusata, Prunus publigera;細齒稠李)  
                     陝甘・河南・安徽・浙江・江西・兩湖・四川・貴州・雲南・臺灣産  
              P. perulata(Prunus perlata;宿鱗稠李) 四川・雲南産  
              シウリザクラ(ミヤマイヌザクラ) P. ssiori(Prunus ssiori;日本稠李) 
              P. stellipila(Prunus stellipila;星毛稠李) 陝甘・江西・浙江・湖北・四川・貴州・雲南産  
              P. wilsonii(Prunus wilsonii;絹毛稠李) 華東・兩湖・兩廣・四川・貴州・雲南産  
                | 
    
          
      |  バラ科 Rosaceae(薔薇 qiángwēi 科)については、バラ科を見よ。 | 
    
    
      | 訓 | 
       和名の語源について、一説に「和名うはみづざくらハ元來うはみぞざくら(上溝櫻)ノ轉訛ナリ、龜卜ノ時此材ヲ用ウ、上面に溝ヲ彫ル故ニ上溝ト云、古名ノははかハ時ニ山ざくらノ名トスルコトアリ、こんがうざくらハははかガほうかト成リ次ニほうごうざくらト成リ次ニ此こんがうざくらト訛リシモノナリ」(『牧野日本植物図鑑』)。ウワミズザクラの語源については、『日本の野生植物』『日本国語大辞典 第二版』などはこの説に従う。 
             また一説に「波波迦(ははか)と呼ばれる材が宮中の龜卜の儀式に用いられるが、材に溝を彫って占うことから「卜溝桜」と呼んだと考えられている」(勝木俊雄『日本の桜』)。 
             なお、『日本国語大辞典 第二版』「ははかび」に、「ははかの木の皮で、鹿の肩甲骨や亀の甲を焼いて、物事の吉凶を占うこと。またその火。古代に行われた」とある。「上溝」にせよ「卜溝」にせよ溝を彫られたのは骨または甲羅のほうであり、ウワミズザクラやヤマザクラは燃料として用いられたに過ぎないと思われる。  
             「花はこまかい白色の総状で垂下するから、上を見ない桜の意であろう」という説もある(本山荻舟『飲食事典』)。 | 
    
    
      | 説 | 
       北海道(西南部)・本州・四国・九州・福建・浙江・江西・兩湖・廣西・四川・貴州・雲南に分布。 | 
    
    
      | 誌 | 
       「晩春から初夏のころ、その小さい花のまだ咲かない淡緑色のツボミの間に摘取って塩漬にしたのが、ビールのつまみ物や温飯にのせても珍味とされる。北陸の山間部で「アンニンゴ」とよぶのはこれである」(本山荻舟『飲食事典』)。 
             また、未熟の実を塩漬けにして食う。  | 
    
    
      |  かつて、『万葉集』に詠われるカニハは本種であるとする説が唱えられたが、今日では否定されている。かにわを見よ。 |