のびる (野蒜) 

学名  Allium macrostemon (A.grayi, A.nipponicum)
日本名  ノビル
科名(日本名)  ヒガンバナ科
  日本語別名  アララギ、ヒル、ネビル
漢名  薤白(カイハク,xièbái)
科名(漢名)  石蒜(セキサン,shisuan)科
  漢語別名  小根蒜(ショウコンサン,xiaogensuan)・小根菜・子根蒜、野薤、野蒜、野白頭
英名  Longstamen onion
2006/02/27 学内
2005/05/23  サクラソウ公園(田島ケ原)

2005/05/28 学内

 2020/05/23 小平市玉川上水緑地

2007/06/04 新座市中野

 中国では、次の二種を区別する。
   A. grayi(=A.nipponicum;野葱)
   A. macrostemon(薤白・小根蒜) 
 ネギ属 Allium(葱屬)については、ネギ属を見よ。
 古く和名をヒル(蒜)というものについては、ニンニクの訓を見よ。
 ノビルとは、左畑で栽培するニンニクなどに対して、野生のヒルの意。
 アララギは、疎々葱(あらあらき。まばらに生えるネギ)の意で、すなわちノビル(一説にギョウジャニンニク)の古名。
 『日本書紀』巻7 景行天皇40年の条に「其の蘭
(あららぎ)一茎(ひともと)」と見える。
 深江輔仁『本草和名』(ca.918)に、蘭蒚は「和名阿良々岐」と。
 源順『倭名類聚抄』(ca.934)に、蘭蒚は「和名阿良々木」と。
 アララギと蘭の字の結びつきについては、ラン(蘭)の訓を見よ。
 小野蘭山『本草綱目啓蒙』22(1806)山蒜に、「ネビル
和名鈔 ネムリ阿州 ネブリ江州 ネンブリ加州 ヒルコ奥州福島 モチト仙台 キモト コアサツキ同上」と。
 漢名を薤(カイ,xie)というものはラッキョウ
 日本(北海道・本州・四国・九州・琉球)・朝鮮・中国(新疆・青海以外全国)・臺灣・ロシア(遠東)に分布。
 中国では、全草を食用にする。また、
   ノビル A. macrostemon(小根蒜)
     var. uralense(密花小根蒜)
   ラッキョウ A. chinense(薤)
   A. caeruleum(藍花山蒜)
   A. nerinifolia(長梗薤)
などの鱗茎を薤白と呼び、薬用にする。
『中薬志Ⅰ』pp.511-514 
 『爾雅』釋草に次のようにある。
  蒮(イク,yu)、山韭(サンキュウ,shanjiu)。茖(カク,ge)、山葱(サンソウ,shancong)。葝(ケイ,qing)、山■{『諸橋』12,No.43260。薤と同}(サンカイ,shanxie)。蒚(レキ,li)、山蒜(サンサン,shansuan)。
      
〔今山中多有此菜。皆如人家所種者。茖葱(カクソウ,gecong)、細莖大葉。〕
 文中、韭は、ニラ Allium tuberosum(韭菜)、
    葱は、ネギ Allium fistulosum(葱)、
    茖は、ギョウジャニンニク Allium victorialis ssp. platyphyllus(茖葱)、
    ■・薤は、ラッキョウ Allium chinense;A.bakeri(藠頭)、
    山蒜は、ノビル Allium macrostemon(薤白)か。
 日本では、古代から若葉と根を食用にする。
 『古事記』(『日本書紀』重出)に、応神天皇の歌として、

   いざ子ども 野蒜摘みに 蒜摘みに ・・・
 
 『日本書紀』巻7 景行天皇40年の条に、日本武尊(やまとたけるのみこと)は信濃の山に分け入り、「既に峯に逮(いた)りて、飢(つか)れたまふ。山の中に食(みをし)す。山の神、王(みこ)を苦びしめむとして、白き鹿(かせき)と化(な)りて王の前に立つ。王異(あやし)びたまひて、一箇蒜(ひとつのひる)を以て白き鹿に弾(はじきか)けつ。則ち眼(まなこ)に中(あた)りて殺しつ。・・・是より先、信濃坂を度(わた)る者、多(さは)に神の気(いき)を得て瘼(を)え臥せり。但(ただ)白き鹿を殺したまひしより後に、是の山を踰(こ)ゆる者は、を噛みて人及び牛馬に塗る。自づからに神の気に中らず」と。
 『日本書紀』巻13 允恭天皇2年2月の条に、「忍坂大中姫(おしさかのおほなかつひめ)を立てて皇后(きさき)とす。・・・初め皇后、母(いろは)に随ひたまひて家に在(ま)しますときに、独(ひとり)苑の中に遊びたまふ。時に闘鶏国造(つげのくにのみやつこ。つげは 奈良県山辺郡都祁村)、傍(ほとり)の径(みち)より行く。馬に乗りて籬に莅(のぞ)みて、皇后に謂(かた)りて、嘲(あざけ)りて曰(い)はく、「能く圃(その)を作るや、汝(なびと)」といふ。且(また)曰はく、「圧乞(いで)、戸母(とじ)、其の(あららぎ)一茎(ひともと)」といふ。皇后、則ち一根(ひともと)を採りて、馬に乗れる者(ひと)に与ふ。因りて、問ひて曰(のたま)はく、「何に用(せ)むとかを求むるや」とのたまふ。馬に乗れる者、対(こた)へて曰はく、「山に行かむときに蠛(まぐなき。ヌカカの類)(はら)はむ」といふ。時に皇后、意(こころ)の裏(うち)に、馬に乗れる者の辞(ことば)の礼(いや)(な)きを結(おもひむす)びたまひて、即ち謂りて曰はく、「首(おびと)や、余(あれ)、忘れじ」とのたまふ。是の後に、皇后、登祚(なりいで)の年に、馬に乗りて乞いし者を覓(もと)めて、昔日(むかしのひ)の罪を数(せ)めて殺さむとす。爰(ここ)乞いし者、顙(ひたひ)を地(つち)に搶(つ)きて叩頭(の)みて曰(まう)さく、「臣(やつこ)が罪、実に死(しぬる)に当れり。然れども其の日に当りては、貴(かしこ)き者にましまさむといふことを知りたてまつらず」とまうす。是に、皇后、死刑(ころすつみ)を赦したまひて、其の姓(かばね)を貶(おと)して稲置(いなき)と謂ふ」と。
 この「蘭」を、『新撰字鏡』『本草和名』などの古辞書に従い、「あららき(安良良支・安良良岐)」と読む。
 なお、蘭の字の読みかたについては、ランの訓を見よ。
 『万葉集』には、

   醤酢
(ひしおす)に蒜つき合(か)てて鯛願う
     吾にな見せそ水葱
(なぎ)の煮物(あつもの)
        
(16/3829,長忌寸意吉麻呂,「酢・醤・蒜・鯛・水葱を詠む歌」。
            またこれは、酢の物(二杯酢)料理の初見)

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