辨 |
Citrus medica は、和名はマルブシュカン・シトロン、漢名は香櫞(コウエン,xiāngyuán)・枸櫞(クエン,jŭyuán)、英名は Citron、仏名は Cedrat。インド北東部・ヒマラヤ南麓原産、ミカン属の自生種の一。古く『旧約聖書』にその名が見え、ペルシアでも既に紀元前に栽培されていた。今日では世界の熱帯地方で栽培、東アジアでは臺灣・福建・兩廣・雲南などで栽培。『中国本草図録』Ⅲ/1236・『週刊朝日百科 植物の世界』3-201
これに、次のような変種・品種がある。
ブシュカン 'Sacrodactylis'(C.medica var.sarcodactylis;
佛手・佛手柑;E.Fingered citron)
セイバンレモン subf. dulcis(C.medica var.gaoganensis;山檸檬) 臺灣産
var. yunnanensis(雲南香櫞) 雲南産
|
ミカン属 Citrus(柑橘 gānjú 屬)については、ミカン属を見よ。 |
訓 |
和名は漢名の音。 |
深江輔仁『本草和名』(ca.918)枸櫞に、「和名加布知」と。
源順『倭名類聚抄』(ca.934)枳殻の条に、枸櫞は「和名加布智」と。
小野蘭山『本草綱目啓蒙』(1806)26枸櫞に、「マルブシュカン」と。 |
漢名・英名ともに、果実が人の手指の形に似ることから。種小名 sarcodactylis は「肉質で指状」の意。 |
説 |
ブシュカンは、インド原産、インドシナ・ジャワには古く入る。
今日の中国では、浙江・安徽・福建・兩廣・四川・雲南などで栽培。 |
日本には、中国を経由して江戸時代に入る。今日では、和歌山県などの暖地でわずかに栽培する。 |
ヨーロッパでは、17c.中葉に記録がある。 |
誌 |
果実の形・芳香を観賞するために栽培。また、果実を砂糖煮にして 食用にする。 |
中国では、マルブシュカン及び C.grandis var.shanyuan(C.wilsonii;香圓・西南香圓)の果実を香櫞(コウエン,xiangyuan)と呼び、薬用にする。『中薬志Ⅱ』pp.303-306
ブシュカンの果実を佛手柑と呼び、その蒸留液を佛手露と呼び、花・蕾を佛手花(佛柑花・川手花)と呼び、根を佛手柑根と呼び、それぞれ薬用にする。『中薬志Ⅱ』pp.132-133 |