辨 |
ビンロウジュ属 Areca(檳榔屬)には、インド・東南アジアに約50-60種がある。
ヤシ科 Arecaceae(Palmae;棕櫚科)については、ヤシ科を見よ。 |
訓 |
漢名檳榔は、マレーシア名 pinnang の音写。仁頻は、ジャワ名 jambi の音写。 |
和名は漢名檳榔の音。
日本では、ビロウ(アジマサ) Livistonia chinensis(蒲葵,ホキ,púkuí)も檳榔に当てたことがあり、和名ビロウにその音を残しているので、ややこしい。 |
深江輔仁『本草和名』(ca.918)檳榔に、「和名阿知末佐」と。これはビンロウではなく、ビロウの方。 |
種小名 catechu は、インド現地語からという。 |
説 |
原産地不明(フィリピン・セレベス・モルッカ原産かという)、広く熱帯アジア・アフリカ東海岸などで栽培。
中国では、福建・臺灣・兩廣・海南島・雲南南部で栽培する。『中国本草図録』Ⅰ/0400
日本では、東大寺献薬帳(奈良時代)にその名が載る。 |
誌 |
その果実は長6-8cmの卵形、オレンジ色に熟す。アレコリン arecolin などのアルカロイドを含み、種子(檳榔子,ビンロウシ,bīnglángzĭ,びんろうじ, betel nut, areca nut)・果皮(大腹皮,タイフクヒ, dafupi)を薬用にする。
また、花・蕾を檳榔花と呼び、未成熟の果実を干したものを榔干と呼び、それぞれ薬用にする。『中薬志Ⅱ』pp.391-393 |
ビンロウの未熟の果実の胚乳を2-4に割り、石灰をまぶして、キンマの葉で包み、これを口の中で噛む習慣を、キンマ噛み betel chewing と呼ぶ。好みにより、タバコ・タマリンド・カルダモン・ウイキョウなどを調味することがある。
初めは味は苦く渋く、ビンロウの実の成分が石灰と反応して 口中は真紅に染まるが、これをいったん吐き出してなお噛み続けると、アレコリンやキンマの精油成分の作用により 気分が爽快になる、という。ただし、唇と歯茎はまっかになって腫れ、歯は歯石によって黒く染まる。
キンマ噛みの習慣は、紀元前よりインド・東南アジア・オセアニアの各地で行われてきた。 |
『本草図経』に、檳榔には三四種があり、小さくて甘いものは山檳榔、大きくて渋く 種が大きいものは豬檳榔、最も小さいものは■{艸冠に納}子(ノウシ,nàzi)である、という。
山檳榔はヤマビンロウ Pinanga baviensis(山檳榔 サンビンロウ shānbīnláng)。■{艸冠に納}子は、一名 檳榔孫、おそらくArchontophoenix alexandrae(假檳榔 カビンロウ jiăbīnláng)であろうという。 |